麻布台ヒルズに行ってみた。注目の低層の街区の部分。
個人的感想です。
通りの両側にひとりの建築家の設計による大きな(長さのある)建物が建っています。
とても複雑なデザインをよくまとめてあるしよくできている建築だと思います。
単体の建築としてみた時に「すごいね」と思えます。
でも、街路を形づくるという視点でみた時に、私は正直「ここを歩くのが楽しい」とは思えませんでした。
なぜなら、ひとりの人間の意思に囲まれた息苦しさや狭苦しさ を感じてしまったからです。
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設計をした建築家:トーマス・ヘザウィック は有機的な形態を追求するとてもユニークな建築家です。
彼の単体の建築は、私も興味があります。
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街というのは、様々な要素で成り立っています。その要素には良いものも悪いものもあります。美しいものもそうでないものもあります。新しく生まれるもの消えるものがあります。とても複雑です。そういうものを全てをひっくるめてこそ「有機的」であり「現実的」であるのだと思います。
街路を構成する大部分の建築を一人の建築家が設計した時に、複雑さがなくなります。全体にきれいではあるけれど、どこか非現実感があります。どんなに優秀な建築家やデザイナーが作ったもので、それは全ての人にとって受け入れらるものでもないし、心地良いものでもありません。そういうものを「一つの意思」で切り捨てられるような感覚を持ってしまうのです。
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一人の建築家による大規模な街路開発として一番有名でかなり成功しているだろうと思うのは、代官山のヒルサイドテラス。
建築家・槙文彦さんによる第1~6期まで約30年に渡って作られました。
槙さんは「街の複雑さ」を理解されていて、街と建築の出入りを作られていると思います。特に「第1期」部分では、出っ張り引っ込みが特徴的で、大きな形で処理するのではなく、「細かさ」や「複雑さ」を出しています。
全てに対応する事はもちろん無理ですが、人の行動や流れのパターンの考察が深かったような気がします。
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着工から完成まで4年の麻布台ヒルズをヒルサイドテラスと比較するのは難しいけれど、そこにあるのは「大きな建築」であり、形態の有機性はあるけれど、現実的な生々しい「有機的な」ものとは、違うのです。
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街路を作るという意味では私は好意を持てませんが、一つの建築としてみた場合には素晴らしいと思います。
地下にこのような外部としての中庭があります。無機質になる地下空間に自然光と空気を取り込み豊かにするこういう設計はとてもいいと思います。
トイレも丁寧にデザインされていました。
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機会があれば一度行かれ、ご自分でこの街路を感じて考えてみてください。
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