Qは天才だ。
彼のダンスは、彼のダンスを見たもの全てを魅了する、まさしく神として崇めるほどの存在。
本作品はそんなQのために活動し、Qに翻弄される人々を描いたミステリー作品、だと思います。
この作品を紹介するのは正直かなり難しいなぁと思うのと、感想書くのも難しいなと感じている作品。
まず、ヒロイン(というと怒られるかもしれませんが、性別上)、町谷亜八がトランスジェンダー?と思わせる登場人物で、生まれ、育ち、境遇などなかなかアウトローな世界を見せつけてきます。こちらはQの義姉でQに1番近い存在でもあるのにQから徐々に離れていく側。
そして、男性一人称で語られる本庄健幹はパートナーがヒロイン亜八とQの義理の姉である睦深であり、はじめはQ自体とも関わりすらない人物ですが、ある意味、Qの1番近しい人物になる、まさに外から内に近づいていくという側となります。
その、Qを離れて見守っていく側、Qに近づいて見守る側が交錯していくQプロジェクト、これが本作品で描かれているものなんじゃないかと思っています。
本作品の時期はコロナ直前から直後(2021年オリンピック前まで)で、作家先生達、コロナの時期を舞台にした作品、今のうちに書いて残しておきたいのかなと思うほどには、本作もその頃の時期に起こったこともしっかりと書かれています。
そんなコロナ禍で行われるQプロジェクトによるゲリラライブ。果たしてQは神となることができるのか?
たくさんの思惑を背負ってQは踊ります。
そんな本作品でまず思ったのは、コロナ初期って本当に異常だったなと思います。
当時の感覚は、コロナという謎の感染症があり、死者まで出るという状況で、コロナにかかると感染した人が所属している会社は取引がなくなったり、感染した人の家の周りは慌てふためき、田舎で初めて感染者を出した家は村八分状態、マスクは品切れ、1世帯に2つのマスクは配られ、移動制限のせいでインバウンドが崩壊し多くの失業者、休業者を出したなど、まさに世界は変わりました。
しかし、あれから3年経過した今、そういう状況を読んでみると、異常としか思えないなと思える状態だったなと思います。
でも、私達は、当時はそれが普通だと思っていたし、マスクを求めて朝から入荷されるかどうかわからないドラッグストアに長蛇の列を常識のために並びました。
そういうことがたった3年前のことなのに、それを異常な世界だと思う私がいる。
そして、そういう異常だと思う感覚は実はあとから安全な状況になったらついてくるもので、実は問題に直面している時はそんなことは微塵も思わない、むしろ普通でマトモなことをやっているんだという感覚なんだということを登場人物達を通じて感じました。
そう、実は物凄くアウトローで自分の中で普通じゃない世界が本作品で描かれているように思うのですが、実は当事者たちにとってはその時その時は普通のことをやっている、これが、本作を読む時のキーワードなんだろうなと思いました。
こういうことを感じる作品、今年はよく読むなぁと思いながら。
そして、その異様な状況や不安の中でこそ生まれるバイブルや信仰の対象になるもの。当時はそういう希望になるものを探していたのかもしれないなと思いました。
そんないろいろなものを背負っていたかもしれないQプロジェクト。本作品の残り100ページは圧倒され、私の頭の中にもQが見えました。
頭の中に描くQこそ、実はあなたのアンサーなのかもしれない。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
アウトローな世界かと思いいろいろ気持ち悪い描写に変な登場人物もちらほらと出てくる作品。
なんて異常な世界、私には関係ない世界だなと思ったら、よくよく考えれば、私たちも異常な世界を経験したじゃない?コロナ禍という異常な世界を。
そんな異常な世界には救世主も必要だということなのかな?
と思う、そんなアンサーを受け取った作品でございます。