『菅原拓は悪魔です』
遺言を残して自殺した男子中学生のK。
なぜ、彼は自殺してしまったのか。
そして、悪魔と呼ばれた菅原拓。
人間力テストなるものがあり、そのテストで学年1位のKを含む上位4人の生徒をイジメたとされる人間力テスト学年最下位の菅原拓が起こそうとしている革命とは?
8年前の電撃大賞作品の『ただ、それだけでよかったんです』の完全版が幕を開ける。
私は、8年前に本作が発売された時に読みましたが、それ以来の再読でございます。
8年前に本作を読んだことを思い出しても、かなりの部分を忘れているなと思いましたが、最後など大まかなことは覚えてはいました。
また、本作品を読んでいる途中で8年前に書いた私の本作品の感想は中途半端だし、決してハッピーエンドではないけど、引き込まれて面白いという感想を抱いたらしい。
そして、今回読んでみて思ったのは、そういう中途半端さは解消されていると思います。
おそらくですが、大賞受賞時は電撃のライトノベルレーベルだからか、本作品に恋愛要素が中途半端に入っていた印象なのですが、それをあんまり感じないところが1つのポイントなのかな?と思いました。
その分、男子中学生Kの自殺部分をより深く掘り下げており、Kの自殺の目的がより明確になったなと感じました。
また、読んでいて、
「もしかして、この作品の元は夏目漱石よ『こころ』もあってのではないか?」
と思うほどに、Kの自殺はいろいろな解釈もできるものになっていると思いました。
前回読んだ時は、そんなこと微塵も思わなかったので、8年経って読書に対する私の感性が鋭くなったのか、今回の完全版にあたり加筆修正されたからかはわからないですが、Kの行動、Kの自殺の意味を考えさせられる内容になっていたのだなと思いました。
そんな本作品、なんで今になって【完全版】を出版したのだろう?と思ったのですが、なるほど、本作品の元々の話こそ8年前も今も変わらない、いや今だからこそより深く理解できる作品だったんだなと思いました。
スクールカースト
それをわかりやすくしたのが人間テストなのですが、これは要するに人気投票みたいなもの。
つまり、上位になればなるほど学年、クラスの人気者ということになります。
皆、できる限り上位になりたい。
なぜなら、上位であるということで、クラスでイジメられることなく過ごせるから。
変なシステムだなと思うかもしれませんが、私だってそうでした。
イジメで自殺する子がニュースに取り上げられ出した頃、学校のクラス内でイジメられるというのは嫌だから、クラスの爪弾きにされないように、同じ教室内で他の人の顔色を伺いながら毎日過ごしていたという面は否定できないなと思いました。
そして、いわゆるクラスで浮かないためには多少自分を殺してでも、他人の顔色を伺わないといけない。
そういう世界が教室内にあったのも確かだし、今もあるんじゃないかな?と思います。
他人の顔色を伺うために自分を多少殺す必要もあるし、多少スクールカーストを上げるために何らかの特技も身に着けないといけない(最近の場合はSNSでバズるとか。スシローの醤油ペロペロもそういう仲間内の悪ふざけや仲間内での承認欲求から行われたものだと思います)。
そして、仲間はずれになった教室内の同級生を誰かがイジメたら黙認もしくは自分が仲間はずれにならないためにそのイジメに加わらないといけない。
そんな暗い教室の一面を利用したミステリーでもあり、ライトノベルでもある作品だと8年ぶりに再読して思いました。
今だからこそ刺さる完全版
ただ、それだけでは良くなかった…
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
8年前に電撃大賞時のを読んで以来でしたが、ところどころ変わったというよりも、別作品なんじゃないか?と思うくらいに良い意味で読んだ時の感じと違っていました。
今だからこその作品ですよねと、読後からそこそこ経過した今でも思います。