付 録
1.これは宝もの!
図表42 厚生年金基金加入員証
「厚生年金基金」に加入すると、このような加入員証(紙幣型が一般的、中には箱型もあります)が発行・交付されます。原則65歳になると、これが年金(終身給付)になります。
原則、10年以上加入の場合は当該基金から、10年未満であれば企業年金連合会から給付されます。
厚生年金受給資格の有る人は、厚生年金基金加入1ヶ月以上は年金になります。
例えば、厚生年金基金24ヶ月の加入ですと、おおよそ2,000円/月×24ヶ月で、48,000円/年となり、生涯(65歳~85歳の20年間)換算すると、960,000円にもなります。
代行返上や基金解散で取扱いが区々になっていますので、一度企業年金連合会等に問合せてみるとよろしいでしょう。
・企業年金連合会(旧厚生年金基金連合会)
住所:〒105-0011 東京都港区芝公園2丁目4番1号芝パークビルB館10階・11階
電話番号:03―5401―8711(代表)
ホームページ:http://www.pfa.or.jp/
・当該基金
当該厚生年金基金事務所、または会社の人事課とか総務課の担当窓口
2.請求漏れ年金
日本の公的年金は、制度が分立していること(少し前までは8つの公的年金制度がありました)とか、過去の年金加入記録の管理がしっかり統合されていないとか、年金支払いのミス続発等の欠陥商品になっており、実務面からもリコールが必要な事態に立ち至っています。つまり、国民サイドからすれば、不可解な年金で請求もれ年金が発生しやすい制度になっています。
生涯ひとつの会社しか就労していなくて、基礎年金番号にそのすべての加入記録が管理されている人であれば、一応請求もれ年金を考える必要はないでしょう。しかし、多くの人の場合、過去に加入していた年金が、何らかの事情で加入記録が統合されてないままに放置されているのが現実です。
国が積極的に100%それを統合するなどということは考えられませんし、限界があります。仮に、「総背番号制」や民営化等が導入されても年金の加入記録の統合はむずかしいでしょう。もれ落ちる記録が続出して収拾が付かなくなるでしょう。仮にそうなったとしたら、なおさら「年金お調べ」が重要になります。
筆者の30年の年金実務経験から言えることは、基礎年金番号に記録がきれいに統合されている人は全体の10%位で、残りの90%ほどは年金加入記録のもれや未統合があります。それゆえ、あなたもそのうちのお一人ではないかと懸念されます。
●請求もれ年金って?
このような人は、請求もれ年金の点では一応問題はないでしょう。基礎年金番号の中にすべての年金加入記録が記録されていると考えられます。
しかし、なかには転勤先がそっくり落ちていたりする場合もありますので、全期間であるかどうかを確認します。それと、過去の給料の額が違っている場合もあります。
問題なのは次のような人です。
基礎年金番号の年金加入記録は判然としていても、それ以前の加入記録が統合されていません。制度間の渡り歩きもあるし、不明部分があるし、A社の年金加入記録がありません。
これは、名前(カタカナ)と生年月日(和暦)を使って社会保険事務所のコンピューターで検索すれば調べられます。そのうえで、基礎年金番号にすべての番号を統合しなければなりません。そうしなければ、年金額に反映しません。請求もれ年金が残ります。
一般的な請求もれ年金の事例は次のような人です。
D社の年金手帳しかなく、それ以前の年金加入の手帳とか被保険者証を紛失している場合です。
このままだと、D社の加入期間だけで受給資格期間を満たせず年金が受けられないということになります。このまま、年金は受けられないと独り決めしている人もいらっしゃいます。
実はA社、B社、C社、それに未加入の期間、国民年金の期間を確認すれば年金を受けられる加入期間を満たしていると考えられますので、こういう人こそ「年金お調べ」が必要になります。
●請求もれ年金の典型例
もっと一般的なのは次のような事例です。
基礎年金番号は持っているのですが、A社の年金加入はすっかり忘れている事例です。社名がわかれば社会保険事務所で調査は簡単にできます。本人の口から社名を言ってもらうだけで調べられます。
厚生年金基金の加入があるがどうかも社会保険事務所のコンピューターで確認できます。基金解散や代行返上等も同様です。
基金の年金は、原則10年以上加入の場合は当該基金へ原則60歳になったら請求します。10年未満の細切れ基金の分はまとめて厚生年金基金連合会から終身支払われます。この基金分年金を忘れている人が大勢いらっしゃいます。請求もれ年金の一典型です。
厚生年金基金に関して上のような事例の人は少ないのですが、それでも複数の事案が重なっている人はいらっしゃいます。この方の場合、基金の年金は3ヶ所に請求し、3ヶ所から年金を受けることになります。A基金とB基金は厚生年金基金連合会、C基金は原則当該基金、D基金の代行返上は厚生年金からとなります。
さらに、B基金とD基金が加算型基金であればそれぞれの基金にも請求する必要があります。
こうなってくると、何がなんだかわからなくなりますが、現状個々の年金説明はありますが全体を解きほぐして説明してくれる年金相談所は残念ながらありません。
当然、社会保険事務所の年金相談にも限界があります。社会保険事務所の年金相談では、国民年金・厚生年金・船員保険・3共済等には対応しますが、テリトリー外の共済とか厚生年金基金とか厚生年金基金連合会については多少触れるだけです。
現状、この点を含めて、年金制度全体の説明ができる「年金カウンセラー」が必要になるほど年金の現場は混乱しています。本来、国民全体が関係する制度であればシンプルであることが必須なのでしょうが、現実は世紀末ならぬ制度末を迎えています。
このような事態のため、これから年金を受けようとする人には一層の「年金お調べ」が不可欠です。
●請求もれ年金1ヶ月見つかると
一般的に、請求もれ年金の年金加入が1ヶ月見つけると、次のような年金が終身受けられるようになります。(年功序列・終身雇用下の推定値。生涯給与が安い・高いで区分しても可)
20代の年金加入1ヶ月 → 3000円/年/終身
30・40代の年金加入1ヶ月 → 4000円/年/終身
50代の年金加入1ヶ月 → 5000円/年/終身
例えば、30代の年金加入記録が3年見つかったとすれば、36月×4000円で、144,000円が年間追加され、男性の平均年齢78歳までもらったとすれば60歳からとして18年間で2,592,000円になります。また、女性でも結婚前の3年が見つかったとすれば、36月×3000円で、108,000円/年、終身では平均年齢85歳として60歳から25年として2,700,000円にもなります。下手な資産運用や蓄財をやるならこの請求もれ年金の発掘をしたほうがよっぽど効果的です。
上記の例で、厚生年金基金の加入があったとすれば、厚生年金基金連合会から半分、厚生年金から半分ほどがもらえることになります。
仮に、請求もれ年金が10年も出てきたら、どういうことになるでしょう。120月×4000円として、480,000円/年追加され、18年間として8,640,000円にもなります。こういう大金を請求もれにするか、自分の年金としてしっかり確保するか、すべてはご自分の「年金お調べ」にかかっているのです。政府が取り揃えてくれるわけでもなく、社会保険庁は請求主義をたてに請求されなければ支払いません。
大雑把に1年見つかれば、12月×4000円として48,000円、おおよそ5万円の年金が増額になり、終身受けられることになります。
なお、すでに年金を受けている人がこの請求もれ年金を見つけたとすれば、5年の時効で消滅する分を除いて遡及払いが一時金で受けられ、年間の追加額も終身受けられます。
最近の報道によると、この「5年の時効」は特例的に取り払う方向のようです。
一般的には、昭和17年から終戦の混乱時代に請求もれ年金がたくさんあるようです。現在の人であれば、転職の多い人や年金に無関心の人、経歴が複雑な人などに請求もれ年金が発生しています。
●典型的な請求もれ年金5つの事例
□ ① 転職
D社の基礎年金番号しか持っていない事例だと、厚生年金15年では受けられないのであきらめてしまう人がいます。
この場合は、職歴を全部洗い出して年金加入記録の確認をすれば、倒産会社でも調べられます。4社別番号の場合もありますが、統合さえすれば問題はありません。
この事例だと、D社の15年も生き返って合計38年分の年金、おおよそ180万円/年ほどが受けられるようになります。
□ ②制度間渡り歩き
こんなに波乱万丈の人生を送る人は現実にはまれですが、ときたま3つほどの年金制度を渡り歩く人はいらっしゃいます。
すべての加入期間を合算して25年以上あれば年金になります。この事例ですと、私学共済だけ私学共済に年金請求し、後は社会保険事務所に年金請求します。
□ ③カラ期間
国民年金3号被保険者期間が8年と自分で国民年金を支払った5年で13年しかなく、25年に足りないので年金をあきらめている事例でも、昭和61年3月までの婚姻期間10年がカラ期間として使え、さらに結婚前の厚生年金2年を合算して25年になれば年金になります。ただし、昭和61年3月までの婚姻期間10年は年金額には反映されません。
カラ期間は、このほかにも沖縄在住・生活保護受給・学生・海外在住等がありますので、くれぐれも勝手解釈はやめ、社会保険事務所等に確認しましょう。
□ ④昔の基金加入
A社の厚生年金加入が見つかり、合わせて厚生年金基金加入も確認され、3年分の基金が厚生年金基金連合会から54,000円/年終身受け取れることになります。昔の基金加入を忘れている人が大勢いらっしゃいます。
さらに、最近の基金解散や代行返上で請求もれ年金が発生するリスクは増大しています。
これから年金の人は、年金給付の抑制のほかに年金制度変更のドサクサに約束されている年金も取り上げられてしまう場合もありますので要注意です。「果たすべき約束」が果たされないのが現実です。
□ ⑤海外在住
海外赴任から現地法人に転籍になった人や海外で事業をしている人など海外在住の長い人は、日本での厚生年金加入が判明し日本国籍であれば、厚生年金5年だけでは年金になりませんが、海外在住が20年以上あれば合わせて25年以上になり、厚生年金5年分の年金(約25万円)が終身受けられます。
海外在住の人は、はなからあきらめてしまっている人が多いようですし、海外在住のカラ期間が使えることを知らないまま年金を受けていないようです。
この海外在住を立証するために、パスポートとか在留証明とか戸籍の附表とかが必要になります。出国印のあるパスポートは年金のために宝物になります。永久保管しましょう。
また、海外転居した人も国民年金に任意加入できるので、将来の受給額や障害年金などを考えたら加入しておくべきでしょう。海外からでも、保険料支払いの方法は幾つかあります。
ドイツやアメリカに短期間赴任してその国の年金に加入した人も日本での年金加入と通算して10年あればその国の年金もうけられるし、25年以上あれば、日本の年金も受けることができます。ただし、アメリカは平成17年秋以降。このような二国間の通産協定は順次進行中です。協定成立後は日本の年金だけ加入します。
現地法人に転籍の場合、日本の年金制度からは外れるが国民年金に任意加入が可能です。
●「請求もれ年金」発生の背景
以上のような5つの事例の「請求もれ年金」が発生する背景は、現行の公的年金が被保険者全体の資産を政府が全体管理し、国民一人一人の個別管理になっていないためと総論的に考えられます。すなわち、どんぶり勘定ゆえの弊害と考えられます。
現実に、「社会保障の夢」はどちらかというと財政に摩り替えられています。もともと厚生年金は戦費調達で始まった制度ですから、戦後復興の産業資本として流用される土壌はあったのです。このような方式の年金であれば、裁量が働く余地があるため、本来、「人様のお金」である年金を国が他の目的に流用したり、政治家が産業資本として流用し使途不明金になったりしても不思議はありません。
実態としては、社会保障のための金が財政目的に使われてしまっているのです。それゆえの年金財政破綻でしょう。ここから、給付抑制の大義名分として国が責任を言い逃れるために「高齢化と少子化」を叫ぶのです。これも、ひとえに裁量が働かない個々人の年金勘定がないためとだけは言えるでしょう。
こういう中、平成13年(2001年)10月、ひとつの実験が企業年金で始まりました。これまでの厚生年金基金等は資産運用の低迷とか国際会計基準の採用等で財政維持が困難になり、基金解散とか代行返上が続出しています。新しく始まったスキームは「確定拠出年金」といい、加入者自身が資産運用の責任を負う個人勘定です。
これから年金を受ける人は、公的年金のほかにご自分の個人勘定の確定拠出年金も受けることになりますが、この年金はご自分が資産運用で失敗しない限り、請求もれ年金となることはないでしょう。政府や企業の裁量も働かないでしょう。いろいろ紆余曲折はあるでしょうが、曲がりなりにも「人様のお金」は保全される道筋が示されました。
【出所:「年金生活への第一歩」 平成16年】
1.これは宝もの!
図表42 厚生年金基金加入員証
「厚生年金基金」に加入すると、このような加入員証(紙幣型が一般的、中には箱型もあります)が発行・交付されます。原則65歳になると、これが年金(終身給付)になります。
原則、10年以上加入の場合は当該基金から、10年未満であれば企業年金連合会から給付されます。
厚生年金受給資格の有る人は、厚生年金基金加入1ヶ月以上は年金になります。
例えば、厚生年金基金24ヶ月の加入ですと、おおよそ2,000円/月×24ヶ月で、48,000円/年となり、生涯(65歳~85歳の20年間)換算すると、960,000円にもなります。
代行返上や基金解散で取扱いが区々になっていますので、一度企業年金連合会等に問合せてみるとよろしいでしょう。
・企業年金連合会(旧厚生年金基金連合会)
住所:〒105-0011 東京都港区芝公園2丁目4番1号芝パークビルB館10階・11階
電話番号:03―5401―8711(代表)
ホームページ:http://www.pfa.or.jp/
・当該基金
当該厚生年金基金事務所、または会社の人事課とか総務課の担当窓口
2.請求漏れ年金
日本の公的年金は、制度が分立していること(少し前までは8つの公的年金制度がありました)とか、過去の年金加入記録の管理がしっかり統合されていないとか、年金支払いのミス続発等の欠陥商品になっており、実務面からもリコールが必要な事態に立ち至っています。つまり、国民サイドからすれば、不可解な年金で請求もれ年金が発生しやすい制度になっています。
生涯ひとつの会社しか就労していなくて、基礎年金番号にそのすべての加入記録が管理されている人であれば、一応請求もれ年金を考える必要はないでしょう。しかし、多くの人の場合、過去に加入していた年金が、何らかの事情で加入記録が統合されてないままに放置されているのが現実です。
国が積極的に100%それを統合するなどということは考えられませんし、限界があります。仮に、「総背番号制」や民営化等が導入されても年金の加入記録の統合はむずかしいでしょう。もれ落ちる記録が続出して収拾が付かなくなるでしょう。仮にそうなったとしたら、なおさら「年金お調べ」が重要になります。
筆者の30年の年金実務経験から言えることは、基礎年金番号に記録がきれいに統合されている人は全体の10%位で、残りの90%ほどは年金加入記録のもれや未統合があります。それゆえ、あなたもそのうちのお一人ではないかと懸念されます。
●請求もれ年金って?
このような人は、請求もれ年金の点では一応問題はないでしょう。基礎年金番号の中にすべての年金加入記録が記録されていると考えられます。
しかし、なかには転勤先がそっくり落ちていたりする場合もありますので、全期間であるかどうかを確認します。それと、過去の給料の額が違っている場合もあります。
問題なのは次のような人です。
基礎年金番号の年金加入記録は判然としていても、それ以前の加入記録が統合されていません。制度間の渡り歩きもあるし、不明部分があるし、A社の年金加入記録がありません。
これは、名前(カタカナ)と生年月日(和暦)を使って社会保険事務所のコンピューターで検索すれば調べられます。そのうえで、基礎年金番号にすべての番号を統合しなければなりません。そうしなければ、年金額に反映しません。請求もれ年金が残ります。
一般的な請求もれ年金の事例は次のような人です。
D社の年金手帳しかなく、それ以前の年金加入の手帳とか被保険者証を紛失している場合です。
このままだと、D社の加入期間だけで受給資格期間を満たせず年金が受けられないということになります。このまま、年金は受けられないと独り決めしている人もいらっしゃいます。
実はA社、B社、C社、それに未加入の期間、国民年金の期間を確認すれば年金を受けられる加入期間を満たしていると考えられますので、こういう人こそ「年金お調べ」が必要になります。
●請求もれ年金の典型例
もっと一般的なのは次のような事例です。
基礎年金番号は持っているのですが、A社の年金加入はすっかり忘れている事例です。社名がわかれば社会保険事務所で調査は簡単にできます。本人の口から社名を言ってもらうだけで調べられます。
厚生年金基金の加入があるがどうかも社会保険事務所のコンピューターで確認できます。基金解散や代行返上等も同様です。
基金の年金は、原則10年以上加入の場合は当該基金へ原則60歳になったら請求します。10年未満の細切れ基金の分はまとめて厚生年金基金連合会から終身支払われます。この基金分年金を忘れている人が大勢いらっしゃいます。請求もれ年金の一典型です。
厚生年金基金に関して上のような事例の人は少ないのですが、それでも複数の事案が重なっている人はいらっしゃいます。この方の場合、基金の年金は3ヶ所に請求し、3ヶ所から年金を受けることになります。A基金とB基金は厚生年金基金連合会、C基金は原則当該基金、D基金の代行返上は厚生年金からとなります。
さらに、B基金とD基金が加算型基金であればそれぞれの基金にも請求する必要があります。
こうなってくると、何がなんだかわからなくなりますが、現状個々の年金説明はありますが全体を解きほぐして説明してくれる年金相談所は残念ながらありません。
当然、社会保険事務所の年金相談にも限界があります。社会保険事務所の年金相談では、国民年金・厚生年金・船員保険・3共済等には対応しますが、テリトリー外の共済とか厚生年金基金とか厚生年金基金連合会については多少触れるだけです。
現状、この点を含めて、年金制度全体の説明ができる「年金カウンセラー」が必要になるほど年金の現場は混乱しています。本来、国民全体が関係する制度であればシンプルであることが必須なのでしょうが、現実は世紀末ならぬ制度末を迎えています。
このような事態のため、これから年金を受けようとする人には一層の「年金お調べ」が不可欠です。
●請求もれ年金1ヶ月見つかると
一般的に、請求もれ年金の年金加入が1ヶ月見つけると、次のような年金が終身受けられるようになります。(年功序列・終身雇用下の推定値。生涯給与が安い・高いで区分しても可)
20代の年金加入1ヶ月 → 3000円/年/終身
30・40代の年金加入1ヶ月 → 4000円/年/終身
50代の年金加入1ヶ月 → 5000円/年/終身
例えば、30代の年金加入記録が3年見つかったとすれば、36月×4000円で、144,000円が年間追加され、男性の平均年齢78歳までもらったとすれば60歳からとして18年間で2,592,000円になります。また、女性でも結婚前の3年が見つかったとすれば、36月×3000円で、108,000円/年、終身では平均年齢85歳として60歳から25年として2,700,000円にもなります。下手な資産運用や蓄財をやるならこの請求もれ年金の発掘をしたほうがよっぽど効果的です。
上記の例で、厚生年金基金の加入があったとすれば、厚生年金基金連合会から半分、厚生年金から半分ほどがもらえることになります。
仮に、請求もれ年金が10年も出てきたら、どういうことになるでしょう。120月×4000円として、480,000円/年追加され、18年間として8,640,000円にもなります。こういう大金を請求もれにするか、自分の年金としてしっかり確保するか、すべてはご自分の「年金お調べ」にかかっているのです。政府が取り揃えてくれるわけでもなく、社会保険庁は請求主義をたてに請求されなければ支払いません。
大雑把に1年見つかれば、12月×4000円として48,000円、おおよそ5万円の年金が増額になり、終身受けられることになります。
なお、すでに年金を受けている人がこの請求もれ年金を見つけたとすれば、5年の時効で消滅する分を除いて遡及払いが一時金で受けられ、年間の追加額も終身受けられます。
最近の報道によると、この「5年の時効」は特例的に取り払う方向のようです。
一般的には、昭和17年から終戦の混乱時代に請求もれ年金がたくさんあるようです。現在の人であれば、転職の多い人や年金に無関心の人、経歴が複雑な人などに請求もれ年金が発生しています。
●典型的な請求もれ年金5つの事例
□ ① 転職
D社の基礎年金番号しか持っていない事例だと、厚生年金15年では受けられないのであきらめてしまう人がいます。
この場合は、職歴を全部洗い出して年金加入記録の確認をすれば、倒産会社でも調べられます。4社別番号の場合もありますが、統合さえすれば問題はありません。
この事例だと、D社の15年も生き返って合計38年分の年金、おおよそ180万円/年ほどが受けられるようになります。
□ ②制度間渡り歩き
こんなに波乱万丈の人生を送る人は現実にはまれですが、ときたま3つほどの年金制度を渡り歩く人はいらっしゃいます。
すべての加入期間を合算して25年以上あれば年金になります。この事例ですと、私学共済だけ私学共済に年金請求し、後は社会保険事務所に年金請求します。
□ ③カラ期間
国民年金3号被保険者期間が8年と自分で国民年金を支払った5年で13年しかなく、25年に足りないので年金をあきらめている事例でも、昭和61年3月までの婚姻期間10年がカラ期間として使え、さらに結婚前の厚生年金2年を合算して25年になれば年金になります。ただし、昭和61年3月までの婚姻期間10年は年金額には反映されません。
カラ期間は、このほかにも沖縄在住・生活保護受給・学生・海外在住等がありますので、くれぐれも勝手解釈はやめ、社会保険事務所等に確認しましょう。
□ ④昔の基金加入
A社の厚生年金加入が見つかり、合わせて厚生年金基金加入も確認され、3年分の基金が厚生年金基金連合会から54,000円/年終身受け取れることになります。昔の基金加入を忘れている人が大勢いらっしゃいます。
さらに、最近の基金解散や代行返上で請求もれ年金が発生するリスクは増大しています。
これから年金の人は、年金給付の抑制のほかに年金制度変更のドサクサに約束されている年金も取り上げられてしまう場合もありますので要注意です。「果たすべき約束」が果たされないのが現実です。
□ ⑤海外在住
海外赴任から現地法人に転籍になった人や海外で事業をしている人など海外在住の長い人は、日本での厚生年金加入が判明し日本国籍であれば、厚生年金5年だけでは年金になりませんが、海外在住が20年以上あれば合わせて25年以上になり、厚生年金5年分の年金(約25万円)が終身受けられます。
海外在住の人は、はなからあきらめてしまっている人が多いようですし、海外在住のカラ期間が使えることを知らないまま年金を受けていないようです。
この海外在住を立証するために、パスポートとか在留証明とか戸籍の附表とかが必要になります。出国印のあるパスポートは年金のために宝物になります。永久保管しましょう。
また、海外転居した人も国民年金に任意加入できるので、将来の受給額や障害年金などを考えたら加入しておくべきでしょう。海外からでも、保険料支払いの方法は幾つかあります。
ドイツやアメリカに短期間赴任してその国の年金に加入した人も日本での年金加入と通算して10年あればその国の年金もうけられるし、25年以上あれば、日本の年金も受けることができます。ただし、アメリカは平成17年秋以降。このような二国間の通産協定は順次進行中です。協定成立後は日本の年金だけ加入します。
現地法人に転籍の場合、日本の年金制度からは外れるが国民年金に任意加入が可能です。
●「請求もれ年金」発生の背景
以上のような5つの事例の「請求もれ年金」が発生する背景は、現行の公的年金が被保険者全体の資産を政府が全体管理し、国民一人一人の個別管理になっていないためと総論的に考えられます。すなわち、どんぶり勘定ゆえの弊害と考えられます。
現実に、「社会保障の夢」はどちらかというと財政に摩り替えられています。もともと厚生年金は戦費調達で始まった制度ですから、戦後復興の産業資本として流用される土壌はあったのです。このような方式の年金であれば、裁量が働く余地があるため、本来、「人様のお金」である年金を国が他の目的に流用したり、政治家が産業資本として流用し使途不明金になったりしても不思議はありません。
実態としては、社会保障のための金が財政目的に使われてしまっているのです。それゆえの年金財政破綻でしょう。ここから、給付抑制の大義名分として国が責任を言い逃れるために「高齢化と少子化」を叫ぶのです。これも、ひとえに裁量が働かない個々人の年金勘定がないためとだけは言えるでしょう。
こういう中、平成13年(2001年)10月、ひとつの実験が企業年金で始まりました。これまでの厚生年金基金等は資産運用の低迷とか国際会計基準の採用等で財政維持が困難になり、基金解散とか代行返上が続出しています。新しく始まったスキームは「確定拠出年金」といい、加入者自身が資産運用の責任を負う個人勘定です。
これから年金を受ける人は、公的年金のほかにご自分の個人勘定の確定拠出年金も受けることになりますが、この年金はご自分が資産運用で失敗しない限り、請求もれ年金となることはないでしょう。政府や企業の裁量も働かないでしょう。いろいろ紆余曲折はあるでしょうが、曲がりなりにも「人様のお金」は保全される道筋が示されました。
【出所:「年金生活への第一歩」 平成16年】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます