農村の論理と農業協同組合の論理に乖離が見られるように感じます。
農業協同組合は、当然の事ながら21世紀の農の論理をリードするモノでなければならないと、私は思っています。
2,
しかし、協同組合思想は、本来産業革命下で、工業化社会のロジックとは違った形で生成したモノですが、しかし、運営論理は、明らかに工業化社会の規格化・画一化に載ったロジックとなっているといっていいでしょう。そのことにより、ある種のカウンターベーリングパワーを発揮しはしたものの、基本的には、高度工業化社会の組織原理によって運営されています。
およそ、西洋理性が考えた論理は、自由にしろ、民主主義にしろ、ある種の独善を伴います。私が常々、都市化・工業化・西洋化、といってひとくくりにしている発想です。工業化社会では、人は、「マニュアル化した役割を与えられて社会に参加する」ことになります。人は、そういった組織には愛想を尽かしているはずなのですが、しかし、それが工業化社会の組織原理で、グローバル化すればするほど、この論理は観閲します。チェーンストア理論もそうした論理のひとつです。
3,
これに対し、農的組織原理は、多様性を認めたものです。それが21世紀の我が国に農協に限らず、多くの組織で取り入れられるようにするのが、我が国の農協の最大命題のように私は思うのです。「マニュアルと、機能化」からの脱却です。
しかし、現在のところ、その萌芽も見られないのは、残念なことです。
4,
農業協同組合は、周知のように個人では市場に参入できない時代、集落皆で対応するものとして戦前からの農村の発展に寄与してきました。集落・農村共同体を機能的に組み替えたのが、わが国の農業協同組合です。つまり集落共同体=農協という構図です。また協同組合民主主義も農民に開放的で明るい未来を約束する雰囲気を漂わせていました。それらが我が国農業・農村の近代化に果たした役割は筆舌に尽くせないほど大きなものがあります。
しかしそれは近代の論理、工業化社会の論理でした。農協は、今こそ農的社会の組織論理を元に行動する必要があると思うのですが、その後の活動は、経済活動をリードする機能や論理が見えないまま、集落的対応だけが強くなったように思います。統制というロジックです。
5,
通常市場原理が浸透すると、人は、集落のような共同体からは疎遠になりますが、農村では「共同体の過剰」が意識されるようになっています。本来生活の場である集落に、経済活動が過度に依存しすぎたせいかもしれません。
何を大切にしなければならないかと言えば、課題は、「差異」を持つ多様な人々が、どのように農業に携わり、互いの良さを認め合うかでしょう。「差異」を持つ人々が協調し同居するむらが成立するには、「共生」と言うことの意味合いを真剣に考えなければならなくなっています。共生の「ものの見方」やその基盤となる価値観の醸成が必要となっています。
6,
生活の場である集落を過度に経済活動に駆り立てると、工業化社会の論理になってしまうのです。個々の農民を、たったひとつしかない運命共同体の集落に閉じこめ皆同じ方向を向く必要がある、とすると、多様性を許容する農的社会の論理からはずれるからです。農的社会の論理に準拠するには、コミュニティ活動と、経済活動を一端は分離することが必要です。
進む方向は多様にあるとし、個々の農家を自由に飛び回らせ、試行錯誤させる必要がありそうです。しかし、社会はリスクを伴う社会です。いつでも安心して帰ってこられるセーフティネットが必要です。自由な人々がいつでも戻れる存在に農協がなるという考えです。
例えば、コメの販売にしても、全国一本で売るのではなく、個々の農協が競争しながら売れば、経済活動はより強化されると私は思っています。
そのためには、協同というコンセプトをもう一度原点から考えてみる必要がありそうです。さらには農協存立の原点である集落(コミュニティ)の意義も改めて考え直す必要があるのではないでしょうか。
7,
一旦コミュニティ活動と経済活動を分離すると、自由な人々による新たな経済活動が生まれます。それが、コミュニティ活動の一部に反映し、経営の論理を取り入れたコミュニティ・ビジネス(集落事業)の例があちこちで見られるようになってきました。
自由な経済活動をするだけに、むらは開放的になります。高齢者も生き甲斐を持って。年金より農産物販売の額が上回ったなどと会話が弾んでいるといいます。東広島市の「重兼農場」や滋賀八日町の「糠塚(ぬかづか)町生産組合」は、その一例ですが、生産組合という名前が付いているのも、集落が経営体として法人化しているからです。
個々人の自由裁量による経済活動によって可能とするのは、困難対応型や弱者救済型の経済活動ではなく、付加価値を高める前向きの経済活動です。私は、これからの農協は、戦艦大和になるのではなく、農家を飛行機にたとえれば、それらの母艦になる姿勢が大切と感じています。
最新の画像もっと見る
最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2020年
2019年
2014年
2004年
人気記事