仲良しグループの中に、1人復讐を誓う人物が紛れている。
その人物が復讐を実行の舞台にしようとしたのが、熊本の天草方面の離島へのグループ旅行。
離島はコテージがあるが、電気がない、電話も公衆電話のみの無人島。
しかし、その復讐を決意した旅行で別の人間による殺人事件が起きる。
という、クローズドサークルのミステリーです。
作者は最年少で江戸川乱歩賞を受賞した先生。
正直、驚いたのは、私よりも1回り以上歳下なのに、私よりも世間を知ってないか?と思うところがちらほらとあります。
私は、まず読んでいて思ったのは、「人を殺す、まして復讐っていうには動機が弱すぎじゃないか?」なんですが、最後まで読むと、確かに、こういう動機でも殺人を犯す人は犯すよな、というか、大体立派な動機なんてほとんどないよな?と思うくらい、私はこの作品はホワイダニット部分が現実的だなと思いました。
確かに、某有名アニメーション会社の放火殺人事件は
「作品をパクられた」
っていう一方的で考えられないものだったよなと思いますし、ニュースで報道されてる殺人事件だって、こんな理由で本当に人を殺めるの?って思うし、納得してしまった私がいるなと思いました。
こういう風に思えるくらいのミステリーで、謎解き部分も面白かったし、1冊読み切るのが惜しいくらいゆっくりと堪能できた1冊でした。
また、復讐を誓って仲良しグループに近づいたはずの人物が、グループに近づいて仲良くなるにつれて、情が湧くっていうのもきっとそういうもんなんだろうなと思いますし、実は悪さをしたという人間の一面だけしか見ていないという私自身にも気が付かされた作品でもあります。
どんな凶悪犯でも人間なんですから、優しい一面や良い一面があるはずで、そういうことは付き合ってみるまで気が付かないもの。
でも、そういう一面を見てしまって、その部分に気がついてしまうと、復讐の動機が弱くなれば弱くなるほど躊躇いが出るし、復讐の動機が強くても、人間らしさに触れてしまうとなかなか踏み切れない、それが復讐殺人というものなのかなと改めて思いました。
ネタバレなしで語るには難しいのでここまででご容赦いただきたいですが、本当に読んでいてゆっくりじっくりと読みたくなる作品でした。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
読んでいてミステリーも面白かったのですが、こんな理由でも人を殺めることって確かに世の中あふれているなと思いました。
まだまだ若い作家さんが書いたというのも凄いなと思えた作品です。