カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

村の子どもたちの夢

2006年01月27日 10時54分35秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、平野です。
今日は、以前村で行ったワークショップから、子どもたちが将来の夢として挙げた職業についてご紹介したいと思います。国際子ども権利センターが現地NGOであるHCCと連携して支援してるプレイベン州コムチャイミア郡の子どもたちです。

【色々な進路があるはずだよ・・・】

HCCスタッフが子どもたちを集め、その中の一人の子を選んで質問する形をとって、子どもたちに将来の夢・職業について話すこのワークショップ、最初は13歳の小学校4年生、アイ・スライトーイさんに質問しました。

「学校を出たら何をしたい?」 「縫製工場で働きたい」

いきなり出てしまいました、縫製工場。人身売買業者の騙しの手口の基本パターンとも言えるのが「縫製工場の仕事があるよ」なのですが、それはすなわちそれだけ人気があるから。そして村の子どもたちは職業と言われてもあまり浮かぶものがなく、縫製工場が真っ先に出てくるのは無理からぬことなのかも知れません。

ここでHCCスタッフが「他にもあるんじゃないかな?」と促してあれこれと検討。若干スタッフの主導の感はありましたが、

・NGOのスタッフ ・お医者さん ・学校の先生 ・村長 ・通訳
・出納係 ・パイロット

と、子どもらしい夢が出揃ったところで再度将来の夢を質問すると、「先生がいい」とのことでした。

【家族と一緒】

そして、「村でできる仕事」として学校の先生、「村の外でやる仕事」としてお医者さんを選び、スライトーイさん以外の子どもたちも含めて、意見交換。その結果はこのようになりました。

(先生の良い点)             (難しい点)
家族と一緒にいられる           休みが少ない
農業を手伝える              校長や教育局から怒られるかも
収入がある 
子どもを教えることができる              
危険じゃない
HIVや性感染症になる危険がない 
教育があるので騙されない

なかなか的を射た項目が並んでいるのではないでしょうか。中でも印象的なのは、農業を手伝える、ということも含め、家族と一緒にいられることを大変重視している点でしょうか。別の機会でしたが、お医者さんになれば家やバイクや家畜や灌漑ポンプが買える、と発言した子どももおり、物質的貧困を認識するとともに、家族重視のカンボジア人らしさを感じました。

またもう一点、HIVのことや騙されないことが挙がっている点も興味深いと言えるでしょう。これらは教師という職業の特徴というわけではありませんが、村でできる仕事→人身売買や性的搾取の危険が少ない、という発想から来ているものと思われ、この地区での意識啓発活動の成果がうかがえます。

【ねたまれるのが恐い??】

(お医者さんの良い点)          (難しい点)
人を救える                患者が死ぬかもしれない
家族を治療できる             語学ができないと薬がわからない
充分な収入                競争から他の医者に殺されるかも
尊敬される                うまく治せないかも 

こちらもなるほどと思わせる回答が続いていますが、“あまり繁盛すると他の医者に妬まれて殺されてしまうかも”という心配にはちょっとビックリ。俗に「アジア的」といわれるこういった観念が、子どもの口にのぼるほど強く存在しているのかと印象に残りました。ちなみにそれに対する“解決策”は、「他の医者と患者をシェアする」でした。

また、語学ができないと薬を間違えてしまう、という懸念も、日本産の薬に親しんでいる日本人にとっては、あまり心配する必要のないことでしょう。薬といえば外国産であるカンボジアでは、誤用誤飲の危険は現実のものであり、私自身、腹痛に耐えかねてベトナム産の農薬を飲んで亡くなってしまった村人の例を聞いたことがあります。

写真は質問に答えてくれた子どもとその友だちです。村で働くにせよ、村を出て働くにせよ、まずは「将来の夢は?」と聞かれたときに、様々な選択肢が挙がるようになってほしいと思います。そのためには、子どもたちのお手本になる若者が一人でも二人でも現れるよう、地道に支援していかねばなりません。

子どもたちの夢を支えてください ↓

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