Takekida's log

千里の道も一歩から

できそこないの男たち

2008-11-24 00:24:18 | Books
今日は急遽、休日出勤でした。天気が良くて自転車に乗れそうだっただけに残念でした。明日は雨っぽいですが少しでも乗れることを期待。

できそこないの男たち (光文社新書 371)
福岡伸一
光文社

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歴史を振り返れば表向きには男が女を支配してきたというのは誰もがなんとなくは感じていることではないでしょうか。しかしながら生物学的に見れば事実はまったくの逆で生物の基本仕様は女性であり、むしろ男の方が余分な操作をして(カスタマイズ)生まれてきたのが男だというのがこの本の要旨です。

著者は生物と無生物のあいだプリオン説は本当かの福岡伸一さん。単なる生物の性に関する話だけでなく、キリスト教の史実や筆者の院時代からポスドク時代の泥臭いストーリーもちりばめられていて思わずページが進んでしまう傑作です。

それにしてもやはり女性の方が一枚上手だというのは感触だけではなさそう。
うまく操られるのが逆に良いのかもしれません。

◆全46巻の百科事典からなる叢書
 子供は男女の親から23本づつの染色体を受け取る。
 男性が作り出すのは22+X染色体もしくは22+Y染色体
 女性は22+Xのみ
 Y染色体はX染色体よりもはるかに小さい(5倍の差)
◆ジンクフィンガー
 Y染色体に特有な遺伝子を見つけ出すことで男性化を引き起こすKeyを見つけることが出来る。
 デイビッドペイジが見つけたのはジンクフィンガーY染色体(亜鉛の指先)=ZFYという遺伝子だった。
◆SRY遺伝子
上記のように発見されたZFY遺伝子はX染色体上だけでなく通常の常染色体常にも発見され、Y染色体上でも遺伝子がOnになっていない結果が出てZFY遺伝子は否定される。その代わりに見つけられたのはSRY遺伝子だった。SRY遺伝子操作された女性マウスが男性化したことが決め手になった。
◆人間は考える管
 トポロジー的に言うと人間の体は管のようなもの。脳の神経伝達に使われる神経ペプチドというホルモンが消化管でも使われている。
◆生命の基本仕様
生後7週間までは男女共に同じ成長を遂げる。
SPY遺伝子が存在すると高速のICを降りるようにタンパク質が着地し、SPY遺伝子が活性化して男性化が進行する。基本仕様である女性のものを作り変えることによって男性の特徴が形成されるため男性の体にはその痕跡が残っている。
女性の方が文化が進んでいることから生物学的には高度だとも言える。
◆やがて世界は女性だらけ
 平均寿命、癌の羅患率、環境による差を差し置いても男性の方が基本的に短命である。主要な男性ホルモンであるテストステロンは免疫系を弱めるホルモンであるという皮肉。
◆男性の意義
 基本的には男性は遺伝子の運び屋である。基本仕様であったメスを作り変えたからこそ免疫が弱くなり病気やストレスにかかりやすくなった。一見、人間の世界では男性に支配されているように思えるのは運び屋以上の役割をメスがそれを求めたのかそのようなオスが生き残ったのか?
◆加速覚
 人間は普段は感じることの無い巡航している時間を追い越すような加速感を感じる時に快感を感じる。その感覚を得るという報償を元に生命が繋がっているのかもしれない。

なんとなくは知っていたのですがここまで書かれるとダメ押しをされたような気分です。それにしても生命の世界というのは不思議です。機械とかと違うのは成長するという「時間」感覚こそがあるからなのだと思います。であるからこそ魅力だと感じるのでしょう。

 
 
Comments (2)    この記事についてブログを書く
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2 Comments

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カスタマイズの末に (miu)
2008-11-24 02:04:27
男は女よりも単純な生き物になったのですね(笑)。
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Unknown (たけきだ)
2008-11-24 23:45:50
うーむ。その通り。分かっているけどなかなか理性的に計算出来ないものなんだよね…
返信する

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