今年もあと1週間半程度です。12月はやはりバタバタしてますが少しでもやり残したことがないように…
日本は資源に関してはほとんど輸入に頼っているのが現実です。海に囲まれているというのは一つ恵まれたところであるとは思いますがそれでもエネルギー確保に関しては自国でまかえないというのは大きなハンデ。特にレアメタルといった電子製品に必須な元素に関してはほとんどが中国からの輸入に頼っており、予断を許さない状況です。この本はそういったレアメタルに対して機能自体を鉄やアルミといったありふれた元素で機能を置き換えてやろうという現代の錬金術というべき元素戦略についての取り組みについて記した本です。
この元素戦略という言葉、2004年に箱根で開催されたJST主催の会議で東大の中村教授により提唱されたもの。元素科学という言葉であれば化学分野だけに収まっていたのかもしれませんがこのネーミングこそが大学だけでなく研究所や企業などが総力を挙げて取り組んで具体的な製品化というところまで寄与して産業界に対して成果を残すという「出口」が意識できるという点で効果が大きかったものと思います。
具体的な産業分野としては
・希土類磁石 ジスプロシウムの置き換え
・構造用鋼板 ニッケルを使わない鋼板
・超硬工具 タングステンを使わない工具
・ディスプレイ 透明電極にインジウムを使わない、有機EL
・自動車用触媒 白金同等以上
・有害物フリー 鉛、水銀を使わない
といったところになるかと。
なんといっても有名になったのは元素間融合という京大の北川宏教授の生み出した手法で成功例はロジウム-銀を用いて元素番号としてはその間にあるパラジウムの機能を持った物質を作ったという研究。同じく京大の北川進教授の気体を吸蔵できる多孔性材料。東工大の細野秀雄教授のセメント、鉄の超伝導化の研究など。忘れてはいけないのがこれらは置き換えるというだけを目的とするのではなく素材を組み合わせて1元素=1機能といった枠に絞られない素材を生み出しているということにあります。
良くレアアースという言葉と混同しますがレアアースはレアメタルの中の一部特にランタノイド系15元素とスカンジウム、イットリウムを加えた17元素からなるものです。レアメタルはそれよりも広義で47元素が合致します。
半導体もレアメタルの宝庫で不純物のBや配線系だとNi、Ti、Co、W絶縁膜ではHf、高誘電率の容量膜ではTaなどこれがないと成り立たないものが多いです。素材としては特にロジックのトランジスタはこういったレアメタル実験の宝庫というべきでしょう。
元素というのは最終製品と比べると地味に見えますがいまさらながらパラダイムシフトを起こす手段の一つとして有効なものです。今までの延長線ではなく、根本から覆すことが必要であり、まず元素から始めよという視点は忘れていけないものと思います。
日本としても研究進んでおり未来に向けては希望の持てる分野。 ぜひ最終製品まで結びつく形で成果が残せることを期待したいところです。
元素戦略 科学と産業に革命を起こす現代の錬金術 | |
クリエーター情報なし | |
ダイヤモンド社 |
日本は資源に関してはほとんど輸入に頼っているのが現実です。海に囲まれているというのは一つ恵まれたところであるとは思いますがそれでもエネルギー確保に関しては自国でまかえないというのは大きなハンデ。特にレアメタルといった電子製品に必須な元素に関してはほとんどが中国からの輸入に頼っており、予断を許さない状況です。この本はそういったレアメタルに対して機能自体を鉄やアルミといったありふれた元素で機能を置き換えてやろうという現代の錬金術というべき元素戦略についての取り組みについて記した本です。
この元素戦略という言葉、2004年に箱根で開催されたJST主催の会議で東大の中村教授により提唱されたもの。元素科学という言葉であれば化学分野だけに収まっていたのかもしれませんがこのネーミングこそが大学だけでなく研究所や企業などが総力を挙げて取り組んで具体的な製品化というところまで寄与して産業界に対して成果を残すという「出口」が意識できるという点で効果が大きかったものと思います。
具体的な産業分野としては
・希土類磁石 ジスプロシウムの置き換え
・構造用鋼板 ニッケルを使わない鋼板
・超硬工具 タングステンを使わない工具
・ディスプレイ 透明電極にインジウムを使わない、有機EL
・自動車用触媒 白金同等以上
・有害物フリー 鉛、水銀を使わない
といったところになるかと。
なんといっても有名になったのは元素間融合という京大の北川宏教授の生み出した手法で成功例はロジウム-銀を用いて元素番号としてはその間にあるパラジウムの機能を持った物質を作ったという研究。同じく京大の北川進教授の気体を吸蔵できる多孔性材料。東工大の細野秀雄教授のセメント、鉄の超伝導化の研究など。忘れてはいけないのがこれらは置き換えるというだけを目的とするのではなく素材を組み合わせて1元素=1機能といった枠に絞られない素材を生み出しているということにあります。
良くレアアースという言葉と混同しますがレアアースはレアメタルの中の一部特にランタノイド系15元素とスカンジウム、イットリウムを加えた17元素からなるものです。レアメタルはそれよりも広義で47元素が合致します。
半導体もレアメタルの宝庫で不純物のBや配線系だとNi、Ti、Co、W絶縁膜ではHf、高誘電率の容量膜ではTaなどこれがないと成り立たないものが多いです。素材としては特にロジックのトランジスタはこういったレアメタル実験の宝庫というべきでしょう。
元素というのは最終製品と比べると地味に見えますがいまさらながらパラダイムシフトを起こす手段の一つとして有効なものです。今までの延長線ではなく、根本から覆すことが必要であり、まず元素から始めよという視点は忘れていけないものと思います。
日本としても研究進んでおり未来に向けては希望の持てる分野。 ぜひ最終製品まで結びつく形で成果が残せることを期待したいところです。
専攻が化学だったので、元素への興味はつきないですね。
即興ではないかもしれませんが黒/白板に書く絵はなかなか難しいですね。練習をあえてするものではないし、うまい人は良くいるのですが自分は下手な方です。
>ikumuさん
開発>量産をやっている人間からするといかに研究成果と製品がまだ乖離しているものというのはよくわかっているつもりです。ただこういう研究こそ企業ではなかなか手が回らないことなので研究>産業への連携が期待されますね。
>koyamaさん
鉱山はまさに取り合いですね。
元素を置き換えるというのもコロンブス的な発想ですがこれからは見つける技術と再利用する技術というのも注目だと思います。 傍から見ると鉱山探しというのは宝物探すみたいで夢がありますね。