沖縄・台湾友の会

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全人代、習近平の思惑をどう止めるか      櫻井よしこ

2023-04-01 17:03:20 | 日記
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全人代、習近平の思惑をどう止めるか
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         櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第1040回

3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代・日本の国会に相当)が開幕、李克強首相が最後の政府活動報告を行った。1時間足らずの淡々とした演説には、さまざまな意味が込められていた。その中から習近平国家主席の思惑を読みとってみる。

李氏は報告を読み上げる中で何か所かを省略した。これらも含めて全て習氏の了承を得ているはずだが、省略されたのは「戦争準備の強化」や「軍の近代化の水準と実戦能力が著しく向上した」などの部分だった。香港及び台湾問題について共産党政権が厳しく対処し、秩序を確立したという部分は割愛され、ウクライナ侵略戦争についての言及は元々なかった。

中国が国際社会の目を意識し、穏やかな印象を醸し出そうとしているのが読みとれる。西側社会はいま一致団結して、ウクライナに侵略戦争を仕掛けたロシアに対抗する構えを作っている。ロシアを非難せずロシアの側に立ち続ける中国には深い不信の目が注がれている。米国ではバイデン大統領、ブリンケン国務長官以下要人らが、中国がロシアに対する軍事支援に踏み切る兆候について言及し、そのようなことは深刻な結果を招く、と警告し続けている。

こうした国際社会の厳しい視線を和らげるためにも中国はロシア・ウクライナ戦争で「善意の仲介者」を演じようとした。だが、2月24日に明らかにした12項目の和平提案はロシアの利益を代弁するばかりだとして全く評価されなかった。中国の面子は丸つぶれだったが、それでも彼らには米国との関係修復を図らなければならない理由がある。

昨年の中国の経済成長率は3%、若者の失業率は17.6%と発表されたが、実際には経済成長はマイナスの可能性があり、失業率は30%をこえているとみられている。

報告で李氏は「国内経済は需要不足」「民間投資と企業の先行きは不透明」「雇用対策は非常に困難」と述べた。「貿易成長の原動力が弱まり外部からの抑圧が増大化している」「科学技術のイノベーション能力が伸び悩んでいる」とも報告した。滲み出る苦況。経済立て直しのためには、米国との関係修復が欠かせない。

中国の軍拡の凄まじさ

バイデン政権の半導体関連物資・製品の禁輸措置は、日本とオランダも協力した厳しい内容だ。日米蘭が制裁を隙間なく実施すれば、中国の産業は行き詰まる。米国の制裁の壁を打ち破ることが、中国にとって何よりも重要である。経済成長を実現できず、国民生活をより豊かにできなければ、中国共産党の存在意義はないからだ。言葉は強気でも中国は米国との関係修復に力を注がざるを得ないのだ。

中国共産党の対外姿勢が少なくとも表面上柔らかに見える理由として、産経新聞台北支局長の矢板明夫氏は、中国国内の状況の変化を挙げる。

「昨年8月、ペロシ米下院議長が訪台したとき、中国は強く反発しました。その時期、中国国内で烈しい権力闘争が進行中でした。国内情勢が厳しいときは、外に敵を作り国内を引き締めるのが常套手段です。しかし今、状況は変わったのです」

昨年10月の共産党大会で人事を行った結果、中央政治局常務委員会も中央軍事委員会も習氏の「イエスマン」で固められた。習氏は国内の権力闘争を完全に制したのだ。もはや党内の反対勢力を気にすることもない。外敵を作り、危機感を強めて求心力を高める必要もなくなったというのだ。

台湾に関する習氏の微笑外交は表面の薄皮一枚だけでのことだ。その裏ではこの上なく厳しい認識で軍備を拡張中だ。習氏は、来年1月の台湾総統選挙にピタリと焦点を合わせ、「台湾統一では決して武力行使の放棄は約束しない」との原則を掲げ続ける。

国防予算は前年比で7.2%ふえることになった。元々中国の軍事費は公表値の1.5倍と考えるべきだと言われてきた。中国の軍拡の凄まじさが見てとれる。

ウクライナ侵略戦争に関して、人民解放軍(PLA)の機関紙「解放軍報」はロシア軍の統合作戦能力への疑問を呈し、PLA自身への戒めとすべきだと指摘した。予期せぬロシア軍の苦戦を見て、彼らはPLAが1979年の中越戦争以降、本格的な戦闘経験を欠くことに注目し、指揮官の能力向上の必要性を説いている。

米国防総省は米国の軍艦300隻足らずに比べて、中国海軍が世界最多の340隻を保有し、さらにあと3年で400隻にふやす予定であることに警鐘を鳴らし続けている。また、中国が台湾上陸に備えて戦車揚陸艦や揚陸輸送艦を2019年から22年にかけて1.5倍の52隻にふやしたなどと危機感をもって指摘する。

地球全体が戦争の瀬戸際

中国はこの急速な軍拡を進めるにもかかわらず、李氏は演説で敢えて台湾についての部分を素通りした。矢板氏は台湾における政治状況の変化が背景にあると指摘する。

「去年11月の台湾の統一地方選挙で与党民進党は惨敗しました。台北市長選では民進党の陳時中氏が、国民党の蒋介石元総統の曽孫、蒋万安氏に惨敗しました。敗北の責任をとって蔡英文氏は民進党主席を退かざるを得なかった。国民党に追い風が吹く中で、強硬策を取れば民進党を利することになると習氏は理解しているのです。来年1月の総統選挙まで、彼は台湾人に中国への恐怖感や警戒感を与えないようにして、様子を見ると思います」

どの国もいま、地球全体が戦争の瀬戸際にあることを意識しているのではないか。欧州での侵略戦争は続き、アジア諸国は台湾有事への深い危機感を共有しているはずだ。どの国も、とりわけ日台両国は全能力を傾注して、中国の侵略を思いとどまらせなければならない。なぜなら台湾有事は日本有事であり、戦場になるのは台湾と日本なのであるから。どれほどの犠牲か、どれほどの悲劇か、予想がつかない。

ウクライナは実によく戦っているが、戦争を抑止できなかった時点で、悲劇が始まってしまった。

岸田文雄首相は安全保障33文書を閣議決定して自衛隊と日本の軍事力を増強するとした。大いに評価するが、中国の蛮行を阻止するには外交力も最大限に活用しなければならない。その点で、林芳正外相がインドで開かれた20か国・地域(G20)外相会合に出席しなかったことは到底、理解できない。

参院予算委員会での基本的質疑には全閣僚が出席しなければならないからというのが参院自民党の考え方だったという。だが、林氏がG20を欠席して参院で質問に答えたのは、53秒間だった。予算委員会における全閣僚の出席は非常に大事だと、参院自民党は言う。しかし、予算案はすでに衆院を通過しており、参院送付から30日で自然成立する。参院での答弁は消化試合だ。参院には優れた議員も少なくないが、この局面で日本の外相をG20に送りこまないことで生じる損失を考えることができなかった。実に情けない。         


【日本の解き方】不正確な内輪メモを元にした国会審議など時間の無駄 岸田首相も「更迭は論理飛躍」と一蹴 

2023-04-01 17:01:48 | 日記
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 無理筋だった高市早苗大臣への追及
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           高橋洋一

【日本の解き方】不正確な内輪メモを元にした国会審議など時間の無駄 岸田首相も「更迭は論理飛躍」と一蹴 


3月22日は大忙しだった。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦で日本が米国と対戦し、岸田文雄首相はウクライナを電撃訪問した。その日、総務省は放送法をめぐる行政文書について追加精査報告をした。

この文書は当初、「エース官僚による極秘の超一級行政文書」との説明だった。確かに内輪メモの類であっても形式的には行政文書になる。

しかし、当時、総務相だった高市早苗氏が問題としているのは、当時の大臣室や事務次官(旧自治省出身)に配布していないので、高市氏さえも何が書かれているか確認できない怪しいメモだ。

その他のものも、誰が書いたのさえわからないものが少なくないので、このような、しかも8年前の文書を論拠として大臣の首を取るのはそもそも無理だ。

総務省大臣室勤務の経験がある筆者は、今回の行政文書を見て、すぐにピンときた。8年前、礒崎陽輔首相補佐官(旧自治)が放送法で仕掛け、肝心の安倍晋三首相(当時)は無関心で、空振り案件だったが、旧郵政では「猛攻をしのいだ」という趣旨の内輪メモだと。

放送法解釈の変更もなく何の変化もないのに、旧郵政の内輪では「勝利」というものだ。礒崎補佐官と旧郵政部局の間で話があったのは事実だが、対外的には意味がないものだ。旧自治と旧郵政の争いなので、高市氏はまったく蚊帳の外だったのだ。

今回の文書でも、高市氏は一貫して無関係だが、レクメモが残されていた。まったく記憶にない高市氏が文書の正確性を問題視したことで、国会がもめた。

2015年2月13日の大臣レクメモは配布先などに不備があるが、日時、場所、記録者は具備しているので精査の対象になった。

今年3月20日の国会審議で、総務省から「3人に捏造(ねつぞう)の認識はない」との答弁があった。しかし、上司による「書き直し」が示唆された可能性は本コラムで書いたが、それを踏まえると、3人のうち少なくとも1人は不正確な発言になり、大臣レク出席者6人中4人以上はレクメモの正確性に疑問を持っていることになる。

22日の総務省の精査では、これを裏付け、「5月12日以前に放送法第4条の解釈に関する大臣レクがあったかについては、関係者間で認識が分かれており、確認はできなかった」「作成者及び同席者のいずれも、この時期に、放送部局から高市大臣に対して、放送法の解釈を変更するという説明を行ったと認識を示す者はいなかった」とあり、レクメモの正確性、信頼性に疑問を示すものとなっている。

24日の国会審議でも、立憲民主党の議員の大臣罷免要求に対し、岸田首相は「文書の正確性が確認できないので、更迭はあまりに論理飛躍」と一蹴した。この程度の内輪メモを根拠とする国会審議は時間の無駄だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


【日本の解き方】 親中派政権樹立狙う企てに日本はTPP加速で"中国封じ"を

2023-04-01 17:00:55 | 日記
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 台湾総統選で「天下分け目の戦い」
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            高橋洋一



【日本の解き方】 親中派政権樹立狙う企てに日本はTPP加速で"中国封じ"を 


台湾の蔡英文総統が訪米すると発表された。蔡総統はこれまで6回訪米しており、いずれも中南米諸国などへの外遊の経由地という名目だ。

今回も、中米グアテマラとベリーズを訪問するが、その経由地として、往路の3月30日、復路の4月5日に米国を訪れる。その日にはシンクタンクなどでの講演のほか、大統領権限継承順位が副大統領(上院議長を兼務)に次ぐ第2位であるマッカーシー下院議長と会談する見通しだ。

来年5月に退任する蔡氏の目的は、政権の外交成果の集大成のアピールだ。昨年8月には民主党のペロシ前下院議長の訪台を受けており、後任の共和党のマッカーシー氏とも会談することで米国とより緊密な関係を誇示できる。

2024年1月には台湾総統選がある。ただし、蔡氏は出馬せず、与党・民主進歩党(民進党)の後継候補への後押しとしたいようだ。

中国としては、民進党が勢いづくのは困る。しかも、1979年、米国は中国との国交回復し、それに伴い台湾と断交しているので、今回の蔡氏の訪米に反発している。中国外務省の汪文斌副報道局長は21日の記者会見で「断固反対する」と述べた。

一方、米国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は21日、「当たり前のことで以前にもあったし、またあるかもしれない。個人的かつ非公式なものだ」とし「中国が過剰に反対する理由はない」と述べた。

中国の習近平国家主席は3期目に入り、台湾統一の意思を明確にしている。来年の台湾総統選において、親中政権が誕生し、今のまま中国に併合されるのが最良であろう。そのために、親中派の最大野党、国民党に接近している。

蔡氏の訪米時期に合わせて、馬英九・国民党前総統が3月27日に中国を訪問する。総統経験者の訪中は1949年の中台分断後で初めてで、中国側の招待によるものだという。

来年1月の台湾総統選は、「非中」と「親中」の天下分け目の戦いになるだろう。中国はあらゆる手段を使ってでも、親中派の政権樹立を企ててくると思われる。

台湾の国内には、政治的な立場では中国と距離を置きたいが、それでは食っていけないという、日本の岸田派の「政経分離」のような人も少なくない。台湾経済はかなり中国に浸かっており、中国依存を脱するのは容易ではない。しかも世界的に優位な立場にある半導体でも、その技術の優位性はそう長く持たないという見方もある。

そうした人たちを西側民主主義体制に取り込むには、台湾の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)入りを加速させるのがいい。TPPはその性質上、中国の加盟は困難で、中国包囲網の性格がある。そのためにも、現在進行中の英国のTPP加盟を急ぎ、TPPを民主主義の経済圏として早く確立するのが日本の責務である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)