海水浴といえば、すぐに脳裏に浮かぶのは福井県の三国海水浴場です。
もう60年も前のことになりますか。
父親とその兄弟姉妹が丸岡にある菩提寺に集結した時のことです。
兄弟すべてが集まった訳ではないのですが、なんといっても10人兄弟。
それぞれの家族を勘定に入れるとまさに団体さんです。
それが法事の流れで海水浴に繰り出したということでしょう。
小学低学年だった私は何もわからずながら、大勢の親戚に囲まれ嬉しくて楽しくてはしゃいでいた気がします。
そんな時、父親の一番下の弟が「はぁ坊!はぁ坊!泳ぎ教えてあげよう。おいで!」と私を海に連れ出したのです。
山奥育ちの私は川に入って水遊びぐらいは経験あったのですが、水を切って泳ぐなどということはまだしてみようとも思っていなかった。
「さぁ、体の力を抜いて!脚をバタバタするんだよ。」
そう言いつつどんどん沖へ引っ張っていくじゃありませんか。
「怖いよ、怖いよ。」泣き叫びながら必死にしがみつこうとする私を軽くあしらい、
「がんばれ!がんばれ!」と手を離したのです。
まさか私を殺そうなどと考えたとは思えないのですが、私の方はその時は絶対に溺れ死ぬと思ってました。
しょっぱい水もずいぶん飲んだ記憶があります。
泳ぎについてはその後中学に上がったころ開眼し、得意種目となったのですから、あの時の経験はいい訓練になったのかもしれません。
もちろんその後もその叔父を憎んだこともなく恨んだこともないのですが、この経験は強烈に頭にこびりついています。
ほろ苦くて楽しかった海水浴の思い出です。