Takekida's log

千里の道も一歩から

LOON SHOTS クレイジーをイノベーションに

2020-07-25 21:12:46 | Books
 
LOONSHOTS<ルーンショット> クレイジーを最高のイノベーションにする
サフィ・バーコール (著), 米倉 誠一郎 (その他), 三木 俊哉 (翻訳)

 技術者として久しぶりに良い本に出会えました。企業戦略、新薬開発から戦争、社会問題まで 初めは狂っているというようなアイディアが世に中を変える仕組みとポイントを解明した本。筆者は物理学者を両親に持つサラブレッドで自身も物理学者でありながらマッキンゼー>起業>IPO とアカデミックからビジネスの創出まですべてを網羅した人物…だからこそ専門分野に特化せず俯瞰した見方が出来ているのかなと思います。 この本でいうLOONSHOTというのはだれからも相手にされず頭がおかしいと思われるようなアイディアのこと。ですがそんなアイディア(のほんの一部)こそが世の中を変えていくというのが歴史的事実であることも確かでそれが潰されずに日の目を浴びるために必要な要素がまとめられています。
 まず筆者が注目したのは具体的な事例(ガン薬のイブルアチブ、パンナム、三共の開発していたスタチン)など企業の営栄枯盛衰、そして組織の大きさとアイディアが生きるか否かのポイント。よく企業文化というのが言われるが筆者は文化なのではなく構造なのだということを指摘しています。 そのポイントは2つの軸で表され
・相分離(2つの集団)
・動的平衡(交流)
これらのポイントが両方とも強い場合に「フィッシュ・ベイルのバランス」という最も良い状態になるというのが結論です。
 相分離というのは液体もしくは固体に金づちを振り下ろすときに違いがイメージしやすくつまりはアーティストとソルジャー、会社でいえば研究所と事業部のようなもの。どうしても事業部は直近のビジネスが重要なのでアイディア創出には研究してアイディアを創出する部署をきちんと作っておかないといけないということそれらの相にあったツール/環境を用意しておくべきということです。あと資格としては製品=Pそのものが革新になる場合と戦略=Sが革新になる場合、両にらみで考えておかなければいけないということ。音楽プレイヤーであればウオークマンはP型、iPod/iPhoneはS型といえるでしょう。
 そしてもう一つのポイントが動的平衡が強いということ。これは研究と事業のあいだがいかに容易にバランスを取り、橋渡しをしてやるか、庭師という言葉で表現されていますが事業部と研究所の集団をいかに平等に扱い、お互いを尊重しバランスをとるか、そして結果重視にとどまるのでなく意思決定のそのものまで食い込めるかがポイントであるとの指摘です。
 保守と革新の相転移ですがそのマジックナンバーとして150というのが知られています。組織(独立した最小単位)は150人が集団の最適規模であるというものですがこの数値を公式化する取り組みも記されています。
M(マジックナンバー)=(E×S^2×F)/G
E=エクイティ比率、;仕事がどれだけ報酬に反映されるか
S=マネジメントスパン:組織にける直属の部下の人数
F=組織適合レベル:PJTに対する自身のスキルの適合度
G=給与アップ率:報酬が階層でどれだけ上がるかの平均
比率や適合レベルなどは概念的なので実際の比較は難しいもののこの値=概ね標準的な組織では150、大きくなればLOONSHOT重視、小さくなれば政治重視となりやすいとのことで組織がそういった内部の引っ張り合いになりそうであればMを上げる工夫が必要ということは言えそうです。
 なかなかおおきなかいしゃになってくるとこの取り組みも難しいものはあるのかとは思いますが構造を変えればというポイントは明確になっているので事業ー研究を統括するレベルの人がバランスをうまくとっていけるかがキーなのかと思いますし、現場レベルでも意識付けが重要なのだと感じます。


Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 記憶力を上げる5つのポイント... | TOP | 痛みも感情? »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | Books