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アメリカ世論調査動向(NATOV.S. ロシア代理戦争を中心に)(2023年1月)

2023-02-23 14:43:58 | 時事

 保守系シンクタンクのシカゴ国際問題評議会が1030人を対象に2022年11月18日から20日にかけて行った調査によれば、アメリカ人の35%がウクライナに武器を送るべきではなく、34%がウクライナへの財政支援をするべきではないと答えている。また、同調査によれば、家計に影響が及ぼうとも、ワシントンが「最後まで」ウクライナを支援すべきかどうかについて、アメリカ人の意見は分かれており、2022年7月には58%であったのが、11月には48%に低下した。ウクライナがなるべく早く停戦交渉に臨むべきとするのも、38%から47%に増加している。同調査では、40%のアメリカ人が、現在のレベルの支援を維持すべきと答えている。一方で、ウクライナを有利にするために米国が介入して、戦争を早く終わらせるべきと考えるアメリカ人は、およそ10人に3人の27%で、アメリカは徐々にウクライナ支援から手を引くべきと考えるアメリカ人も3人に1人の29%に上る。党派別では、53%の民主党員と39%の独立系が、現在のレベルの支援を維持すべきと考えているが、共和党員の43%が徐々に手を引くべきと考えている。

 11月の調査では、民主党員の10人に6人の61%が「エネルギー価格の高騰を甘受してもウクライナを支持する」と回答しているが、これは、2022年7月の10人に7人(69%)から減少している。しかし、共和党員の意見はより大きく変化している。「ウクライナを必要なだけ支援すべきだ」と答えた共和党員は、2022年夏の50%から激減して33%にとどまり、逆に、「クライナの領土的妥協を伴っても、ウクライナを和平に向かわせるべき」と答えたのは、2022年7月の46%から63%に上昇している。

 アメリカ人は、ロシアが劣勢であるかどうかについては確信を持てていない。ロシアが優勢と考える人は、ウクライナが優勢と考える人と同じで26%である。ウクライナが優勢と考えるのは民主党員では32%であり、共和党員の23%と独立系の22%よりも多い。しかしながら、半数近い46%がどちらも優勢ではないと考えている。

 依然として、多くのアメリカ人がウクライナへの継続支援を支持しているが、一年近くが経過して、共和党員のウクライナ支援への支持は目に見えて減退している。2022年3月には80%の共和党員が武器支援を支持していたが、その数は、同年7月に68%に低下し、11月の調査では55%になっている。同様に、経済支援の支持も、2022年3月には74%だったものが、7月には64%となり、11月には50%に低下している。一方で、民主党員と独立系の武器支援及び経済支援支持は、それほどの変化を見せていない。自国の軍隊をウクライナに送ることを支持すると回答したのは7月には38%だったのが、11月には32%に低下している。

 2022年7月27日と28日に1885人を対象に行われたハーヴァード・ハリスの調査では、47%のアメリカ人が、「十分な支援を行ったので支援を中止すべき」と答えていたが、同年9月に行われたクインシー・インスティテュートによる調査では、57%の有権者が、ウクライナ戦争を終わらせるために、ウクライナが妥協することになっても、できるだけ早くアメリカが外交交渉を行うことを強く、或いはある程度支持しているとの結果が出ている。また、同調査によれば、有権者の49%が、バイデン政権と議会は戦争終結のために、より外交的に努力する必要があると答え、61%が戦争が経済的に何らかの影響を及ぼしていると思うと答えている。

 フォックス・ニュースがビーコン研究所とショー&カンパニー研究所と共同で1月27日から30日にかけて行った調査によると、アメリカの有権者の半数強の51%がウクライナはロシアとの戦争に勝っていると考えており、3分の2近くが支援の継続を望んでいる。64%はウクライナへの武器の継続的な提供を支持し、63%は継続的な財政援助を支持している。この数字は、それぞれ61%及び59%だった6カ月前と比べると、僅差で増えている。民主党では10人に8人の79%が資金援助と武器援助の継続に賛成している。共和党と独立系では、前者の51%と後者の55%が資金援助に賛成しており、前者の55%と後者の56%がと武器援助に賛成している。

 戦争に不安を感じている有権者は約68%で、ロシアが2月24日直後の2022年3月の最高値(82%)から低下している。最近では、インフレ(86%)、犯罪率(80%)、米国内の政治的分裂(78%)、全米のオピオイド中毒(76%)などを懸念する人が増えている。バイデン政権は、ロシア・ウクライナへの対応で最も評価されており、45%が支持、51%が不支持となっている。これは、同政権の経済(37-61%)、国境警備(35-61%)、移民(35-61%)、インフレ(31-66%)対策に対する評価よりも良い。

 マーケット大学が全国の成人1000名を対象に1月9日から20日にかけて行った調査では、ウクライナへの米国の支援が「多すぎる」と考えるアメリカ人は、2022年11月では32%だったのが、2023年1月の調査では29%と低下して、逆に「十分ではない」と考えるアメリカ人は、23%から24%とわずかながら増えている。「丁度よいレベル」は、それぞれ45%と46%でほとんど変化がない。しかし、党派別内訳で見ると、「多すぎる」は、共和党で47%であるのに対して、民主党と独立系では、それぞれ14%と25%であり。同様に、「十分ではない」と考えるのは、共和党で15%であるのに対して、民主党と独立系では、それぞれ29%と33%である。総じて、ウクライナへの支援を巡っては、共和党員と民主党員の間に異なる反応が見られる。

 また、アメリカは国際問題について「積極的に関与すべき」或いは「距離を置くべき」という問いについても、共和党員は、両者が50%と拮抗しているのに対して、民主党では、前者が73%、後者が27%と、民主党員の間に「積極的に関与すべき」と考える者が多い。独立系では、それぞれ42%と54%で、「距離を置くべき」とする意見が多数である。バイデンの支持率は、2022年11月から2ポイント低下して、43%であり、不支持は56%である。

 ピュー研究所が5152名を対象に2023年1月18日から24日にかけて行ったアメリカ人の傾向性調査では、バイデンの支持率は38%、不支持率が60%となっている。ウクライナ事態に関して、アメリカのウクライナへの支援についての意見は、2022年9月12日から18日に行われた調査では「多すぎる」が20%だったのが、2023年1月の調査では26%に増えている。「十分ではない」が、18%から20%と微増。「適正なレベル」が37%から31%に減少している。

 「ロシアのウクライナ侵攻が、どれだけアメリカの権益にたいして脅威となるか」という質問にたいしては、2022年3月7日から13日に行われた調査では、「重大な脅威」とする意見が50%に達したが、2023年1月の調査では35%に減少している。一方、「ある程度脅威」とする意見は、28%から33%と若干増加している。また、「脅威ではない」とする意見も、6%から9%に微増している。「分からない」とする意見は、16%から21%に変化している。

 クイニピアック大学が2023年1月18日に発表した世論調査結果では、バイデン政権の支持率―支持率は、2022年12月の時点で40%―50%であったのが、36%―53%となっている。2023年1月の調査では、アメリカのウクライナ支援を「多すぎる」と回答したのは33%であり、「少なすぎる」が21%、「丁度よいレベル」と回答したのが38%である。

 バイデン政権のウクライナ危機への対処については、2023年1月の調査では44%が「支持する」と回答し、47%が「支持しない」と回答。共和党員で「支持する」が18%、「支持しない」は73%、民主党員では、それぞれ79%及び16%で、共和党と民主党でほぼ真逆となっている。

「アメリカが現在直面している喫緊の問題は何か」という問いに対しては、「ロシア/ウクライナ」が全体で3%、「銃犯罪」が8%、「入国管理問題」が10%で、「インフレ」が35%である。特に、「インフレ」を「喫緊の問題」と考えるのは、共和党で49%、民主党で20%、独立系で39%である。

 アメリカのウクライナ支援についての質問では、全体で「多すぎる」が33%、「少なすぎる」が21%、「丁度良いレベル」が38%である。共和党員の50%が「多すぎる」と回答しているのに対して、民主党員では11%、独立系では34%である。「少なすぎる」は、共和党17%、民主党で23%、独立系で24%であり、「丁度良いレベル」は、共和党で26%、民主党で59%、独立系で36%である。「多すぎる」は、2022年2月28日の調査では7%で、「少なすぎる」が45%、「丁度良いレベル」が37%であった。

 ギャラップが2023年1月3日から22日にかけて行った調査では、アメリカ人のウクライナ事態に対する考えは、2022年8月調査時の時のそれと比較してあまり変わっておらず、昨年の8月時点では、紛争が長引いたとしても、ウクライナが領土を奪回すべきと考えるアメリカ人は66%に上っており、その数は、2023年1月でも65%である。しかし、編入した領域をロシアが維持した上で停戦すべきと答えたのも、両方の調査で31%である。これを党派別に見ると、ウクライナが領土を奪回すべきとするのは、民主党支持者で81%であるのに対して、共和党支持者では53%、無党派では59%となっている。自国のウクライナへの支援が「多すぎる」と考えるのは、共和党支持者で47%と過半数に迫る一方で、その数は、民主党支持者では10%とかなり低い。総じて、ウクライナに白紙手形を与えることに否定的で、ロシアとの直接的な対峙を迫られるような事態になることを忌避する意識は、共和党支持者の間に強い傾向が見てとれる。

【まとめ】

 各調査間でばらつきが見られるものの、アメリカ人の多数が、現在でもウクライナへの継続的支援を支持していることが示されている。しかし、その一方で、ウクライナの領土的妥協を認めることになっても停戦を支持するアメリカ人は、最低でも10人に3人はいることも示されており、アメリカが、国内世論からの反発無しに、継続的にウクライナに武器支援や財政支援を行うのは、かなり困難な状況になってきていると考えられる。

 ヨーロッパでは、ウクライナが領土を一部放棄しても戦争の早期終結が望ましいとする意見が、オーストリアで64%、ドイツで60%、ギリシアでは54%、イタリアとスペインでは50%、ポルトガルで41%に達し、全体でも48%と過半数に迫っていることが報告されている。ヨーロッパでも、ウクライナへの軍事援助を継続しにくい状況が生じており、ましてや、戦争の確実なエスカレートとなるNATOの直接介入は不可能に近い世論状況が形成されている。総じて、どちらが勝っているかについての認識が、キエフへの支援提供に大きな意味を持っており、ウクライナを優勢とする報道と支援支持の増加には相関関係が看取される。即ち、メディアが戦場での現状をどのように伝えるかが、戦場における現実の展開如何に関わらず、世論に大きな影響を持っていることが示されている。西側各国のメディアがウクライナの「優勢」を強調するのは、 西側諸国における市民の「戦意」を維持して、軍事援助を継続することにあると考えられる。