佐々木泉議員(日本共産党、松山市・上浮穴郡選挙区選出)の一般質問
「福島第一原発事故から110日になりますが、未だに収束せず、放射能を避けて周辺地域住民12万人の避難が続いています。
中村知事は先の記者会見で、今の危険性を鑑みると、長い目で観たときに脱原発を追い求めていくというのは取るべき道筋だと思う、と、原発から自然エネルギーへの転換の意向を明らかにしており、伊方原発の再起動についても、細かい説明がなく、安全の基準が見えない、全国一律ではなく原発ごとに安全性を検証する必要があると述べましたが、これは多くの県民の気持ちでもあります。
国や電力会社に任せていては危険の解決も、不安の解消もありません。福島ではこことここが足りなかった、だからそれを補充追加しさえすればいいなどという姿勢は大間違いです。
問われているのは、一旦事故を起こせば、海も空も地上も長きにわたって汚染する原発という発電そのものの是非です。
収束作業に当たる労働者が時々刻々放射能の危険に曝され、命がけでことに臨まなければならない、そんな原発がまともなプラントとは言えないのではないかという判断です。
あれだけの重大な事故を経て、ウチの原発だけは大丈夫だと考える方がおかしい。しかもその改善策たるや、本気で追求しているようには思えません。
例えば、原発の安全運転には水素爆発防止装置が必要で、3年をメドに設置する、とのことですが、ということは、これからの3年間はこの安全装置なしで運転するということになります。水素爆発防止とはその程度のことなのか、また強い放射線用の防護服10着配備すると言いますが、これまでそのような防護服なしでやっていたのか、10着で足りるのかなど疑念がわきます。
そもそも福島では老朽原発が事故を起こしたという事実から目をそらしています。原子炉は毎日中性子を浴びて金属がもろくなり、古い原発ほど緊急冷却に耐えられなくなります。
脆性劣化というそうですが、この進み具合を見るために原子炉内の試験用の金属片を取り出して調べますが、伊方原発1号機では34年前の初期値が零下25℃、すなわち零下25℃まで大丈夫だったものが、どんどん上昇して運転半年後に0℃、5年後16℃、18年後に30℃、その後、16年間調査がされておらず、現在何℃まで耐えうるか分かっていませんけれども、九州電力玄海原発1号機で調べたら、実に98℃にもなっていました。
これでは事故の時、炉心を冷やすと、パンッと割れる可能性がありますが、その対策はなにもありません。
伊方では現在の様子が分からず不気味です。また青森県六カ所村の再処理施設の行き詰まりで伊方の使用済み核燃料は貯まりっぱなしで、すでに1324体、他に低濃度廃棄物を詰めたドラム缶は29500本にも達しており、伊方原発は危険な核廃棄物の山を作りながら運転を続けていることになります。
使用済みといっても油断ならないことは、福島の爆発火災で証明されています。この対策も見通しがありません。現在のところ、安全な原発などあり得ませんし、電力不足への対応を口実に、そうは言っても原発は必要だという議論は成り立ちません。
福島で起こっている事態を観れば、電力確保と原発の危険は天秤に掛けられないことは明々白々です。原発への回帰は許されない、そういう選択肢はないことを、全ての議論の根本に置く必要があります。
もちろん、原発ゼロへの道筋には一定の時間が必要でしょうが、将来に渡って危険な原発を温存することはもうできません。そして原発ゼロの大方針を決めてこそ、自然エネルギーに本気で取り組むことができます。
そこで第一の質問は、では、今後のエネルギー政策をどうするのかという問題です。
中村知事はすでに、原発から自然エネルギーへの転換についての意向を明らかにしていますが、この際改めて原発ゼロに向けて、愛媛県の舵を切る決意のほどをお示しください。
また、原発ゼロへの転換に私ども共産党は5年ないし10年という目標と見通しをもっていますが、期限と目標について知事の考えはいかがでしょう。
先日、高知県の檮原町へ自然エネルギーの先進地見学に参りました。そこで目を開かされたのは、太陽光風力地熱小型水力木質ペレットなど、多様な再生エネルギーの組み合わせによってすでに27%の自給率を達成し、100%の自給を目指す町の取り組みに、多くの住民の皆さんが共感し主体的に取り組んでいることでした。
小さな自治体だからできるのだ、という声もありますが、大分県は地熱などの活用によって、県全体で25%の自給を遂げていますし、群馬県前橋市では小型水力発電6機によって市民の使う電気の1/3を賄っています。また松山市の姉妹都市アメリカのサクラメント人口47万人では、住民投票で原発を停止し太陽光発電に切り替えています。
イギリスでは2020年までに原発32基分の洋上風力発電所を作る計画で、これでエネルギーの1/3を賄う計画です。太陽光発電について県独自の補助を行ってきたのが38府県あり、福島事故後の制度拡充や新設が17都府県あるそうです。愛媛県はそのどちらにも入っていませんが、新たに制度を作る考えはありませんか、お答え下さい。
第二の質問は、原子力発電に対する基本認識についてです。
米国スリーマイル島原発事故調査委員会は、原子力発電所は安全だという態度を改め、原子力は本来危険をはらんでいるという態度に変えなければならない、とすでに30年も前に指摘しました。
また福島第一原発事故調査検証委員会、畑村洋太郎委員長は、原子力は危険なもの、それが安全なものとして取り扱われてきたのは間違いだったと述べておられます。
そこでお尋ねしますが、中村知事も畑村委員長のように、原子力は危険なもの、安全というのは間違いだ、と考えますか?ドイツイタリアスイスを始め様々な国が脱原発に踏み出し、イタリアの国民投票では94%が原発Noを判断しましたが、我が国にはこれを集団ヒステリーと呼ぶ人もいる、そういう時だけに、あえて知事の見解をお尋ねします。
第三の質問は、伊方原発がメルトダウンした時の対策はどうかについてです。
福島の事故について東京電力は、想定外の津波による電源喪失が原因のように言ってきましたが、津波が来る前にすでに送電線鉄塔が倒壊し、電源が喪失し冷却停止が始まっていたこと、69台もの電源車を集めたにも関わらず、1台も役に立てられなかったことが明らかになっています。
巨大津波が原因でないとすれば、全国どこの原発でも福島第一原発のような重大事故がありうるし、津波対策ばかりでは事故に対応できないことになります。
福島の事故では止める冷やす閉じ込めるの3つの機能、放射能漏れを防止する5重の壁が当てにならないこともはっきりしました。そして福島のメルトダウン以後、メルトダウンは想定外のことではなく、必ず想定しておかねばならないことになりました。
もちろん、伊方原発でメルトダウンを起こさないようにすることは当然であり、これまでもそのための予防策が議論されてきました。しかし、私が問いたいのはそこからさらに事態が進んで、実際にメルトダウンになったときどんな方策がありうるのか、これが重要だということです。
福島では電源が喪失し冷却水が喪失した状態が長く続き、ヘリコプターによる上空からの水の散布、キリンと呼ばれる首の長い放水車による送水、海水による冷却、大量の汚染水の発生とその処理など、大変な苦労と努力が続けられてきました。
IAEA国際原子力機関の調査団は6月1日の事故調査報告で、福島では事故後ベストの対応が取られた、と評価しましたが、これがベストだとするとこれ以上の対応はなかったということになります。
そこで尋ねますが、伊方での事故がメルトダウンに至り電源も冷却水も喪失したまま、回復が望めないという事態に至ったとき、やはりヘリコプターによる散水、キリンによる送水に始まり、今日に至る一連の対応がベストと考えるのか、お答えください。
おそらく事態がそこまで立ち至れば、福島以上のことはできないでしょう。原発は一度シビアアクシデントに至れば、手のつくしようがない、それは伊方も例外ではありませんし、従ってそのような危険な装置である原発をこれ以上存続させることはできないというのが、合理的、理性的な判断のハズです。
伊方1号機は寿命の30年を超えて34年目。2号機も来年30年を迎え、3号機はプルサーマルを実施、すぐ目の前を世界最大級の活断層、中央構造線が走り、南海大地震、豊後水道日向灘の地震の影響も大きな、地震観測地域のど真ん中にある伊方原発は、いわば一番作ってはならない最悪の立地条件にあり、地震想定の一層の見直しが必要となっています。
また、福島では大量の放射能汚染水を海へ排出しましたが、もし伊方で同様のことがあれば、瀬戸内海は閉鎖水域であり死の海となります。この点でも伊方は絶対に原発を作ってはならない場所でした。
そこで第4の質問は、伊方原発の立地条件についてです。まず、伊方原発の地盤は、三婆川帯の緑色片岩で、四国電力はこれを、約2億年前に形成された古くて堅い緑色片岩、伊方原発は強固な緑色片岩の岩盤上に建設、というのに対して、一般の地質解説では三婆川帯変成岩は薄く割れやすい性質でもろく崩れやすい。三婆川帯地域は日本有数の地滑り地域、と正反対です。
この対立する見解を、県はどう説明しますか。堅くてもろいのか、もろいけれど強固なのか、ところによって堅かったりもろかったりするのか、お答えください。
また、伊方原発への外部電力確保のための、送電線鉄塔の耐震性はどうなっていますか。送電線鉄塔については、独自の耐震基準がなく、風速40メートルの風に耐えるレベルを以て耐震基準としていると聞きますが、風速40メートルの風が吹く下で地震が起こればどうなるか。
また福島第一原発の鉄塔も、風速40メートルに耐えるものとして建設されていたハズなのに倒壊しており、伊方だけが大丈夫という保証はないと考えますがどう説明しますか。併せてお答えください。
さらに、津波の引き波についても疑問が起こります。新潟県中越沖地震以前の基準では地震で水面が下がると、伊方3号機の取水面までわずか4センチメートルの余裕しかない状態でした。ところがその後耐震性の見直し、いわゆるバックチェックの結果が一昨年2月に出され、そこでは水面が下がったとしても、取水口まで120センチメートル、も余裕があるように改訂されました。地震の揺れは大きく改訂されたのに、引き波の規模は小さくなっています。取水口までの余裕は以前の4センチが120センチと30倍です。これに驚いていたら、さらに今年3月4日には、バックチェックの改訂版というのが出され、今度は引き波の規模がやや大きくなり、取水口までの余裕は37センチメートルになりました。
バックチェックでプルサーマルにゴーサインを出したのに、そのバックチェックを更に改訂するなど不明朗です。このように想定される地震の揺れの規模が大きくなったのに、地震の引き波の規模が小さくなったのはなぜですか。バックチェックの再改訂についても併せて尋ねます。
第5に安全神話の背景についても質問します。伊方は浜岡原発に次いで日本で危険度の高い原発だと考えざるをえません。これまでも週刊ダイヤモンド、週刊現代、女性自身などの雑誌が、原発安全神話に異議を唱え、伊方は全国でも危険度が高いと報道してきました。
週刊現代の5月28日号では、元京都大学原子炉実験所講師小林圭二氏が、立地でもっとも危険なのが浜岡ですが、四国北部を横断する大活断層中央構造線のすぐ近くにある、四国電力の伊方原発も止める優先順位が高い、と指摘し、全国的に危険な原発に数え上げています。
これらについて四国電力は抗議や訂正要求をしているんでしょうか。伊方原発の危険度は県政の大問題ですのでお答えください。
2009年9月議会で、四国電力の広告関係費について質問をしたのに対し、県は承知していないとの答弁でしたが、2010年度の民間調査機関発表によると四国電力の広告宣伝費は31億3100万円、販売促進費は23億9500万円の、合計55億2600万円となっています。
この巨額の宣伝費によって、原発は重大事故を起こさない、放射能をもらさない、という誤った安全神話を振りまいてきたのであり、この虚偽宣伝のための宣伝費についての、県の調査不足については反省が要るのではないか、改めて四国電力の宣伝広告費はどうなっているか明らかにするとともに、福島事故後の現時点に立って、県の調査不足の反省についても併せてお答えください。
電力会社ばかりでなく、国の原子力安全・保安院も安全神話に手を貸してきました。これについても、昨年2010年2月県議会で原子力安全・保安院の保安官の半数は民間、主に原発関係メーカーからの天上がりとなっている実態を紹介しました。このときの県の答弁は、民間からの出向があることは確認したが、どのようなメーカーからの出向かは分からないとのことでした。 ところが、去る4月21日付けの共産党の新聞赤旗が、次のように報道しています。
それによると、原子力安全・保安院が創設された2001年以来、民間から採用された職員は82人で、原発メーカーの東芝22人、関西電力6人、旧石川島播磨6人、三菱電機5人、あと日立製作所、清水建設、鹿島建設、竹中工務店など35社に及んでいます。
原発メーカーや原発建設に関わった建設会社、あろうことか関西電力の出身者までがいる、これで規制ができるはずがない、という実態です。原発メーカーの影響の強い原子力安全・保安院が、原発建設やプルサーマルにゴーサインを出していた、このような天上がりの実態はどうなのか、県の評価はどうなのか、良いことか悪いことか、どうとも思わないのか、お答えください。
最後に伊方原発の安全対策に関わっていくつか提案を申し上げます。
第一に、伊方原発の総点検を国と四電任せでなく、県の責任で進めることです。IAEAは世界の原発の総点検を議論しましたが、伊方では国の方針を待つまでもなく、県が率先して総点検を行うこと。
原発の安全に関わる核物理学、原子工学、地震学、地質学、安全工学などあらゆる分野の、原発反対派も含めた専門家、有識者、住民代表を加えていただくよう強く求めます。
第二に県民の不安に答える公開の討論会を開くことです。この点ではかつてプルサーマル導入の際、アイテムえひめという大会場で、大規模なシンポジウムを、松山と伊方の大会場を結んで開きました。今回は原発そのものの存亡を巡る討論会ですから、あれを上回る規模で開き、県民の不安と疑問に答え、県民の声を直接聞く機会にしていただきたいと考えます。
第三に、現在電源立地地域対策交付金など、原発関連の交付金が総額32億円、本県と伊方町、八幡浜市などに交付されていますが、これを伊方町などとも協議の上、自然エネルギー開発のために振り向けることです。自然エネルギー日本一の大分県はすでに25%を自給していますが、本県は全国第25位、わずか5%という状況ですから、相当頑張らねばなりません。
原発のための交付金を脱原発の次世代エネルギー開発に使用することは、もっとも有効な使い道ではありませんか。以上提案を申し上げ、私の発言を終わります。
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