③完全民営化への論理的帰結
最後に、1週間の米国旅行で調査・触発された401(k)を材料に、厚生年金基金を足掛かりにして、ビジョンとしての日本の年金制度を考えてみましょう。
まずは、一般的背景から
・現在の日本は、鎖国して島国に閉じこもっていられるような状態にはなく、全ての面で世 界レベルに巻き込まれています。従来のような物理的な国境というのは意味が無くなり、
グロ-バルなレベルから見ることを要請されています。
・グロ-バル・マネ-の力業による日本の護送船団体制という金融秩序の崩壊は、統制・計 画的な大陸法文化から自由主義・個人主義的な英米法文化に移行を意味し、司法秩序・税 制・行政等、国家の基盤を形成するフレームワークの革新が必要となります。つまり、
裁量行政から事後監視型行政へ、他者依存体質から自己責任体質へ早急なシフト・チェン ジが求められています。
・急激な少子・高齢化に伴う公的年金の財政破綻は社会保障費の削減を必然とします。
・退職金の未積立を容認しました低コストの人件費で国際競争力を付けてきた企業は、国際 会計基準の導入というドスを突き付けられています。終身雇用・年功序列・企業内組合の 雇用システムの維持が出来ないということは退職金の廃止を意味しています。
・厚生年金基金は役所の裁量行政と金融機関の恫喝営業の下、ゼネラリストの運営意識によ り経営のしたたかさを創り出せず、制度を<死に体>にしてしまいました。
・基金は代行分を持つため政府・大蔵の低金利政策の被害者となり、さらに厚生省の長期に
渡る裁量行政による規制で財政破綻を招いています。つまり、役所の行政指導の結果が現在の基金の財政破綻を招いているということ。大蔵省の金融の護送船団体制によって本邦金融機関が崩壊しましたように、厚生省等の法令無視な行政指導により確定給付型厚生年金基金も<死に体>になってしまいました。
このような事態に対して、このたびのアメリカ旅行に触発されて、筆者は次のようなことを考えるに至りました。
<資本の効率性を高めなければなりません。>
・1200兆円の個人資産、社会保障費削減、企業のリストラ策、基金の積立不足等と いう事態で抜本的な制度変更と資産運用の効率化が必須となっています。
・戦後営々と築いてきた国民の資産を有効活用するために未経験ゾ-ンの資産運用に立 ち入らなければなりません。
・政治・経済・金融・行政・法制・司法・教育等のインフラを効率性の観点から再構築 しなければなりません。
・統制・計画経済への決別を達成するためには、大陸法から英米法へ、国家会計にバラ ンスシ-ト導入、源泉徴収方式から申告納税方式へ、第三セクタ-の民営化等、改 善・ 改革を要することは無数にあります。
<従来制度の維持は困難>
・従来制度の維持は余りにハイコストにすぎ、希望を殺ぐマイナス効果しか生み出さな い状況になっています。
<官のハイコスト・民の活力>
・官のハイコストを認識するためには、官から独立した人格(他者依存体質の廃棄され た人格)の形成が不可欠ですが、和の精神というツア-リズムの専制に抑えこまれて きた日本人には他者依存体質の廃棄などということは至難の業でしょう。とは言え、 変わらざるを得ない状況となっています。
・民の活力を発揮させるためには、年金の世界では企業のコストを有効活用して従業員 の福利厚生を高め、経済の活況を創造するフレームワークを創出する必要がありまし ょう。
<退職金の廃止>
・時代にアン・マッチなマイナ-な退職金を廃止し、マッチング拠出等によるビィビイ ッドな仕掛けのある制度に変えていくべきでしょう。同じ資本100が退職金では6 0になってしまうが、後者では100、あるいは120、150ということもありま すように仕組めるでありましょう。100が生きるということでしょう。
・PBOがなくても、退職金制度は企業にとっては企業財務弱体化のシンボルです。
・現行でさえ、退職金は厚生年金基金への移行により全額非課税で担保出来るのです
が企業財務の責任者には諸般の事情を挙げつらい、コスト意識が欠如している行動に でるのが一般です。
・退職金をPBO含めて社内留保で引き当てることを廃止し、1案として、全額あるい は60%程度をDBに移行すべきでしょう。残40%については、DCに振り分けま したらどうでしょう。
<確定拠出型年金制度の導入>
・プラス思考の制度再構築を図るため、多様なインセンティブを豊富なオプション付き で提供して具体的・現実的な活力源とします。
・資本の効率促進的循環を促すようなインセンティブ付きのフレームワークを作り、
日本経済のダイナモとなるように仕掛けます。
<代行分の完全民営化>
・従来の官と基金の無能力・ハイコスト体質が厚生年金基金の破綻という敗北状態を招 いている事実を認識すること。日本のDBはこのままでは<死に体>であります。
・政府・官僚には基金制度発足時の「果たすべき約束」があります。それが基金制度の 完全民営化です。
・民営化へのインセンティブを設定して基金の活力を取り戻させます。
・適用除外方式、市場金利連動の予定利率等による代行分の完全民営化を図ります。
・確定給付型年金は、確定拠出型が導入された場合の激変緩和装置、ヘッシ機能装置と して生き残し、キャッシュ・バランス型等の改善を施し、<顔の見える基金>に工夫 を凝らして<死に体>から再生させなければならないでしょう。
<日本の年金システム再構築>
確定拠出
(個人) 多様な優遇策・多様な選択肢を付与
確定給付
(企業) 代行分の完全民営化・退職金の完全移行、キャッシュ・バランス型等の改善を加えます 「顔のみえる基金」に再生
公的年金
(国家) 社会保険方式と税法式の組み合わせ=小さい政府
④終わりに
百聞は一見にしかずと言いますが、この度の米国401(k)調査旅行は、文字通り現場の一見により多くのことが背景・事情・哲学等と共に明らかになり、国内で流布されている多くの誤報・デッチアゲ・考え違いも明らかになりました。
1週間、非常にエキサィテングに過ごし、啓発・触発されたことが無数にあります。中でもアメリカという国が人に強烈なエネルギ-を与える国ですという発見は、まもなく60歳になろうとしている筆者を20歳の若者のように感激させました。それらは、未だに唸りを発していて、この旅行記に納めまとめるのに1ケ月も要してしまいました。
筆者にとって、この旅行は、1/4世紀に渡る基金業務の経験、1,000冊になる金融関係読書、年金ビジョンの論理成立等のフィナ-レを飾るに相応しい、楽しくエキサィテングなイブェントとなりました。
最後に、1週間の米国旅行で調査・触発された401(k)を材料に、厚生年金基金を足掛かりにして、ビジョンとしての日本の年金制度を考えてみましょう。
まずは、一般的背景から
・現在の日本は、鎖国して島国に閉じこもっていられるような状態にはなく、全ての面で世 界レベルに巻き込まれています。従来のような物理的な国境というのは意味が無くなり、
グロ-バルなレベルから見ることを要請されています。
・グロ-バル・マネ-の力業による日本の護送船団体制という金融秩序の崩壊は、統制・計 画的な大陸法文化から自由主義・個人主義的な英米法文化に移行を意味し、司法秩序・税 制・行政等、国家の基盤を形成するフレームワークの革新が必要となります。つまり、
裁量行政から事後監視型行政へ、他者依存体質から自己責任体質へ早急なシフト・チェン ジが求められています。
・急激な少子・高齢化に伴う公的年金の財政破綻は社会保障費の削減を必然とします。
・退職金の未積立を容認しました低コストの人件費で国際競争力を付けてきた企業は、国際 会計基準の導入というドスを突き付けられています。終身雇用・年功序列・企業内組合の 雇用システムの維持が出来ないということは退職金の廃止を意味しています。
・厚生年金基金は役所の裁量行政と金融機関の恫喝営業の下、ゼネラリストの運営意識によ り経営のしたたかさを創り出せず、制度を<死に体>にしてしまいました。
・基金は代行分を持つため政府・大蔵の低金利政策の被害者となり、さらに厚生省の長期に
渡る裁量行政による規制で財政破綻を招いています。つまり、役所の行政指導の結果が現在の基金の財政破綻を招いているということ。大蔵省の金融の護送船団体制によって本邦金融機関が崩壊しましたように、厚生省等の法令無視な行政指導により確定給付型厚生年金基金も<死に体>になってしまいました。
このような事態に対して、このたびのアメリカ旅行に触発されて、筆者は次のようなことを考えるに至りました。
<資本の効率性を高めなければなりません。>
・1200兆円の個人資産、社会保障費削減、企業のリストラ策、基金の積立不足等と いう事態で抜本的な制度変更と資産運用の効率化が必須となっています。
・戦後営々と築いてきた国民の資産を有効活用するために未経験ゾ-ンの資産運用に立 ち入らなければなりません。
・政治・経済・金融・行政・法制・司法・教育等のインフラを効率性の観点から再構築 しなければなりません。
・統制・計画経済への決別を達成するためには、大陸法から英米法へ、国家会計にバラ ンスシ-ト導入、源泉徴収方式から申告納税方式へ、第三セクタ-の民営化等、改 善・ 改革を要することは無数にあります。
<従来制度の維持は困難>
・従来制度の維持は余りにハイコストにすぎ、希望を殺ぐマイナス効果しか生み出さな い状況になっています。
<官のハイコスト・民の活力>
・官のハイコストを認識するためには、官から独立した人格(他者依存体質の廃棄され た人格)の形成が不可欠ですが、和の精神というツア-リズムの専制に抑えこまれて きた日本人には他者依存体質の廃棄などということは至難の業でしょう。とは言え、 変わらざるを得ない状況となっています。
・民の活力を発揮させるためには、年金の世界では企業のコストを有効活用して従業員 の福利厚生を高め、経済の活況を創造するフレームワークを創出する必要がありまし ょう。
<退職金の廃止>
・時代にアン・マッチなマイナ-な退職金を廃止し、マッチング拠出等によるビィビイ ッドな仕掛けのある制度に変えていくべきでしょう。同じ資本100が退職金では6 0になってしまうが、後者では100、あるいは120、150ということもありま すように仕組めるでありましょう。100が生きるということでしょう。
・PBOがなくても、退職金制度は企業にとっては企業財務弱体化のシンボルです。
・現行でさえ、退職金は厚生年金基金への移行により全額非課税で担保出来るのです
が企業財務の責任者には諸般の事情を挙げつらい、コスト意識が欠如している行動に でるのが一般です。
・退職金をPBO含めて社内留保で引き当てることを廃止し、1案として、全額あるい は60%程度をDBに移行すべきでしょう。残40%については、DCに振り分けま したらどうでしょう。
<確定拠出型年金制度の導入>
・プラス思考の制度再構築を図るため、多様なインセンティブを豊富なオプション付き で提供して具体的・現実的な活力源とします。
・資本の効率促進的循環を促すようなインセンティブ付きのフレームワークを作り、
日本経済のダイナモとなるように仕掛けます。
<代行分の完全民営化>
・従来の官と基金の無能力・ハイコスト体質が厚生年金基金の破綻という敗北状態を招 いている事実を認識すること。日本のDBはこのままでは<死に体>であります。
・政府・官僚には基金制度発足時の「果たすべき約束」があります。それが基金制度の 完全民営化です。
・民営化へのインセンティブを設定して基金の活力を取り戻させます。
・適用除外方式、市場金利連動の予定利率等による代行分の完全民営化を図ります。
・確定給付型年金は、確定拠出型が導入された場合の激変緩和装置、ヘッシ機能装置と して生き残し、キャッシュ・バランス型等の改善を施し、<顔の見える基金>に工夫 を凝らして<死に体>から再生させなければならないでしょう。
<日本の年金システム再構築>
確定拠出
(個人) 多様な優遇策・多様な選択肢を付与
確定給付
(企業) 代行分の完全民営化・退職金の完全移行、キャッシュ・バランス型等の改善を加えます 「顔のみえる基金」に再生
公的年金
(国家) 社会保険方式と税法式の組み合わせ=小さい政府
④終わりに
百聞は一見にしかずと言いますが、この度の米国401(k)調査旅行は、文字通り現場の一見により多くのことが背景・事情・哲学等と共に明らかになり、国内で流布されている多くの誤報・デッチアゲ・考え違いも明らかになりました。
1週間、非常にエキサィテングに過ごし、啓発・触発されたことが無数にあります。中でもアメリカという国が人に強烈なエネルギ-を与える国ですという発見は、まもなく60歳になろうとしている筆者を20歳の若者のように感激させました。それらは、未だに唸りを発していて、この旅行記に納めまとめるのに1ケ月も要してしまいました。
筆者にとって、この旅行は、1/4世紀に渡る基金業務の経験、1,000冊になる金融関係読書、年金ビジョンの論理成立等のフィナ-レを飾るに相応しい、楽しくエキサィテングなイブェントとなりました。
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