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壁・・色と質

▲ マンションリノベーション/5カ月後【Kinoco(キノコ)】足立区

 

私は、家の内部を白い壁と木の床にすることを基本としてきました。

家をシンプルにすることを心がけてきましたから、できるだけ家の中の要素の数を減らしたいと考えてきました。

白い壁というのは、極論を言うと「色」を排除したものです。「白」という色があるから”排除”というのはおかしい表現ですが、”色がない”というよりは”存在を強調しない”と言ったほうが正しいです。

1枚目の写真では、テーブルの後ろに白い大きな壁がありますが、それほど圧迫感を感じません、、いや、あまり気になりません。

また、白という色は、明るさ暗さや周囲の色を映しだす色です。そういう意味でも、それ自身の存在を強調しない色です。

ただし、艶のない白の場合 なら、です。

 

艶がある白になると、白さを強調するようになってきます。

白は、強い光で照らされるほど白さを感じます。しかし、強い光に人はあまり心地よさを感じません。

艶のある白は、弱い光でも反射が強くなります。反射光が強いほど、強い光を当てるのと同じ効果が出ます。

つまり、あまり心地よくないのです。

もちろん、まばゆい白さを好む人がいる事も承知しています。「心地よさ」という概念は人それぞれであり、強い白さは心地よくないと思うのは私の感覚である事はご了承ください。

その上での話しですが、強い白さの中では、心地よくないどころか、辛さや苦しさを感じてしまいます。

 

そういう「白の質」の問題は別にして「白い壁」というのは普遍的な「美しさ」や「安定」ではあります。

ですから、多くの人に、多くの設計者に、好まれます。

個人的にそれが変わってきていて、壁自体の何か・・発信するものに好感を持つようになっています。

 

▼ 施主インタビュー05【都心に住む。ひとり住むための家】LWH002

この家は新築で建てた家ですがはじめ白い漆喰の壁でした。施主のDIYによる。。

数年後施主は、1面だけグレーに塗り替えました。それが上の写真です。

そもそも西向きであるこの家はそんなに明るくないので「グレー」は特別に違和感がありません。

施主がこて塗りした漆喰の壁はムラがありそれがいい味わいとなっています。色と合わせて魅力的な壁です。

窓からの光と影を美しく映し出しているのは、壁に色があるからだと思います。

2枚目は西面ですが外に木の葉が覆いかぶさっていて「緑色の壁」と言ってもいいかもしれません。

時間とともに、季節の移り変わりとともに明るさや色の濃さが変わっていく、素晴らしい壁、かもしれません。

純粋な建物の壁ではないですが、こんな色合いに気持ちが刺激されるし癒されます。

築30年木造・2度目のリフォーム・1年後【1年後のsato*sato(サトサト)】 志田建築設計事務所

リフォームでリビングダイニングの壁の一部に杉板を張りました。

この時はまだ「白い壁が第一」の時だったので杉板に白い色を塗っています。また、連続する壁全部ではなく一部だけ。

これ、全部杉板の壁にしたら、どうだったんだろうな、、と思います。

結論としては、とてもよかったのです。白の漠然さはなくなりますが、「存在」という力強さと、逆に「安心」を感じます。

そして、杉の壁に当たるスタンドの光が、美しいように感じます。

キッチンでは壁にタイルを貼る事がおおいですが、白い壁と同様、白いタイルを使う事が多かったです。

これは、上記の杉板の壁の家のキッチンです。

キッチンという清潔である事が必要な場所において、ひとつの「正解」だとは思います。

日の光が直接当たる場所ではないので、タイルの艶は問題ありません。むしろ、少ない照明の光でも部屋が明るくなり、かつ、掃除しやすくていいと思っています。

ですが、これも「ひとつの正解」であって、違うものを好む方もいらっしゃいます。

築6年メーカー住宅のリノベーション【千住大橋の家】足立区

 

青みの強いタイルを選ばれました。単に好き嫌いというよりも、思い出のある色だそうです。

そういう背景も含めてご自分が安心できるものを使う事は、とてもいい事だと思います。

築50年の家リノベーション【satosato2.0】川崎市多摩区

紺色のタイルです。どこか正統的で若々しさもあります。

そういう感覚で選ばれたのかは聞いていませんが、ご自分の好きなものを使う事で、日々仕事で忙しく大変な毎日でも、キッチンにいる時間がなんとなく気持ち良い時間になるような気がします。

家を設計する時に、基本的に白い壁でいい!と思っていました。

もちろん今もそう思います。が・・・

壁に色があるという事が、とても気持ちに影響を与えるものという事がわかってきて、もっと積極的に考えていいものだと思うようになっています。

もちろん、「質」がともなう事も大切です。

いたるところに色があるのがいいかどうかは、住む人の心の状態や、それまでの住環境の影響にもよると思います。

禁欲的に「白」一択でもいいけれど、色を楽しむ事は、暮らしに、人生に余裕と豊かさをもたらしてくれるように思います。

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