鬼滅の刃のヒットを以前マーケティングも担当していたという経歴の持ち主で冠婚葬祭会社の社長で神道、儒教、仏教という各分野にも明るい筆者が分析した本です。海外でも大ヒットの状態ではあると思いますので日本でのヒット要因がそのまま海外での要因に結びつくかというと違うのかもしれませんが少なくともこれを読んでマニアックだと思っていた概念が塗り替えられ自然と日本人の琴線に触れる内容である意味良く考えられた内容だったのかなと思います。(もちろん人類が戦ってきた疫病というものが鬼に代替されていてそれがこのコロナ禍のタイミングにマッチしたのはあったのかもしれません。)
ヒットの要因として勝手に自分がまとめてしまうと大きく2つあり①少年漫画の伝統的文法設定がされていたこと、②日本人の心のよりどころともなっている神道、儒教、仏教という伝統思想に沿った内容であること、が挙げられています。
①に関しては「鬼+呼吸+血統」が過去のヒットの「ジョジョの奇妙な冒険」の吸血鬼のパートの影響を一部受けていること、「侍+刀+組織」がNaruto、BLEACH、るろうに剣心などの系統を受け継いでいること>日本人の大好きな新選組のような特殊部隊もの、敵の力を持つ味方の存在=禰豆子 は「うしおととら」などの系統があること分析されていますが装飾していてもその匂いをあまり感じさせないのは主人公のキャラクターが自他の精神を持つ人格者として描かれていることや敵味方にまたがる今日家族愛、ヒロインそのものが戦っているなどのやや日本っぽい要素がちりばめられているのもありそうです。
②に関しては筆者として日本には神道、儒教、仏教のすべての影響が入ったハイブリッドな日本人の精神世界があり、鬼滅の刃にはその要素がすべて盛り込まれていると指摘しています。 神道であればカグツチという火の神、ヒノカミ神楽が出てくるのがわかりやすいですが祭りの神やセリフの中にも地の神など多神教の様子があるのは日本の神道として特徴的なところです。また儒教は江戸時代に特に広まりましたが里見八犬伝で知られる八徳=仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌 の要素が盛り込まれており特に主人公の炭治郎などは手本と言っても良いのではと思います。逆に鬼はこれを書く存在として対照化されているように思います。最後の仏教に関しては地獄、輪廻転生をはじめとする死生観や仏教用語でいうところの知足、因果応報、怨親平等 の精神などは正に仏教由来でありその要素が物語の中でもちりばめられています。(日本人にとっては自然なことですが)
ということで日本人の輪廻転生をベースにする死生観やご先祖様を尊ぶ精神風土、先祖を尊ぶ役割としての祭り文化などなど日本が培ってきた外のものを取り入れて自分たちの解釈で取り込んでいく要素があります。 非常に日本っぽい作品であることは間違いなさそうですがこの世界観が海外でもヒットするのは面白いところです。一部考え方など理解できないところもあるのでしょうがある意味これらの思想はハイブリッドの要素があるので 同じ宗教圏であればわからなくもないのですが。ただ日本人もいろいろな文化圏の行事やものを楽しんでいるのでそういった感覚なのかもしれません。ある意味意識しているしていないにせよこういった形に日本人の精神世界が紹介されるのは悪いことではないと思います。
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