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1月9日付けのヘルシンギン・サノマット誌 (Helsingin Sanomat)によると、アルヴァ・アールト設計の「フィンランディア・ホール (Finlandia talo 1971年完成)」の外壁、イタリア産カララ大理石が再び反る兆候を見せているという。
外壁は以前にも反り返り、1999年に300万ユーロ (約3億6000万円)の巨費を投じて全面的な張替えを行ったばかりであった。 現状はそう目立つものではないが、6年後には反り返ってしまうだろうと予測している。
興味深いことに、前回の張替え時には大理石はエッジから外側に反っていたが、今回はエッジ部分が内側に反り、中央部分が膨れてきてしまっている という。
この記事に接し、1999年、前回の外壁張替え時に丁度ヘルシンキに滞在し、補修工事を見たのを思い出した。
当時、張り替える外壁材の選択にあたって、市当局やムーセオヴィラスト(Museovirasto)を中心にアールトのオリジナルデザインを守るべきか、それともフィンランドの伝統的石材である花崗岩に変えるべきかの論争があったことを思い出す。
巨匠アールトのイタリアへの熱き思いとは裏腹に、やはり地中海の大理石は極寒のフィンランドの気候には耐えられないのであろうか?
この出来事は、建築の風土と素材の選択という問題を我々にも提起している。
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反ってしまった外壁大理石
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1999年にヘルシンキの工事現場で拾った大理石の破片。
右側が補修以前のもの(厚さ30mm)左側が新たに張ったもの(厚さ約50mm)。
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前回の外壁大理石張替え工事の様子
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破損してしまった外壁大理石
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反ってしまった外壁大理石
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何年か前、設計した建物の内・外壁に採用を検討した大理石のパネル見本。
アルミのハニカムコアに大理石を貼り付けたもの。
恐らく、フィンランディア・ホールでも、この種の工業製品の採用も検討したのだろうと思う。 厚手の大理石が反ってしまう対策として一つの解決策になると思うのだが・・・?
パネルは、関が原石材株式会社の「薄切り石材複合パネル アックラム( ACKLAM )」
【写真・撮影】 管理人