日米経済対話がはじまった。
アメリカはTPPからの脱退を打ち出している。
背景は、雇用の確保、製造業の回復、貿易赤字の解消だ。アメリカの貿易赤字はおよそ7千億ドル、その47%は対中赤字。日本は、700億ドル弱で9%ほど。対日赤字より、対中赤字の方が深刻なはず。
日米貿易は、米国から見て1300億ドルの輸入に600億ドル強の輸出で、700億ドルほどの赤字、精密機械、エネルギー、電子機器、などを相互に輸出入しているが、日本からの輸入が圧倒的に多いのが自動車(360億ドル)。赤字の大半をしめる。
他方、片務的に輸出だけの品目が農産物。穀物30億ドル強、肉類30億ドル弱。ただ、農産物はアメリカの対日輸出額全体の9%ほど。
アメリカの対日貿易交渉では、「自動車の輸入規制と、農産物の輸出増」を考える、のは今までもこれからも同様と考えられるが、両者をバーターにかけて農産物の日本への輸出を増やそうとしても、自動車の360億ドルと比べると農産物は◯が一つ違うレベルの話。アメリカの雇用増、貿易赤字の解消に効果があるとはとても思えない。
したがって、今後日本をFTAに誘って、日本から農産物の関税撤廃を勝ち取ったとしてもその効果は限定的だ。政治的なインパクトはいざ知らず、数字としては米国経済への利はそれほど考えられない。
さらにFTAでは難しい問題もある。というのも、トランプ政権では、結果を早く出したい感がある。中間選挙にも間に合わせたいのだろう。だが、FTAでの関税交渉となれば、一筋縄ではいかない。政権の一期目の任期4年は優に超えてしまう可能性がある。
他方、離脱を表明したTPPの合意内容は、アメリカにとってもそう悪いものではなかった。それも甘利ーフロマン交渉は実質的には、日米FTAだったからである。それを離脱するというのは、オバマレガシーを否定したいという思惑からだろうが、それによってアメリカが受けるディメリットは大きい。もし、アメリカが実を取ろうとすれば、TPPに戻ることがもっとも良い施策となるが、おそらくそれはないのだろう。
とすれば、実利を早くとりたいアメリカとしては、もし、日米FTAに持ち込んだとしたら、農産物交渉ではTPP合意内容を交渉のスタートとするのが得策だし現実的であろう。その際の交渉内容は、あらたに関税交渉をするのではなく、TPPでの関税削減期間の見直しやセーフガード等の見直し交渉をメインとし、豪州やカナダなどのTPP加盟国よりも有利な条件を引き出し、中間選挙に間に合わせ、実利を得るという戦略しか残されてないように思われる。アメリカにとってのFTA農産物交渉の選択肢はそう多くはない。
つまり、農産物交渉でのアメリカのメリットはそうないと言うことである。それよりも、エネルギーや自動車産業の日本からの協力を引き出し、製造業の復活、雇用の確保に邁進した方が得策な様に思われる。さらにいえば、貿易赤字に関しては日本よりもその大半を占める対中国政策がより重要となろう。
日本にとっては、TPPを11カ国で進め、それにプラスワンでアメリカが枠組みは違っても(トランプのメンツを立てながら)やがて実質TPP?(名前が変わるかもしれないが、,)に参加出来るよう促し続けるのが当面の対策ではないだろうか。そのためにも、将来アメリカが参加できるような「TPP11」を早期に作り上げることが、日本の課題となると思う。