Takekida's log

千里の道も一歩から

ヘンな日本美術史

2013-08-18 11:03:42 | Books
さて連休最終日です。

ヘンな日本美術史
クリエーター情報なし
祥伝社


日本古来の絵と西洋で発展した絵を比べてみると写実的でないとか遠近法でないといった点で技法では劣ってきた面はあるかと思いますが一方で日本の文化がジャポニズムという影響を与えたようにある意味、先端な部分があったのは事実。特に北斎の浮世絵は衝撃であったことでしょう。

 この本は絵描きさんから見た日本美術の不思議な点を解説したものです。
>作者すらわからない鳥獣戯画 
甲乙丙丁からなるのですがいずれも作者は異なり、前の巻に対する掛け合いのある構成になってます。決して一貫性があるわけでなくそれぞれで自分の世界を膨らませているのが感じられます。また上手いからこそできる微妙な息の抜き方というか鮮明に描きすぎずに仕上げることによって枠を意識させるという日本独自?ともいうべき息遣いが感じられる作品です。家にも鳥獣戯画が描かれたそば用の小鉢があります。
>文字と絵が絵の中に入ってくる白描画 
字が疑人化され、人が疑字化された平面のプロフェッショナルともいうべき世界。白地を空間として楽しむことによって印象派の絵画と同じような感覚を味わうことが出来てます。日本で印象派が人気のある一つの理由かも。
>伝 源頼朝像 
実物を見ると意外に大きくしかも筆に迷いがあることから本人を目の前にして慎重に描かれたような節がある。あまりにも複製がいろんなところで氾濫してることからイメージが現物と異なるというのはよくある話。 ゴッホとかも意外に小さかったり大きかったりと有名な絵はいろんなところで氾濫しているので自分のイメージと異なることが多い。
>雪舟
中国の山水画に対して荒々しく描きながらも輪郭線のはっきりとした構成部品をドドンと配置してその輪郭線の抑揚で空間を表現している。肖像画では平面に立体をちりばめ風景画ではグーグルマップのような展開図法を平面に表現しているという点で先駆者となっている。

>洛中洛外図
遠近感やどこから書いたという感覚を無視してえの中に生活を入れ込むという視点で様々な作品が描かれている。はっきり言ってまとまりなく下手なものも多いがその分、表現しようとした世界観がうかがえる。
 
>丸山応挙
日本画には珍しかった写実家でありながらケースバイケースで輪郭や遠近などある意味日本画的な写実の独自路線を作り上げた人。

これらの系譜がありつつ明治に入ってからは西洋美術の進出で日本絵画はそれらを意識せずにはいられず、西洋と対峙するものとしての日本美術が形成されていくことになります。工部美術学校 東京美術学校 東京芸術大学 と進んでいくわけですがその中で横山大観、黒田清輝といった巨匠が生まれて「近代」日本美術の形成が始まるようになります。この本では旧?日本画との端境期に生き日本画をどのように生き残らせようとしたかという視点で河鍋暁斎、月岡芳年、川村清雄の3名が取り上げられています。  
いずれにせよほかの国を知らないので偉そうなことは言えませんが日本画の舶来のものを取り入れながらの独自路線というのはこれらの例を見るだけでも誇るべき内容のように思います。西洋美術を知ってしまった今、旧来の日本画が生き残っていくのは簡単では無いことですがこういったバックグラウンドとの組み合わせでの新たな創造が生まれてくるのかもしれません。現代の浮世絵としても作品は常に作られているようですし。
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