みなさんあけましておめでとうございます。日本の正月はいいなあ、と思いつつ、この寒さに「もう冬には帰ってきたくない」とも思う平野です。
前回に引き続き、児童労働・児童買春に取り組む大学生のグループ「サンピッコロ・プロジェクト」のみなさんからの質問と、それに対する平野の回答をご紹介させていただきます。サンピッコロ・プロジェクトは、立命館アジア太平洋大学のサークルで、愛地球博にも出展しています。
HP http://www.apu.ac.jp/circle/sunpro/
ブログ http://spp2005.exblog.jp/
【質問3:子どもが働くのやむをえない?】
③カンボジアでは色々家庭の事情や、生活環境(経済的な)などから売買春が盛んに行われていると学んだのですが、「家庭や経済的な事情ならしょうがないじゃないか」という友達の意見がありました。でもしょうがないじゃ済まされないですよね。売買春の他に、生計を立てられるような、子供でも働いていけるような仕事は無いんでしょうか?
(平野)
基本的な人権を踏みにじる行為に対し、それを肯定するいかなる理由も存在しえません。踏みにじられるのは「子ども」の人権であり、「家庭や経済的な事情」は主に「おとな」のものですね。
そもそも、子どもが働くということは、奨励されるものではありません。子ども買春は「最悪の形態の児童労働」ですが、「児童労働」そのものが、撲滅されるべきものなのです。(子どもの心身の発達を阻害しない範囲内の労働や手伝いは、“child work”として区別されます)。「売春よりもまし」という文脈であえて言うのであれば、ゴミを拾っている子や、花を売る子、工事現場で働く子、本を売る子、靴磨きをする子、そして物乞いをする子、などが都市部ではよく見かけられます。しかし多くが子ども達を学校から遠ざけ、子ども達の健康を害するものです。
農村について言うと、牛の世話などが子どもの仕事なのは一般的ですし、学校に行ったうえでそのようにできる範囲で子どもが家の手伝いをすることは問題視されません。ただ農村で食べていけないので、町に出ざるを得なくなったとき、教育もなく手に職もなければ、結局騙されて買春宿に、というパターンが待っていることが多いのです。ですから、前述のHCCなども、性的搾取の被害者だけでなく、そうなってしまう危険がありそうな貧困家庭の子ども達もシェルターに集め、職業訓練をしています。
【質問4:経済発展と売買春】
④前の質問にも関係するのですが、やはり売買春が盛んな原因の一つに、カンボジア全体の経済的な面(国際的な)もかなり影響していると思うのですが、平野さんはどう思われま すか?もしそれが大きく影響しているのならば、経済が改善されない限りカンボジアの売春は減らないのでしょうか?
(平野)
カンボジアで必ずしも売買春が他の国よりも盛んだとは思いません。日本の性産業の爛熟振りを見てください。日本は世界最大級の人身売買の受け入れ国です。フィリピン、タイ、最近は旧東欧諸国からも多くの人が売られてきています。経済が発展することで、送り出し国から受け入れ国になることはあると思います、日本のように。しかし売買春そのものを減らすことと経済発展はイコールではないと思います。
【質問5:カンボジアの政府の対応】
⑤カンボジア政府の売買春という問題に対する対応はどうなっているのですか?カンボジアでは買春は問題視されていて、きちんとした教育はなされているのですか?
(平野)
政府には内務省管轄でカンボジア警察内に人身売買・未成年保護対策部門などの特殊部隊もあり、もちろん全く取り組んでいないわけではありません。また子どもの買春、人身売買が多く、問題になっているという意味では、子どもたちは日本の子どもたちよりも早くから「買春」といった言葉に触れ、問題を認識する機会があると言えると思います。
ただ問題なのは法整備と、法の執行力です。現行の人身売買禁止法は欠陥が多く、さらに警官は簡単に賄賂で転ぶので、その現行法すらきちんと執行されません。警官の奥さんが買春宿の奥さんであるというケースもあると聞きます。また、政界の内部、それもかなりアンタッチャブルな上層部に人身売買で利益を得ている人物がいると言われ、事実昨年あるホテルで大掛かりな買春宿摘発があったときも、解放された少女たちは武装したグループに奪い返され、一度逮捕されたホテルの経営者なども、うやむやのままに釈放されました。
以上第2回でした。いかがでしょうか、もし私が日本にいて児童買春や児童労働の問題に関心を持ったら、と仮定すると、同じような疑問を持ったのではないか、と思います。みなさんにも参考になっていると幸いです。
※写真は最後に触れている問題のホテルです。
子どもの人権が踏みにじられないカンボジアを作るために↓
http://jicrc.org/pc/member/index.html
前回に引き続き、児童労働・児童買春に取り組む大学生のグループ「サンピッコロ・プロジェクト」のみなさんからの質問と、それに対する平野の回答をご紹介させていただきます。サンピッコロ・プロジェクトは、立命館アジア太平洋大学のサークルで、愛地球博にも出展しています。
HP http://www.apu.ac.jp/circle/sunpro/
ブログ http://spp2005.exblog.jp/
【質問3:子どもが働くのやむをえない?】
③カンボジアでは色々家庭の事情や、生活環境(経済的な)などから売買春が盛んに行われていると学んだのですが、「家庭や経済的な事情ならしょうがないじゃないか」という友達の意見がありました。でもしょうがないじゃ済まされないですよね。売買春の他に、生計を立てられるような、子供でも働いていけるような仕事は無いんでしょうか?
(平野)
基本的な人権を踏みにじる行為に対し、それを肯定するいかなる理由も存在しえません。踏みにじられるのは「子ども」の人権であり、「家庭や経済的な事情」は主に「おとな」のものですね。
そもそも、子どもが働くということは、奨励されるものではありません。子ども買春は「最悪の形態の児童労働」ですが、「児童労働」そのものが、撲滅されるべきものなのです。(子どもの心身の発達を阻害しない範囲内の労働や手伝いは、“child work”として区別されます)。「売春よりもまし」という文脈であえて言うのであれば、ゴミを拾っている子や、花を売る子、工事現場で働く子、本を売る子、靴磨きをする子、そして物乞いをする子、などが都市部ではよく見かけられます。しかし多くが子ども達を学校から遠ざけ、子ども達の健康を害するものです。
農村について言うと、牛の世話などが子どもの仕事なのは一般的ですし、学校に行ったうえでそのようにできる範囲で子どもが家の手伝いをすることは問題視されません。ただ農村で食べていけないので、町に出ざるを得なくなったとき、教育もなく手に職もなければ、結局騙されて買春宿に、というパターンが待っていることが多いのです。ですから、前述のHCCなども、性的搾取の被害者だけでなく、そうなってしまう危険がありそうな貧困家庭の子ども達もシェルターに集め、職業訓練をしています。
【質問4:経済発展と売買春】
④前の質問にも関係するのですが、やはり売買春が盛んな原因の一つに、カンボジア全体の経済的な面(国際的な)もかなり影響していると思うのですが、平野さんはどう思われま すか?もしそれが大きく影響しているのならば、経済が改善されない限りカンボジアの売春は減らないのでしょうか?
(平野)
カンボジアで必ずしも売買春が他の国よりも盛んだとは思いません。日本の性産業の爛熟振りを見てください。日本は世界最大級の人身売買の受け入れ国です。フィリピン、タイ、最近は旧東欧諸国からも多くの人が売られてきています。経済が発展することで、送り出し国から受け入れ国になることはあると思います、日本のように。しかし売買春そのものを減らすことと経済発展はイコールではないと思います。
【質問5:カンボジアの政府の対応】
⑤カンボジア政府の売買春という問題に対する対応はどうなっているのですか?カンボジアでは買春は問題視されていて、きちんとした教育はなされているのですか?
(平野)
政府には内務省管轄でカンボジア警察内に人身売買・未成年保護対策部門などの特殊部隊もあり、もちろん全く取り組んでいないわけではありません。また子どもの買春、人身売買が多く、問題になっているという意味では、子どもたちは日本の子どもたちよりも早くから「買春」といった言葉に触れ、問題を認識する機会があると言えると思います。
ただ問題なのは法整備と、法の執行力です。現行の人身売買禁止法は欠陥が多く、さらに警官は簡単に賄賂で転ぶので、その現行法すらきちんと執行されません。警官の奥さんが買春宿の奥さんであるというケースもあると聞きます。また、政界の内部、それもかなりアンタッチャブルな上層部に人身売買で利益を得ている人物がいると言われ、事実昨年あるホテルで大掛かりな買春宿摘発があったときも、解放された少女たちは武装したグループに奪い返され、一度逮捕されたホテルの経営者なども、うやむやのままに釈放されました。
以上第2回でした。いかがでしょうか、もし私が日本にいて児童買春や児童労働の問題に関心を持ったら、と仮定すると、同じような疑問を持ったのではないか、と思います。みなさんにも参考になっていると幸いです。
※写真は最後に触れている問題のホテルです。
子どもの人権が踏みにじられないカンボジアを作るために↓
http://jicrc.org/pc/member/index.html