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我が心の俳句とか徒然 〜祖谷馬関〜

句集「千里の言ノ葉」献上!

昨日、お蔭様で「千句」に達することが出来ました。(^。^)

こうして句集としてまとめてみると、一句一句に想い出が蘇り、三年半の間、いろいろなことがあったなぁ、としみじみと思い起こします。m(__)m

と、感傷に浸りつつも、今日からまた気持ちも新たに、次の千句へ向けて歩を進めたいと思います。(^-^)

皆様には、引き続きご贔屓にしていただきますようよろしくお願い申し上げます。 祖谷馬関

「初句会独り言ちたる発句かな」 祖谷馬関

(注)初句会は初春の季語。新年になって最初の句会。一月の例会が初句会となる場合が多い。年を新たにし、いつもより新鮮な気持ちで句座に望む。師や句友と今年の意気込みを語りあったりいつもとは違った雰囲気がある。

我が心の俳句 〜 祖谷馬関

★「千句」献上申し上げます。

「千里の言ノ葉」 2023年10月吉日

(10)
句集「神在月のうた」20231029
-100-
・来し方や神在月に千句発つ
・万国の未来咲く春夢の洲
・南瓜の供養もあるにハローウィン
・秋麗ら憧れ出ずる前奏曲(プレリュード)
・オタク語を切り捨てたるや鎌鼬
・我でなし身に沁む風の碌でなし 
・秋惜しみ夜通し響け君の音
・街道に灯火親しむ竹之内
・国想ふ道こそ遠き枯野かな
・枯葉舞ふ風の吐息か古ピアノ
-90-
・還暦を過ぎて三十路や冬隣
・星流る囁く歌の旅立ちか
・独り来て誰を想ふや雁の寺
・蛍雪に遠く夜長の古ノート
・空高し古都の甍に華の散る
・秋麗や駒に身を寄せただ一途
・秋深し赴くままに夜を駆ける
・凩も生きる証と微笑みし
・不知火や真意の胸に明滅す
・無き月を愛づや風趣の無月かな
-80-
・うつろひぬ若き心よ秋の空
・夢の的弓張月の夜に射よ
・叡山や雲に隠れし秋の雨
・栗飯や宿題ノートあとでやる
・新大豆醤となりて又逢わむ
・月欠けて夜長四方山話かな
・五月雨や命からがら伊賀越路
・金色に心も染めし稲の波
・榲桲の実の懐かしき夕べかな
・浮く竹輪沈む玉子や関東煮
-70-
・青北風や胸の隙間にご用心
・身を張らず空に控えて降り月
・天高く一筋の龍秋の空
・秋深し哲学問ふや細き道
・色付いて戸惑ふ栗も龍田姫
・独りゆく都大路や夕月夜
・星月夜あの日の未来此処に居り
・木天蓼や再び鮑喰ひけり
・檬果と香り競ふや麝香葡萄
・栗供え満を待たずや後の月
-60-
・虎穴より虎の子出でて上り月
・幼な子や鶺鴒追ひて散歩道
・俺お前あれこれの仲菊日和
・大陸の風に吹かれよ曼珠沙華
・彼の人へ想ひ伝えよ碇星
・雷雨あり涼しさを乞ふ白露かな
・カーコーと菊や重陽土俵入り
・週間を出棺と打ち亜紀の飴
・月給を羨む店も月見かな
・秋麗や来し方もふと愉楽かな
-50-
・馬肥ゆる奇祭の由来誰知らず
・なゐふるや憂いの果ての秋の宿
・人生を気長に想ふ夜長かな
・思えども行方知れずや秋の虹
・一言の重みで落ちる釣瓶かな
・名月や満ち欠けて満ち深呼吸
・中華より押し寄せし声野分かな
・バズるとは恥ずることかな残る菊
・寄り付かぬ夏の火鉢や女郎花
・逝く人の哀しみ悔いて風の盆
-40-
・貝殻も胡桃も見えぬ海の塚
・冷房を睨みカーフを慈しみ
・処暑の夜に時節を告げよ鉦叩
・待ち人やジンジャーの花連れて見ゆ
・戌の日のまた巡り来る晩夏かな
・消え入るも世の理や秋の蝉
・菓子を見せ句を捻らせて地蔵盆
・夏の湖分け往く舟に鳰の笛
・次々と心に灯る送り火や
・常夏の楽園失せて砂を噛む
-30-
・寒蝉もじっと鳴き止む野分かな
・アラカンや残る暑さの沁みる夜
・亡き人に思い寄せてや精霊馬
・あの頃の未来にいるよ盂蘭盆会
・ハワイへと思い馳せるや葦簀茶屋
・陽炎に幻の船進みたる
・広島と長崎つなぐ夏の空
・秋立ちて彼の狼藉を忘るまじ
・炎天にもしもと呼ぶも応え無し
・落ち蝉の紡ぐ生命や原爆忌
-20-
・萵苣の葉の瑞々しきや君の朝
・福まねく雛のダンスや夏の月
・かじふちや過ぎたる後の蒼き空
・かなかなと少年時代空を過ぐ
・ひと太刀に真言告げよカブトムシ
・水神に花火手向けて隅田川
・生まれ日や生命讃えし蝉時雨
・えげつなき暑さ吹き込む土用波
・身を守れこの上もなき極暑なり
・熟れるほど高値を下げるバナナかな
-10-
・今何処天神さんの遠花火
・ふと浮かぶ幼き頃や桐の花
・見晴かす梅雨明け十日槍の峰
・霧ヶ峰風にあの日の夏帽子
・世の為に金より幸を春袋
・誰を待つ四条河原の夕涼み
・星月夜空中電車飛行せよ
・モノレール蓮の酒汲む象鼻杯
・山鉾や夏空を突き進みやる
・夏の旅ひと句ひと句が一里塚

(9)
句集「風のはじまり」20230715
-100-
・片蔭や悲喜交々の浮世かな
・神と見ゆ馬上の稚児や祭かな
・夏木立島へ続くや鹿ヶ谷
・魘されて寝汗の果ての竹夫人
・天神の舟を清めよ夏の雨
・祇園会や師を思ふ夜鉾の辻
・冷や汁に麦飯喰むや日向灘
・夕凪に似て人生の閑かかな
・楊桃の実るが如き母の恩
・哀楽も樟脳舟の刹那かな
-90-
・映り込む汝の素顔夜盗虫
・枯葉より育ちし自由蓮の花
・逢ふこともなき友想ふ半夏生
・鎮魂の祈り尊し蝉時雨
・祇園会のいの一番の吉符入り
・山鉾の足音聞こゆ茅の輪かな
・夕立や春も秋もと降りなさる
・季語なるかキウイ恋ひしや一年中
・母想ふ甘く切なき山桜桃の実
・鎮魂の歌声響け夏至南風
-80-
・蛍舞うのちの川面に灯り消ゆ
・幸せの隅に枯れ入る靭草
・海原の生命映せよ碇星
・初恋の横顔映すソーダ水
・凶と出づ鞍馬の竹伐誰ぞ問ふ
・うりずんの海に生死の境見ゆ
・かの声に巡り逢ひしや走馬燈
・ボタニカルガーデン灯す螢籠
・梅の実の黄ばみゆく頃雨の音
・主人なき生まれ日来たる栗の花
-70-
・次の世の人を糺すや芒種かな
・先生や毒消売りの声を聴け
・防人の双肩に吹けあいの風
・五十路にて富士の雪解水清し
・四十雀薄墨を超え金色へ
・夏の朝ふたりの旅の始めかな
・短夜に幸せを喰む夕べかな
・母と子の道や別れて棕櫚の花
・鮎釣やトーストのよに魚の跳ね
・遠眼鏡見晴かす空虹の橋
-60-
・アボカドの葉陰に揺れてアロハシャツ
・引き際を告げず逝く人五月尽
・洋風の親子丼かなオムライス
・退職や雷鳴の果て波静か
・ガチャと出づ若葉の頃の想い出や
・万葉の言の葉寄せて風光る
・悪党や野分の如き殺人鬼
・暮らしごと変える風吹け扇風機
・水無月を待たずの雨にダム満つる
・形代も大なる人に何ぞ問ふ
-50-
・千年を超えて飛ぶ香や藤の花
・紫陽花の移ろふ色や我が身かな
・小満や万物満ちて魔よ失せよ
・風薫る道化の策士空を翔け
・男女の差傾き揺れて五月闇
・梅雨寒や路傍の花に問ふ平和
・聳え立つ山は女の五月富士
・夕立や独り遊びの喫茶店
・寝坊して誰を恨むや青嵐
・列送り人垣の散る葵の日
-40-
・かもまつり顔描きしか路頭の儀
・アカシアの風や鍵盤そっと押し
・路地の風揺る郷愁や迎え梅雨
・ため息を悪事と見ずや梅雨寒し
・薫風に乗せて天寿の報せ来る
・未来図を知るも知らぬも朧月
・蛮行や悪魔を招く走り梅雨
・四苦八苦の苦闘もあわや蜃気楼
・我が命救われて編む春の歌
・空高く夢を運ぶや鯉幟
-30-
・喫茶店ずんと昔や春の恋
・桜桃の花に感謝の実りかな
・走り茶や茜だすきの唄恋し
・海峡の橋遠く見ゆ春日和
・憧れもインスパイアに藤の花
・路地裏にオマージュの春バンクシー
・弁当の皮剥げて夏蒼き竹
・花札も萬葉の園鹿に藤
・杉綾に市松の茶屋春麗ら
・人の世にないふる春やGPT
-20-
・子の帰省春三日月の呼ぶ夕べ
・銀婚の日々や陽炎そして春
・稚児百合や我が命継ぐ小さき手
・薫風を掴むが如く生まれし手
・言の葉を捨てて拾って四月尽
・一張羅荷物となりし夏日かな
・水底の涙引き揚げ花の雨
・俯かず宙を見て咲け花水木
・国の闇告げるが如く春疾風
・AIの行方分からず春朧ろ
-10-
・酔客に忍び寄る雨花の宴
・京に次ぐ東をどりや邦の春
・時を超え生命を紡ぐ桜守
・春惜しむ哀しき時代支那の夜
・独り旅背を押す風や桜まじ
・遅咲きの花に涙す八重桜
・蛙の眼借りて微睡む春の夢
・彼の人の夢見送るや花の雨
・花々の生命集めて風光る
・清明や街行くシャツも下ろしたて

(8)
句集「いのちの鼓動」20230404
-100-
・春爛漫ゆるり歩くもまたよろし
・仏前に来し方を告ぐれんげ草
・花鳥に背を押されゆく新年度
・鷽替えて枝垂れ桜に敬礼す
・鷹化して鳩と為るかな四月馬鹿
・我が道は此処より出づと雲雀鳴く
・春場所や町に浴衣の巨体揺る
・万感を水面に集め花筏
・卒業や恋の八講荒れじまい
・木蓮の白仰ぎ見て感涙す
-90-
・造華会や如来に告げよ生新た
・好きなれば好きと鳴くべし花見鳥
・離れ来て故郷想ふ蜆汁
・街角の花を待つよな春ショール
・海越えし侍ジャパン風光る
・目を凝らす君の横顔ヒヤシンス
・引出しに埋もれし文や猫の恋
・日韓に春の便りや沈丁花
・春惜しむ背中に私心なかりしか
・気まぐれか存亡危機か蛍烏賊
-80-
・春暁や見上ぐる空に未来あり
・人生に落第あるが今じゃない
・草餅に極楽想ふ練供養
・爽やかなプラハの春やドーム去る
・鞦韆の揺れて揺られて日本丸
・勝ち名乗りドームの芝も麗らかや
・恋の果て脈も朧の月夜かな
・蒼き薔薇異夢も乙かな二人旅
・ほろ酔いや篝火と見ゆシクラメン
・投打ごと沸く歓声や雲雀笛
-70-
・空に舟さういやさうか春北斗
・春寒の頃逝きし母夕陽落つ
・来た道や春の啄木鳥笑うまじ
・春は花葉喰む母の歯八つのハ
・春風や緩急の粋六十路かな
・彼の人も暦還りし弥生かな
・音魂に言霊乗せて春の詩
・東風に乗せ青と黄の旗高く舞え
・先知れぬ道も春風駘蕩や
・花未だ来湯気や醍醐の仁王会
-60-
・山雀の地鳴き微かに雨水かな
・片栗や日々糧なれど識らぬ花
・紅梅や句も石の上早や三歳(みとせ)
・諚とて一夜官女の切なさよ
・菜の花の咲く狭間から嗤い声
・祥月や面影揺れて桜草
・雪中の花水祝や君がため
・青き春志す道サクラサク
・老いらくや春挽糸の哀しさよ
・マフラーを解く気配なき余寒かな
-50-
・春泥の如く言の葉汚れたり
・おれづみや海の果てより神来る
・大柚子の落つ庭先や春の色
・眠るまじ六花の誘い山の夜
・獺の祭観た夜の神秘かな
・初花の後にあなたの彼岸かな
・還暦を序と置くノート春隣る
・蝋梅の香りに浮かぶ若き母
・雪まつり北の学徒の夢や咲く
・一夜明け五條天神春や立つ
-40-
・鬼走り追儺の果てに我が身在り
・氷塵の彼方去り行く記憶かな
・精進の氷蒟蒻僧の膳
・凍豆腐出汁湯気笑みや母の味
・春恋し気張る寒さや寒土用
・ぼろ市やバザー・メルカリ今昔
・闇バイト打払ひしや鬼は外
・第五類されどマスクに絆されて
・節分や急ぐも愉し四方参り
・大寒波雪遊びの子大歓声
-30-
・探梅やいつか来た道戻り道
・悲運やと片付け難き義仲忌
・其方もか睨む達磨と雪兎
・憂う夜も乗り越え行かん春近し
・あの恋も知らず知らずや夕霧忌
・心まで襟立てる身に寒波降る
・夕餉どき未だ明々と日脚伸ぶ
・震災忌幼き形見ちゃんちゃんこ
・マックもか春待つ民に物価高
・松の内明けてやあずのおかいさん
-20-
・舶来と聞けど苦手の名はセロリ
・紙漉きや吐く息の白溶ける朝
・野次馬を押し退け参る火事見舞
・風邪引きて思ひ出深し寒卵
・独房の敗残兵や冬の月
・あの頃の夜はクネクネ冬の街
・呆けても母は母なり冬牡丹
・天気図に鍋物恋し寒の入
・成人の肩に寿ぐ雪の花
・故郷の友を偲ぶや寒見舞
-10-
・風花や思案するよな休み明け
・母の背や巻繊汁の白き湯気
・知らぬ間に擦り切れぬよう鎌鼬(いたち)
・再びの生命を乞うて帰り花
・君恋し大晦に独り言ち
・サウナにて熱波師の風冬の霧
・空き事務所旗下ろし日や散る紅葉
・寒造戻り富士見のくだらなさ
・冬銀河星々滲む涙かな
・病得てちょいと寄り道山眠る

(7)
句集「御神渡之夜」 20221224
-100-
・天狼の光に誓う余生かな
・熱燗や禁忌でもなお湯気恋し
・オリオンに願ひし恋や半世紀
・除雪車に厄除け願ふ老女かな
・苦楽経て庭眺めたる冬至梅
・カタールに冬の太陽輝けり
・酔象や世継ぎの願い寒の雨
・柿落葉我散りそびれ枝にあり
・御影堂や門徒も漫ろ御講凪
・赤穂乃士恨みにあらず正義なり
-90-
・ムササビの如く滑空したき夜
・行列や夜鷹蕎麦にも今昔
・食卓も囲炉裏端かなきりたんぽ
・亡き母の温もりのごと行火(あんか)かな
・呼ぶ声は妖厄神か虎落笛
・おでんでは温まらずや関東煮(かんとだき)
・子ら巣立ち寒々し部屋冬一個
・想ひ人恋占ひし古都の冬
・乾風(あなじ)かな悪縁失せよ安井宮
・憶昔(おくせき)す鴨川べりの春の香や
-80-
・鐘氷る悴みもまた命かな
・冬の空人生のごと滑り台
・オリオンや信じた道を諦めず
・亡き人の庭に柿生る哀しさよ
・北風に灯を点すごと紅き薔薇
・歳重ね茶の湯を想ふ亥の子餅
・生かされし命を想ふ日向ぼこ
・湯豆腐の味わい恋し南禅寺
・雄叫びや冴ゆる夜を突く世界杯
・アプリにてカトレア好きの彼来たる
-70-
・松島や小雪の宿人恋し
・勤労の幸せや沁む旗日かな
・木枯らしや再び生きよ父母の声
・小春日やプディングの意味識る男
・帆を上げよ星の入東風確と行け
・神の手に救われし我冬安居
・友と居て勿忘草の花言葉
・古褞袍(どてら)今フリースも季語なるか
・病室の滲み見つめをりやがて冬
・窓の外紅葉狩りにてひと休み
-60-
・晴れた空埋火起こしまた歩こ
・月を喰む影に怯えず寒昴
・立冬や春立つ頃にゃ元気なろ
・病棟の燕帰りて独りぼち
・散ってまた活き活き咲けり紅き薔薇
・我が命糸を手繰りて漫ろ寒
・来し方を顧みし夜上り月
・武士(もののふ)の御魂谺す秋の山
・秋深き色にて佐渡のおけさ柿
・此処も未だ坂の途中か秋遍路
-50-
・次の波神無月とは無体なり
・風流傘縋る人あり花しづめ
・世に嘘と毒多きこと月夜茸
・虫の音のそっと消えたりハローウィン
・見上ぐれば春秋告げる時計台
・秋麗や歌姫めぐり逢ひし夜
・うそ寒や青空に問ふ我が余生
・枳殻の実落つ幻か本願寺
・不知火や禍福の報せ誰に問ふ
・茶の花や不昧の道の朗らかさ
-40-
・嘆くまじ秋をゆく背に神仏
・火祭の鞍馬に出づる後の月
・聖母なるオレンジの花秋の音
・日めくりに心急かされ冬支度
・装束を着る観るも皆古都の秋
・まるめろの実に安らげる日入かな
・弘法や聳えし塔に鰯雲
・紅き実の花水木かな秋惜しむ
・若き日の流行り再び秋の服
・わかれ道どちらにしよか胡桃の日
-30-
・七里より鉄路延びゆく邦の秋
・朝晩の冷えも時節や早生蜜柑
・夢に見し昔の家やカンナ咲く
・風誘ひ気儘なるかな赤蜻蛉
・食ふがため頭も垂れよ枯尾花
・愉快こそ人を助くや策伝忌
・朝風に来る冬想ふ寒露かな
・落鮎の行方知るまい知られまい
・千回の旅巡り終え尾花粥
・万国旗歓声に揺る運動会
-20-
・初秋刀魚味より煙先に立ち
・人知れず百合の萎れて霧深し
・来し方の苦楽弓張月のやう
・秋晴れや法螺貝聞ゆ東山
・小桂の紅葉未だ来と独り言ち
・夏の果てビーチひっそり閑古魚
・錦繍や来し方苦楽編む如し
・半旗にて彼の人送る秋の暮れ
・実の転び葉が枯れ枝も落ちて冬
・釣瓶落つ地球(ほし)の傾き識る日暮
-10-
・秋の暮東北院の母子塚
・秋うらら軒端の梅も惑ふやう
・毒茸か知らぬ顔なりきのこ狩
・秋桜の揺れて映るや風の色
・秋入梅王と妃の墓ひとつ
・曼珠沙華此処へ寄るなと忌報せ
・颱風やあからさまにて御座候
・忍び寄る災いの音大野分
・雛の月道奥の旅照らさうぞ
・歩き来て亦た歩き出す吾亦紅

(6)
句集「忘却之島」 20220915
-100-
・いつの日か互いも忘る秋寂し
・無花果の皮剥かず食ふ新しさ
・十五夜に世界のMother召されたり
・初恋や百花の春に唯一輪
・玉石の石に学ぶや美術展
・秋知らず昭和を辿る未来の子
・石庭を愛でし面影冬薔薇
・溢れ落つ亡き友の声雁の空
・苦瓜の芽生え晩夏の忘れ物
・朝靄の谷間に仄か蔓橋
-90-
・失恋の溜息乗せて鰯雲
・溢れ蚊の如くゆらゆら我が心
・果つるまで見えぬ父の背萩の月
・来し方や秋の陽の落つ淡路島
・蛇穴に入れと願ふコロナの子
・虫の音や哀愁誘ふ夜長月
・肌寒き夜風に夏の背中見ゆ
・彼の人を想ひて秋の花に問ふ
・夏を聴くアイスクリンの声遠し
・貝寄風や大陸遥か聖霊会
-80-
・灌仏も涅槃会も越え人の盆
・古酒場雛鳥集め春の宴
・苦瓜を橙に染め晩夏過ぐ
・雉鳴けり流れ哀しき壇ノ浦
・星砂にキーホルダーや夏土産
・酷暑とも別れ近付く法師蝉
・あすなろと夢見る春の幸せや
・花を見ず闇に蠢く春の虫
・盆休み空っぽの昼揖保乃糸
・送り火を酒に浮かべて献杯す
-70-
・終戦日茶髪イヤフォン黙祷す
・夕焼けの奥の奥なる浄土かな
・土足にて蹴上がる輩野分かな
・立ち呑み屋涼みに寄りて五つ半
・昼酒に生命を見たり夏休み
・愛猫と同行二人遍路みち
・夏の浜お疲れ生と乾杯す
・参道に蝉捕りの子や夏木立
・眩しさに目を細め見ゆ細き富士
・原爆忌平和を刻む甲子園
-60-
・瀬戸の夏帆に夕凪や因島
・酒肴冴え忝きや盆の月
・縁日や娘らの手に扇風機
・新盆や若き御霊に迎え鐘
・義仲寺や師の導きか催涙雨
・生まれ日や浮世の幸を刻む夏
・寒くとも麦酒暑くとも燗酒
・母の友産婆と識りて遠き夏
・夏の家埋もれし写真に落涙す
・君と居た天神さんの夜恋し
-50-
・祇園会や逃げ水に山鉾揺らぐ
・夕映えの索道や見ゆ野毛の夏
・おさがりの服懐かしき盂蘭盆会
・侵攻の画面を見遣る冷珈琲
・土用波鏡の嘘を攫い行け
・獲物狩り舌の先刺す鷹の爪
・蜩に去りゆく恋を重ねをり
・夕涼み昔の恋の冷めやらず
・道半ば人生の常戻り梅雨
・ひと夏の闇ゆく舟や波高し
-40-
・我が身より子に幸あれと流れ星
・海の日や吾も若き父だった夏
・月涼し我が前世を想ひやる
・短夜や雷神の夢醒めて雨
・草野球歓声止みて蝉の声
・夕立やふと浮かぶあの夏休み
・訃報交い天神祭の夏来たる
・月仰ぐ睫毛も濡れし十三夜
・七夕の晴れたる空の悦びや
・野ざらしの旅の終いやゆすら梅
-30-
・木曽をゆく恵那隧道を抜けて夏
・降りもせずまた晴れもせず戻り梅雨
・ソーダ水透き通る眼の美少年
・卯ノ花や何事無きを幸と呼ぶ
・夏来る彼の人何処伊豆の海
・炎天に日傘ゆるりと百日紅
・夏の湖投網の舟の影朧ろ
・地下鉄の彼の席見えず蒼き芥子
・疫失せよ桃の魔力や陰陽師
・大樟の風に聳える父の背や
-20-
・空梅雨や確(しか)と漬けよか梅ラッキョ
・水取りて火と木が付けば山火事や
・沙婆駄馬と武具馬具ダンス花万朶
・小男やトムジェリの春蚤夫婦
・大晦日酒持て渡る去年今年
・夏の海朝夕焼や胸に沁み
・夏の恋紅き柘榴の花のごと
・足るを知る小皿の妙味かすみ草
・あぢさゐや路傍の犬のみつめをり
・木枯しや転がる石の如くゆけ
-10-
・梅雨空や熱田の剣曇り無し
・御朱印も皐月の花や金福寺
・梅熟す円き背中や祖母の庭
・短夜も短日もあり長き人生(たび)
・初夏の風一列に吹く花壇哉
・都落ち五条の別れ秋の風
・黒南風や花の盛りを叩く雨
・師の背中三百余年走り梅雨
・入梅や節句の合間六と六
・紫陽花の遠近に在り三室戸寺

(5)
句集「遠近之景」 20220605
-100-
・練供養老女の背にも後光哉
・いにしへの道もたそかれ茜色
・七回忌庭先にふと霜の花
・枯葉揺れことりと咳す秋の風
・春の庭何ぞの文字や蟻の列
・紫陽花や江口の君も濡れて居り
・許可局と鳴くや初めのホトトギス
・馬上にて夢の夢見ゆ月朧ろ
・底紅の花越しの空秋の虹
・薔薇の棘指の痛みや誰に問ふ
-90-
・旧き絵も目覚めの朝や更衣
・見えぬ富士心眼に留め五月闇
・逢ひみての亡き母の背や春の夢
・過ぎし恋野に晒されて虎落笛
・小満や麦は何処かウクライナ
・若鮎もやがて落ち鮎理由もなし
・海豚の背喰らふか情の満ちる冬
・名の由来子に訊かれてや五月尽
・踊り子の若き歌萌ゆ伊豆の春
・人生の旅道連れや福寿草
-80-
・春の日や駅のホームの独り言
・五月闇カナリヤの声消えたあと
・プロポーズ薔薇に始まる物語
・紫陽花の長ける茎葉や季語新た
・島国の民雀躍りす春の宴
・母恋しカーネーションの白き花
・行く春や独り見送る場所も無し
・新人と共に詫びてや若葉寒
・里帰り終え仰ぐ空ふと立夏
・初任給子に馳走さま鯉幟
-70-
・知り初めし大和撫子野辺の花
・春東風や嫁入り舟をゆると押し
・花嫁の憂ひを乗せて春の汽車
・挙式後の春のバーゲンゆく母娘
・嫁ぐ春長き映画の予告編
・嫁ぐ日や畏まる朝福寿草
・歌姫の声忘らりょか朧月
・春の宵漕げよマイケル千鳥足
・淡き恋陽炎のごと神田川
・蒲公英の綿毛の如く恋が逝く
-60-
・次世代へ繋ぐ万博春の海
・まだ君と出逢ふも知らず花の宴
・君を待つバス停の朝燕飛ぶ
・懐かしき歌胸に沁むれんげ草
・落日の涙乾かず春出船
・雪国の男女の業に白は無し
・山間の出湯に咲くや女郎花
・東山小唄の碑にや春の月
・葉桜や手酌侘しき独り酒
・百薬の長に誘われ花見酒
-50-
・五月晴れ空に置きたり花水木
・貧すれど心は売らじ狐の子
・燕飛ぶ故郷へ届け衛士の歌
・当て所なき孤悲を待つ身や春霞
・祖国(くに)思ひ未来へ散るや桜花
・満開も散りゆく定めそれも春
・あの唄のこぼれ落つかな惜しむ春
・ヒーローも今や徒花春の暮れ
・師を訪ね三百年(みほとせ)の春隅田川
・キーウにて瓦礫に散りし薔薇の紅
-40-
・春の雲花留めんと雲雀鳴く
・満開の花に寂寥(せきりょう)春なのに
・新社員オンラインから生まれ出づ
・古都の春花に洗わる我が心
・卒業の決意は高く伯耆富士
・彼の恋も春告鳥の声に消ゆ
・江戸の意気人形町の桜かな
・学園の二人の春に桜咲く
・春の川埃積む碑や雛の家
・あの恋を卒業できず時計台
-30-
・春霞微睡む先にターキッシュ
・木蓮の白に若気の吾を識り
・花粉症春の季語かと調べをり
・過ぎ去りし恋を思ふや残る春
・学び舎の窓にうつろふ春の雲
・春の宵散りしあの恋花の色
・アンニュイの雲立ちこめて燕来たる
・夜桜に主役脇役満開や
・花に笑み心に笑みを卒業式
・春の宵ぼんやりと恋灯りをり
-20-
・淡き恋彼を待つ道春の暮れ
・鯛飯の湯気にあの日の父母の声
・出立の目当てを告げず都鳥
・彼の町へ祈りよ届け百千鳥
・舟唄の朝寝起こすな彼岸西風
・卒業や幾年を越え春の暮れ
・朧月涙の果ての帰り船
・母子の春お天道様の差す小窓
・湯の町や母のエレジー花曇り
・青と黄の旗めく空や春よ来い
-10-
・家族なる一夜の宿の雪灯り
・冬の薔薇情熱の紅血の如し
・寒空に輪を描きをり戦闘機
・西方の儚き空へ東風よ吹け
・退職の父の背中や花の雨
・不老不死あえて望まぬ春の宿
・青春や流星のごと春疾風
・めぐり逢ひ伴侶の予感梅の花
・歌えども歌を知らずや蕗のとう
・一年の綻び払え雛の袖

(4)
【第四吟行】「玄武」
・忘却も一里塚哉大根焚き
・来し方を想ひ動せず残り鷺
・何想ふ冬の水面の都鳥
・燗酒に海鼠緩りと師走哉
・討入りの気高き正義今何処
・事始め祇園の花や年の暮れ
・山茶花の下に山茶花散りぬるヲ
・あえて北ひとり旅ならあえて冬
・冬アンカ幼き夜の温もりや
・チャンポンや湯気ぬくぬくと冬の幸
・侘助椿も蹲る哉冬至の夜
・柚子の香に十八年と呆れ顔
・冬の寺額を射抜く検温計
・倭の民の器量節操想ふイブ
・雨→雪トナカイの鈴冴ゆる夜
・鎮守森押し競饅頭湯気立ちぬ
・大根の葉にや昔の浮かびけり
・絵の隅に淋しき少女雪の空
・貧しさも想い出と呼ぶ年の暮れ
・往く年も来る年もまた友と在り
・母の唄大晦の夜も暮れ
・初春や大事なきこと祝いつつ
・スキーバス山菜蕎麦に雪の白
・初夢も新様式に染まりをり
・冬桜枯木に夢か花吹雪
・松の内早や広告に恵方巻
・酒肴ごと海山の酒呑む漢
・澤乃井や江戸の下らぬ冬の燗
・燗酒やオリオンも揺れ千鳥足
・空き部屋の窓に降り積む牡丹雪
・最果ての地に我を識り雪の朝
・振袖や万感の春成人式
・フォルモサや流浪の島の夜市哉
・寒風に凍てるタクシー空車灯
・月給の多寡は知らずや冬屋台
・久方の浮世小路や冬の松
・父と似た酒場の背中鯨鍋
・炊出しや街の灯に代え寒灯
・餅解きて骨正月や屠蘇恋ひし
・黙食や蹲る日々冬雲雀
・一点の曇りも無しや寒稽古
・父母か生まれ日に舞う風花や
・燗酒の文字にうつろふ冬の月
・大寒やたまにゃ良かろう味噌ラーメン
・雪割の屋根に降り積む宇津田姫
・寒風や吹く音百舌鳥の谺かな
・毛糸編むスマホ時代の恋とせよ
・鬢の香や雑魚寝の堂の夜更けかな
・千枚漬灯燈し頃に冬を識る
・ブロッコリ食べやと母の置き手紙
・泣き笑い彼の仕業なり鎌鼬(かまいたち)
・スケートの手を取り転び人生や
・サクラチル春唐辛子春菜の煮
・ゾロ目の夜四つ目の祓え追儺式
・ほろ酔いの風で帆を張れ寒北斗
・探梅や肩口に降る雪の白
・獺の祭りし魚に鯰入り
・春寒のベランダ日毎暖かや
・疫病の峠を越えよ雪の花
・魔を暴く一夜官女や澱の水
・川べりに春めく風の通りをり
・懺法の民を送るや伝衣閣
・敷島の祖と絆識る紀元節
・道をゆく旅読み返し菜の花忌
・蛤や鮑祝ひし雛の宴
・梅桜、藤を待つ間の蓮華草
・猫の恋チョコのあの娘やBack to the Future !
・多喜二忌や知らぬ書生の爽やかさ
・飯蛸や春の訪れ辛き酒
・我が名こそ父母の恋文余寒かな
・公魚の穴釣り寂し独りぼち
・風に触れ若き日想ふ雨水かな
・ひととせの歳時記を閉じ二月尽
・惜しむ春提琴の音我独り
・おれづみのニライカナイや海の果て
・織姫のWoven Cityや富士の峰
・わいおいの仲も桜の還暦や
・妖しの鬼も居留守や閑古鳥
・黄塵や空にミモザの花を染め
・詫びるなら朧月夜に詫びるべし
・人の世もそろり舟出の木の芽時
・お水取り籠松明もテレビジョン
・半世紀我が家毀て春疾風
・雛壇のお裾分けなり酒あられ
・啓蟄や虫もコートを脱ぎて飛ぶ
・太陽をひと回りして桜咲く
・如月の寒風突くやオープンカー
・てんでんこ幾年逃れ春の海
・朝焼けのマスクに香る沈丁花
・青き頃何者なるか知らぬ春
・津波忌や祈りの町に忘れ雪
・ダム穿つ人無き重機春の山
・水取りに比良八講や春近し
・冴え返る土筆は夜も眠らずや
・春霞手を振る君のシルエット
・春風や頭髪淋し捨て頭巾
・穴を出づ蛇熊蛙我が身かな
・胸に春喇叭水仙白黄色
・春が来た村の祝言今日此の日
・結願や春爛漫に筆を置き

(3)
【第三吟行】「白虎」
・去る人や気も漫ろなり女郎花
・恋唄の彼方に滲む風の盆
・角打ちの品書き眺む法師蝉
・水底に鼻折れの鱧夕月夜
・不死鳥にならむと煽るひやおろし
・かじふちや守り給へとデイゴの樹
・斧と木や永田の秋に狐狸の幕
・重陽の菊や上賀茂八咫烏
・鈍色や嫁ぐ荷の隅銀の匙
・微睡みて車夫の父見ゆ秋の暮れ
・豪雨継ぐ台風の理由(わけ)地球(ほし)に訊く
・野分過ぎ小さな秋や吾亦紅
・燗酒に白き頸(うなじ)や尾花蛸
・紅の意をあらためて識る曼珠沙華
・十六夜に俄かの夢を願ふ子や
・若き父母を訪ねて秋遍路
・あくがれに胸騒ぎして花カンナ
・百鬼すら月に見入るや秋夜長
・松茸の食べ放題や俗な秋
・天高し芋茎(ずいき)神輿の往く音や
・祝杯や秋に真逆かの甜瓜の実
・青北風(あおぎた)や感謝の心ブルーエール
・猿酒に酔ふて庚申詣りかな
・栗の実や何ゆえ棘の包みおり
・爪紅の想い出遠き鳳仙花
・若鷲の予科練に秋無し礫(つぶて)
・我が心故郷へ誘ふ朱欒(ざぼん)の香
・物の怪か鬼の仕業か椿落つ
・岩牡蠣や赤穂の秋に銀の波
・柿の実の色を集めて秋茜
・酒の日や神と手酌の柚味噌かな
・君遥か案じては問ふ秋の月
・友ありて秋や十六夜梯子酒
・軒(ノ木)に陽(火)の暮れゆく秋や牡丹焚
・去りし日を夜長に問ふや月朧ろ
・色里や晩秋の風輪違屋
・炉開きや茶の湯の香り冬支度
・錦秋や姫の面影百々御所
・方言か秋の放言上喜元
・小鼓や虚子想ふ酒冬間近
・北国のすずらん灯や濁り酒
・冬毎の蟹とは言えど香住鶴
・木犀の風の便りや寒露かな
・愛着を集めてメロン収穫祭
・橙に遅れず凛と酢橘の芽
・終点や車掌に追われ冬隣
・木は心秋深まりし鉋屑
・天王寺偲ぶ太子や一乗会
・マスクの子金木犀の道をゆく
・秋麿しひやおろし又じゃこおろし
・コンベヤー山海へゆく須磨の秋
・秋競馬飛行機雲の如く駆れ
・秋深し電車内こそ侘びを識れ
・霜降や冠雪炬燵ちゃんこ鍋
・京の酒何がしか得て神無月
・次こそは友の予想を菊花賞
・伊予の湯屋ノマドも秋の句会哉
・バズるなど識ろうともせじ秋の空
・栴檀の木を目印や叔母の家
・ハッシュタグ君の想いも見えまいか
・秘すればと安楽寿院秋の風
・こなからと浪花の秋や二合半
・色紅葉想ひ起こすや幼き手
・木枯らしの二号は聴いた験しなし
・コレラ船デジャブの季語やコロナ船
・冬も立ち電飾の木々御堂筋
・秋深き路傍の寺に花の御所
・秋霧の彼方に花や新熊野
・路地の雨冬も愉しと因幡堂
・秋も良し尚閑かなり曼殊院
・玄冬を切り裂き其処に青不動
・先笄を解き衿替えや京の春
・秋暮れてハートのエース待つ心
・去る人の靴音もせず神無月
・冬木立夕霧に消ゆ伊左衛門
・小春日の浪花に潜む毒髑髏
・神護寺や土器に請ふ市井の日
・吃音の少年に道聞く冬や
・風花を掌に往く六地蔵
・龍の眼や行き来る年を浄めたり
・枳殻(からたち)を訪ねて冬の傍花閣
・太閤の鐘も撞かずや虎落笛
・関東煮ぬくぬく食べや母の声
・春菊や長湯無用と鍋将軍
・天晴れや狐の点前秋茶会
・立華たる禁裏の花会世の春や
・狂言の如く愉快におらが春
・絶景や紅葉に揺らぐ水路閣
・歌詠みの温もりに触れ古都の冬
・冬稲荷鳥居の陰にきつね面
・枯れ枝も風雪も愛で石の庭
・岩垣や永観遅し紅葉山
・冬の波流離の果てや隠岐の島
・斎王の哀しみ過ぎる腰輿かな
・節分会待てずに願ふ鬼やらい
・鬼門守護比叡颪や檻の猿
・送り火や彼岸の旅路鳥居形
・年の瀬に人も疎らや花の御所
・霊山や維新の道に散る椿
・悴(かじか)んで花やすらえよあぶり餅

(2)
【第二吟行】「朱雀」
・朱雀へと心新たに走り梅雨
・入梅や雨だれに問ふ恋心
・筍や単車の老夫照れ隠し
・初夏の宴餃子とビール宙に月
・碧き空木立吾独り桐の花
・ヒュッゲとや北欧の夏灯り窓
・Look at the sky 落涙すまい五月尽
・人恋し墨染のごと五月闇
・言わ猿やマスクの民のアマリリス
・半世紀なほ少年の糸柳
・五月雨も紫陽花もまた夏の音
・懐かしや月の砂漠に花菖蒲
・蓴菜や距離置きて見る手相かな
・イソトマの果て無き宇宙(そら)に浮かびおり
・うりずんや再びの味ソーキそば
・冬蒔きし蜜柑芽吹きて未来在り
・青梅雨や濡れて居ようか磨崖仏
・片恋も薔薇盗人の仕業とや
・業平忌恋路を行きつ戻りつや
・流れ星窓にルージュの一文字
・母帰る望月の冴えカーネーション
・黒南風や欲望のベル宅配夫
・梅雨間近蛍前線明滅す
・外れたる顎を笑うや桜桃忌
・蛍火を憧れと識る貴船かな
・芒種とや分相応と我を識り
・あぢさゐや結構人の咲く如き
・人在りき廃線跡の夏草や
・梅雨空も雨に唄えばパステルに
・盆帰り並びし祖母の紙袋
・蛙の子五線譜泳ぐ田植えかな
・あいの風黒四穿ち半世紀
・夏至来たる極の白夜に続く空
・差し馬や追いつかぬまま夏至の暮れ/6/18尾手沙汰八様御生誕記念
・炒飯に母想ふ日や茄子の花
・姫百合や南風原の空深き碧
・梅雨半ばすき焼きの麩に出汁の音
・短夜や冬至に向けて憂い顔
・拉致の声磯鵯(ひよどり)の父尽きて
・雛独り巣立ち急ぐや半夏生
・再びの花を訪ねて三室戸寺
・梔子の香に微睡むや雀の子
・独り来て六日の菖蒲君恋し
・あの夏の君の横顔ソーダ水
・彦星の背を見送るや琴の岸
・半年の厄を祓ひて夏越かな
・送り火や浴衣の君の片化粧
・寄り添ひし君が瞳に遠花火
・下馬もせじ駒形稚児の八坂入り
・コロナ禍に暴れ観音怒髪天
・伽羅蕗や一口の酒丁度良し
・決壊す滲みゆく町畝る蛇
・老母の手PETの栓に負けて梅雨
・屋も親も有りし子の餓死送り梅雨
・白南風に幸を願ふや百日(ももか)膳
・キチキチと少年時代へ呼ぶ飛蝗(バッタ)
・鬼灯の茜差す道影法師
・梅雨明けの町に瓦礫の夏来たる
・鷹乃学習夜明け前
・夏の海砂山も消ゆ裸ん坊
・狐火に化かされ湯浴み夏の沢
・夏草の伸びる蔭にて散りし花
・胆試し泣いて遇ふ子や祖父の墓
・夏祭り匂ひ立つ髪白き指
・半だらり八朔の紅きらきらし
・夏の果て逢えず終いや百夜月
・生まれ日に薔薇咲く母へ元気です
・天神の渡御無き闇に祈る夏
・女狐の嫁入りも消ゆ蝉時雨
・ナツノキミヨルシカナイトオンリーユー!
・いざ知らずその実は馴染み胡麻の花
・泣きたけりゃ心ゆくまで夏蜜柑
・恋路さえ籤引きとかや金魚売
・夏空や青々と晴れ永遠に咲け
・西瓜ひと切れ赤き実や夏を呼ぶ
・献花台貫くドームや原爆忌
・ミンミンジーシャンシャンカナカナ夏の蝉
・かすていら幾年の夏天主堂
・体温をぬくもりと読む登校日
・向日葵や若き日の母笑むばかり
・夏の海眠る旗艦に敬礼す
・LED赦してやれよ大文字
・迎え鐘蹄の音か鳴く蝉か
・防人の哀しみ聞こゆ終戦日
・ポーチュラカ好きと言わないラブソング
・盆帰り供えし巨峰黒きこと
・化ける夜も忘れて昼寝夏の猫
・夕立や軒から見遣る蛇の目傘
・宙を翔ぶ蝉の羽しづか早や晩夏
・冷房の過ぎたる喫茶今何処
・貝殻に去る夏を訊く離岸流
・夏の宿電波は何処へワーケーション
・空を斬る打席も誉れ甲子園
・晩夏にメロン咲くぷっと飛ばしタネ
・夏の夜を目覚めさせるや大火球
・絵日記や歓声聞こゆ遠き夏
・ラジカセの埃払ひて盂蘭盆会
・青蓮院年経る樹の根きりぎりす
・鈴虫に負けじと轡(くつわ)鉦叩き
・朱雀より白虎への道秋の風

(1)
【初吟行】「青龍」
・初午や仰ぐ芭蕉の歳を超え
・拉致の子に忘れな草を冬雲雀
・市井とは君想ふ日や梅の花
・来し方を思えば土手の土筆かな
・カルガモの親子に似たり春ゾロ目(2222)
・御料酒を手水替りに伊勢参り
・恨むまい禍の地にも咲け桃の花
・春うらら吃逆さえもやや陽気
・在りし日の背中に似たり春墓参
・卒業が昨日の如く同窓会
・帯上手朱華(はねず)に非ず桜鼠(さくらねず)
・君想ふ春遠からじ沈丁花
・うるう年四年で割れば十四歳
・終の友生まれ日祝う福寿草
・春疾風初恋も散り墨桜
・桃の花酒より貝と雛の寿司
・安酒場鶏小屋のごと余寒かな
・亡き母に徒然語り揚雲雀
・コロナ禍に籠りの僧やお水取り
・蹄駆る歓声も無き春競馬
・若牛蒡無粋なる酒語り口
・川べりの名も無き花も咲く春や
・人生の贈り物はと春の暮れ
・呑み笑ふ奴と出逢ひし遠き春
・津波忌に祈る青い眼トモダチや
・伊予柑の暖か色や彼岸過ぎ
・退職の朝ほろ苦き花吹雪
・群衆に流されし冬我一個
・ひと月の想いを染めしホワイトデー
・旅立ちや木蓮の花宙に置く
・幼子に幸多かれと花万朶
・山笑ふ我も笑ひし其れぞ春
・サクラサク書生闊歩す洛中の春
・ランドセルさくら道ゆく蕾たち
・転勤やLINEスタンプ春便り
・手のひらを零れ落つ恋花筏
・女坂片身替の跳ね袴
・落とし紙昭和と出逢ふ蜘蛛の糸
・スキーバス/客燻り出す排気ガス
・懐にいっぷくの銭花見酒
・辞令来ゆ儘に散りゆく春の夢
・嵐山のたり流るる桜舟
・転勤や浦嶋の竿背負って春
・ネクタイを結うたびに君想ふ春
・地を穿(うが)つ漢(おとこ)の仕事春の暮れ
・離任式桜前線北上す
・漕ぎ出でよ櫓は細くとも春の海
・盥(たらい)落つ東村山四丁目 〜志村けんバカ殿に捧ぐ〜
・二上の山に別れの花の雨
・来し方を海津の桜語りけり
・春うらら鶯に訊く希望かな
・宙返り風に誘われ桜花
・車椅子在りし日の母花曇り
・小々波や相槌の友惜しむ春
・日向ぼこ面影揺れて蓮華草
・ツバメの巣雛も鍵っ子留守番か
・山葵漬け温燗の友十八番唄
・閑かさや春高楼の城テラス
・おいでませ幸せますと春便り
・腑に落ちず店早仕舞い忌の春
・コロナ禍や隣と距離を置く春ぞ
・早やツツジ災い果つる祈りかな
・StayHomeうちで踊ろう春の暮れ
・網焼きのうるめ薫るやコップ酒
・酒に酔ひ人に酔ふ日や朧月
・春雷の神の怒りや玉霰(あられ)
・蠍座(さそりざ)へ夜行の恋路サンライズ
・ほろ酔いの見送る春や男酒
・虞美人草(ぐびじんそう)幸せ暫し閉じて置く
・貝寄風(かいよせ)に冬の名残の上燗や
・風に訊け藤に菖蒲の見頃かな
・我が身こそ思い封じよ俊寛忌
・春色の想い出咲くやスイートピー
・人生は落第のみで済まされず
・誰そ彼(たそがれ)の賀茂に寝たるや都鳥
・春彼岸西門に落つ陽に拝す
・青空に願うが如く花水木
・聞し召せ万葉の歌春夏秋冬(ひととせ)に
・コンビニで八十八夜識る夜明け
・寂しかろ四分の三の食卓や
・白き帆に薫風を得よ秋津洲(あきつしま)
・友来たる早や冷や酒や初鰹
・蛍烏賊(ほたるいか)嗚呼美味いかと独り言ち
・端午暮れ幟(のぼり)の鯉も川の字や
・立夏にて湖畔の余花や夢朧ろ
・幼子の想ひ出遠く霞草
・母の日は心に在りと燕の子
・真っ直ぐに生きよと亡父五月晴れ
・750cc(ナナハン)に我が春を見ゆ青嵐
・煩いも悩みも棄てむ更衣(ころもがえ)
・芍薬や母の便りか風の音
・かげろふや踊り子の恋天城越え
・惜春や雲に面影野辺送り
・風薫る琳派の報せ燕子花(かきつばた)
・逢ひみての俤(おもかげ)燈す釣鐘草(カンパニュラ)
・アカシアや短かき夏の忘れもの
・長き坂声交わす父子春の暮れ
・老い先に共の行水百合の花
・蛍狩二人連れ往く小径かな
・徒然の百句吟行一里塚

以上、千句献上  祖谷馬関
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