沖縄・台湾友の会

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欧米が追加利上げする理由    高橋洋一

2023-04-02 20:14:17 | 日記
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欧米が追加利上げする理由
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高橋洋一


【日本の解き方】銀行問題は守備範囲が違う 日本の引き締めは時期尚早 


米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行などが追加利上げを決めた。

本コラムで再三繰り返して主張していることの一つとして、金融政策には「dual mandate(二つの責務)」があり、物価の安定と雇用の確保を目的とする。

雇用の代表的な指標は失業率であるが、物価と失業率の間には裏腹の関係がある。雇用確保のために失業率を低くしようとするのは当然だ。しかし、失業率はどうしてもゼロにならず下限がある。そこまで失業率を下げられれば、雇用の確保としては満点だ。

ただ、その失業率の下限を達成してもなお金融緩和を続けると、失業率は下がらずインフレ率だけが高くなる。その意味で、下限の失業率はNAIRU(インフレを加速させない失業率)といわれる。

NAIRUを達成したいがために、過度の金融緩和を戒めるのが、インフレ目標だ。『安倍晋三回顧録』にも同趣旨の話が書かれている。

「最も重要なのは雇用です。2%の物価上昇率の目標は、インフレ・ターゲットと呼ばれましたが、最大の目的は雇用の改善です。マクロ経済学にフィリップス曲線というものがあります。英国の経済学者の提唱ですが、物価上昇率が高まると失業率が低下し、失業率が高まると、物価が下がっていく。完全雇用というのは、国によって違いはありますが、大体、完全失業率で2・5%以下です。完全雇用を達成していれば、物価上昇率が1%でも問題はなかったのです」

安倍元首相は「NAIRUを聞いても答えられない人ばかり」と言っていた。例えば、日本のNAIRUは、安倍元首相のいうように2%台前半である。

こうした金融政策の基本フレームから見れば、失業率がNAIRUまで下がっていて、インフレ率がインフレ目標より高ければ、金融引き締めとなる。この意味で、FRBやイングランド銀行の利上げは、セオリー通りだ。

こうした利上げは、米シリコンバレー銀行やスイスのクレディ・スイスなど、リスク管理を十分に行ってこなかった銀行や、不祥事続きで十分なガバナンスができていない金融機関などには大きな打撃になるだろう。

しかし、それらに対応するのは銀行監督の仕事であり、金融政策の守備範囲ではない。一つの政策では一つの目標にしか対応できないので、破綻銀行には資本注入や他行との合併などを行いつつ、利上げを行うのが筋論だ。

景気への懸念は、失業率がNAIRUになっている以上、無用なインフレは景気過熱を意味しているので、過度に心配すべきではない。

ただし、日本では、雇用調整助成金で失業率が低めに出ているので、まだNAIRUを達成しているとはいえない。その意味で利上げは時期尚早だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)