夜から朝方にかけて営業しているカフェ、ポラリス。
察しが良すぎる店主の朱里が、今日もお腹を空かせて悩めるお客たちを料理と明るいトークで癒します。
ポラリスに深夜に訪ねてくる客達の短編集なのですが、基本的にはお店を訪ねたきっかけはあるものの、ポラリスというお店の中だけで全てが完結していくお話。
悩める客達の後日談もすべてはお店の中で語られます。
そして、本作品の素敵なところは、忙しかったり、悩ましいときほど、実はまともなご飯を食べることがないなと気が付されました。
忙しかったらついついコンビニなどの冷たいご飯で済ませてしまいがちな私達。
忙しさにかまかけて、手作りで自分のために作ってくれるご飯の本当の温かさを忘れがちになります。
本作品に登場する悩めるポラリスの客たちも大体そんな感じで、手作りの料理をくだらない会話をしながら食べることを忘れがちな人々ばかりです。
そして、本作を読んでいてふと思います。
実は、私も、ポラリスを訪れる客のように温かい料理を味わったり、くだらない会話をしながら楽しく食事をとることを忘れていたということを。
ポラリスに持ち込まれる悩みは実は、過去に私が悩んだことだったことかもしれませんし、未来に持つ悩みかもしれない。
でも、そういう悩みをアカの他人に話してみたら楽になるかもしれないし、何か糸口はみえるかもしれない。
そして、そこにゆっくりと味わえるご飯があれば最高ですよね。
悩み過ぎる割に、食事を楽しくゆっくりと味わうということをどこか忘れがちな私にとって、ポラリスはまさに北極星らしく、道標になるようなそんな作品なんだなと思いました。
そして、道標になるはずの北極星も実はちょっと動いている。
つまりプレないことなんてないし、ブレるからこそ人間味がある。
完璧じゃないことこそが人だし、欠点もその人の味になる。
どこかで聞いたことのあることかもしれませんが、そのどこかで聞いたことが、楽しさでもあるということを感じた作品です。
ポラリスはきっと今日も朱里さんが楽しそうに営業しているんだろうなと思いながら。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
お腹と心が満たされる不思議なカフェ・ポラリス。
店主の名前も朱里(アカリ)さんというまた、いかにも北極星にぴったりな名前も良いなと思います。
そして、何より、自分のためにつくってくれるあたたかなごはん。
どんな高級料理店でも味わえない料理と忌憚のないおもてなしがそこにある。
私もポラリスに行きたいです。