伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

四国電力の2050年カーボンニュートラル化の計画はどんなもの?

2021-06-01 00:01:51 | 続・温暖化いろいろ

 あれは昨年10月のこと、東電と中部電力の合弁の火力発電専業会社「JERA」が非化石火力という驚くべき提案をしてから、バタバタと多くの旧一般の9電力会社が横並びで同じような目標と対応策の入った計画を掲げました。四国電力も3月末の、株主総会対応の決算の時期に下記のロードマップを公表していました。(5月21日にも改めて記者発表)

この図がロードマップです。

 原発は伊方3号機を2050年まで動かし続けたいとする体制

 1994年に運転開始した3号機(四国に唯一残る原発)は40年間運転で2034年に廃炉に、仮に60年運転に1回こっきりの延長を実現できたとしても2054年に廃炉になります。

 新型炉の研究とは書いていますが、新規立地(伊方以外の土地)で新規の立地交渉を始める…はありそうにありません。 増設の敷地もありません。

リプレース?ということがありうるなら、伊方1,2号機の廃炉が完了したあとの跡地へリプレースするということでしょうか。でも廃炉計画では解体撤去は40年先までの計画が建てられているわけで、2060年以降にやるなどということがありうるとも思えません。断念してないよ、というポーズに過ぎないものでしょう。

 なにより、原発3基の廃炉費用が実際にはどれだけ係るのか、本当の費用は見通せていない以上、その廃炉をやり遂げた後に原発を新設する体力(資金力)が四電に残っているはずがないのです。

 今はまだない、水素やアンモニア資源

 資源エネ庁の肝いりでそれまで数年間進めてきていた、「水素混焼」+「アンモニア混焼」の研究が実用化の目処が立ったからか、これらのガスの混焼を既存の火力発電所で行うことで、CO2排出原単位を20%下げることをJERAが2030年までの目標で掲げたので、四電もそれに少し遅れての同様なスケジュールでの導入としています。

さらに、2050年に向けては、水素、アンモニアの専焼へと変えていって、火力発電所の設備をそのまま使ったまま非化石火力化していこうという方向性と分かります。

 これらの水素なりアンモニアなりはどこにどれだけ資源としてあるのでしょう??もちろん今は資源として存在していないわけですね。

水素の供給源としてのグリーン水素(再生可能エネルギーの余剰分を活用して水の電気分解で発生させる)あるいはブルー水素(化石燃料から水素を取り出して、副生物のCO2は枯渇途上にある油田に注入してCCS(炭素の回収貯留)したものとして閉じ込めようというもの)は、これから開発する資源なわけです。製造設備もまだありません。アンモニアは、長距離すぎてパイブラインを敷くわけにはいかない水素の貯蔵輸送用の(しかも(化学式はNH3で)炭素を含まない)媒体として、使用することが想定されています。

 このような、今は存在しない資源が2030年という近い将来に海外から都合よくやってくるものと仮定してエネルギーの計画を立てるなどということは異例中の異例、しかも9電力が横並びで同じ資源が大量にやってくるという想定ですから、ことによると各社の間で資源争奪戦もありうるという展開は、そうとう各電力各社さんは新しい方針を打ち出せずに切羽詰まっている、苦し紛れのロードマップだ、ということが分かります。

 変動型の再生可能エネルギー(VRE)(=太陽光+風力)開発には消極的

 一方で、2030年までの再生可能エネルギーの自社での導入目標は、わずか50万kW、2050年でも200万kWとしており、注釈では国内外と書いてあるからには、途上国などへの導入分を国内で達成したことにするJクレジットの活用を視野に入れているもようで、四国内での開発にはさらに消極的であることが分かります。

 脱炭素として再生可能エネルギーの主力化が目指されている中で、この点は大きな懸念材料です。

 例えばIEA(国際エネルギー機関)は5月に発表したばかりの「2050年実質ゼロ達成のためのロードマップ」の中では、2050年の世界の電源構成として、7割がVREで占められると想定しています。「発電量の約90%は再エネで賄われており、そのうち風力と太陽光が合計で約70%を占める。…2030年までに太陽光発電の年間導入量を630GW、風力発電の年間導入量を390GWにすることを求めている。」、という未曽有の再生可能エネ普及がこの9年後2030年にも起きていることで世界のCO2排出が半減する、というのがIEAの見立てなのです。

図は安田陽氏のツイート                 2021-05-19 10:48:02            より

 もちろん、上のグリーン水素/アンモニアの出所として海外でのこれらの再生可能エネルギーからの余剰分が流れてくることを期待することも出来るでしょうが、変換ロスというものがつきまとうため効率も落ち、長距離の輸送によるハンディも多いため、それらの長ーいサプライチェーンに期待できるかも?というのは、自国内で自給できる資源である再生可能エネルギー普及に全力で取り組まない言い訳にはならないのです。

 ※この記事を書いている最中に、東洋経済オンラインの記事で、

中国全土の再エネ発電容量は10億キロワット ー再エネ発電容量が石炭火力超え(今年予定)

というのが配信されているではありませんか。(中国と言っても中国電力ではありません)超える予定なのは発電容量kWであって発電電力量kWhではありませんので、稼働率が低い再生可能エネルギーはまだ発電電力量では石炭を追い越してはいないわけですが、主力化への道をひた走っていることが分かります。

 将来の主力電源(再生可能エネルギー)を自社設備として持つつもりがない電力会社が、惰眠を貪り続けて棚ボタで資源が転がり落ちてくることを夢見ているの図、と拝見しました。

 洋上風力としてなら、伊方原発沖合の佐田岬半島北岸側に洋上風力発電所をズラッと並べることくらい企画すればいいのにねえ。


 おっと、一番このロードマップが危なっかしいのは、グテーレス国連事務総長を始めとして、G7サミットの主要国が2030年石炭火力全廃で足並みを揃えようとして、唯一と言っていい抵抗勢力として日本がこの文言が入るのに抵抗している、という状態だからです。 G7気候大臣会合コミュニケはこちら
 中にこんな文言があります。

  1. 我々は、石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを認識し、2030 年の NDC 及びネット・ゼロ・コミットメントに沿って、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電設備からの移行を更に加速させる技術や政策の急速な拡大と、2030 年代の電力システムの最大限の脱炭素化に今コミットする。…

 この石炭火力全廃政策がどのように焦点となる政策なのか、はこちらをどうぞ。

 排出削減対策が講じられていない=Unabated というのは、CCS付きではない、という慣用句のはずですが、経産官僚はおそらく「混焼」で排出原単位を減らしたものでも通用するはず、と思っているのでしょう。でも、上のIEAの想定でも、2030年は先進国石炭全廃、2040年にはガス火力も大半が全廃が必要とされています。

 四国電力さん、2030年石炭火力全廃が申し渡された時に、それに対応できるためのBCP非常事態対処計画は今から作っておくべきですよ。

 


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