徒然なるまま読書感想ブログ

日々読んだ本の感想ブログです。小説、ビジネス書、ライトノベルなど通勤中、休日に読んだ本の感想を自由に書いていきます。

あの日 (小保方 晴子)  感想

2016-02-17 23:24:02 | その他
あの日
小保方晴子
講談社



こうして私の研究者の道は幕を閉じた。

 2016年の2月現在で話題になっている書籍です。


 正直、読んだ感想を書こうかどうかは悩みましたが、STAP騒動にはいろいろな意味で興味があったので、どうしても自分なりの感想を述べて、発信してみたいという気持ちが抑えられませんでした。


 ただ、本書は私の私的な感想を述べるのみで、STAP騒動の真相を具体的かつ本格的に検証してみようと試みるわけではありません(誰がやっても再現できなかったので、私自身はSTAP細胞はないと思っています)。


 そんなわけで、早速書いてみたいと思います。



①本書に興味を持った動機など

 STAP細胞の存在が危ぶまれていた当時、マスコミが取り上ることが多かったというのもありますが、理研や若山先生は露出が多くて主張をしていたように見えましたが、渦中の人物である小保方さんの主張は会見の1回のみだったと思います。


 そこで、真に渦中の小保方さんは実際に、当時、この騒動をどう考えいたのか、彼女自身の主張に興味があったので読みたいなと思いました。


 また、その主張に関連して、STAPは本当にあるのか、ねつ造認定された画像やES細胞の混入などそれらについて反論などが根拠あるエビデンスに基づいてされているのか、それを知りたいと思いました。


 さらに、究極的には、世紀の大発見をしたとニュースで流れた時に私と同じくらいの年齢で、凄い人が出てきたものだなと思い誇らしく思った彼女がどんな人なのか知りたいというものもありました。



 STAP細胞を発表した当時の小保方さんの研究についてたくさんの批判があり、その批判に耐えながら自分の信念を曲げずに貫き通して大きなことを成し遂げたエピソードなどを聞いていると、夢を簡単にあきらめてしまった自分が情けなくなったと同時に小保方さんを誇らしく思ったこともあります。


 しかし、STAPに疑義が生じて、様々なことがあり、最後はねつ造認定されてしまいましたが、本当にマスコミで取り上げられたような、実はとんでもないような人物なのかそれを確認したかったというのが主な動機です。



②読者の素性


 小保方さんの『あの日』について感想を述べる前に、感想を述べる読者である私の素性を簡単に説明しておこうと思います。


 なぜなら、本書には小保方さんがSTAPにたどり着くまでのエピソードなどが語られてはいますが、かなり専門的なことが書かれているからです。私もi-PS細胞が話題になった時に多少は再生医療について調べたり、ES細胞とi-PS細胞の違いなどを調べたり関連した書籍を読んだりしましたが、それでも何を書いているのかよくわからないことがあります。


 私自身は大学の専攻は文科系の方なので、専門的すぎることは何を書いているかわかりません。それは、理研の最終調査報告を読んだ時も同じです。



 さらに、私は文科系ではありますが、一応、修士号を取得しております。


 修士号を取得していることを自慢しているわけではないのですが、論文の書き方、教授からの指導、論文の提出、論文審査などなど私が修士時代に経験したことから、私なりの小保方さんの博士課程についての記述を考察できるのではないかと考えております。


 また、私なりにSTAP騒動はテレビや新聞などを読んで気になる点などはありましたが、基本的に得た情報はあくまでマスコミが報じた程度のことしか知りません。その後いろいろな書籍はでているように思いますが、それらも一切読んでいません。


 STAP騒動で私が調べて読んだものは理研が公表した最終報告書のみです。


 この本の感想を書いている読者は以上のような者です。



③感想みたいなもの


・博士課程のコピペ問題、STAPねつ造問題については全く触れるところがない


 博士課程における論文のコピペについては、最終稿を間違えて印刷し提出してしまったというような旨の記述はありましたが、なぜ、作成段階から導入部分を参考文献までコピペしてしまったのかは全く触れらていません。


 修士論文を書いていたときに、私も小保方さんと同様に、修士論文提出日ぎりぎりまで論文を作成していた経験があるので気持ちはよくわかりますし、実際に1次原稿、2次原稿、3次原稿と加筆・修正したものを残していきながら指導教授とああだこうだといいつつ作成していたのを思い出します。


 しかし、データで作成している上、うっかり者の私でもそういうごちゃごちゃとしたものを間違えないように題名とフォルダを分けたりして最終稿は区別していました。間違えて違うものをコピーしてしまう時点で正直おかしいことです。


 ただ、さらにおかしいのは導入部分を「参考文献ごと」コピーしてしまうことです。


 英語で記述しなければならないという事情を考慮しても、文章が思いつかなく、自分の結論とは関係のない部分をとりあえず体裁を整えるために誰かの文章を借りて一時的に埋めておくということはありえても、参考文献までコピペしておくのはどうかと思いました。


 畑違いとはいえ修士論文ですらそういうことは普通しないので、まして博士論文でこういうことをしているということは確信犯だなと思いました。



 ただ、この点は私の勝手な推測ですが、小保方さんがぎりぎりまで論文を作成していたということから、論文指導教授から導入部分については結論と関係がないところだったため、その部分をコピペをすることについて黙認されていたのではないかと思ってはいます。


 
 STAP論文のねつ造については、故意、過失は別として、画像の加工やデータにおいてねつ造が見られるというのが最終的な理研の調査結果だったと思います。また、疑義はあるが、小保方さんからオリジナルのデータや画像が提供されなかったため、結果的にねつ造判定ができなかったというものもあったように思います。


 しかし、それらのねつ造判定された部分について、小保方さん自身がオリジナルの画像を本書に貼り付けて反論することもないという点が気になりました。ねつ造認定された部分については全く何も触れていないので、それは逆に認めちゃうの?と思いました。


 また、誰が混入させたのかが全く分からないという判定になった「ES細胞混入」については延々と若山先生犯人説を書き連ねており、そこももちろん聞きたいところではありますが、それ以上に前述した部分に触れていないので、STAP論文への不信感と小保方さんに対する不信感を抱く結果になってしまいました。


・「ES細胞混入について」若山教授黒幕説を述べるも…


 再生医療について山中教授に一歩先を越された感があり、理研及び若山教授、笹井教授などに焦りがあったというのは、当時の私も感じており、STAP自体勇み足だったのではないかと思っていたので、小保方さんが主張するように若山教授がいろいろと怪しいといえば怪しいと思います。


 それに、私も当時、小保方さんや笹井先生の理研サイドのみが責任をとり、若山さんだけがテレビで主張しまくって責任をとらず、騒動後には宇宙マウスまで発表してしまうんですから、どういう神経しているのか?と思ったものです。


 しかし、小保方さんの主張する若山先生黒幕説が仮に本当だとして、当時の理研が元理研とはいえ若山先生を追及していかなかったのかがわからないですし、小保方さんの言ってるような若山先生からの騒動当時のメールもひどいものなら、共著者の誰も公表しなかったのか(小保方さんが言うには共著者全員にメールをしていたようですが…)謎となります。


 そもそも、そういうメールが来た時に弁護士さんたちと相談したり、メールを保存したりしなかったのか…小保方さんの主張が本当なら若山さんをかばう理由、もしくは早期解決の必要があったということになりますが、根拠となる証拠物がないのでなんとも言えないのが本音です。せめて、メールの原文の一部を公表してくれればよいのですが…これからの、争いがあると想定した場合、そういうものは持っていても出せないということなのでしょうか?



・マスコミの凄さ(ひどさ)と研究への気持ちは伝わってくるものの…


 本書を読んで、特に小保方さんの気持ちがこもっているなと思った箇所は、研究への熱意とマスコミへの恐怖でした。


 OCT4細胞(STAPの原型となる陽性細胞?)を発見した時の感動や、研究について語る部分は(専門的なことはわかりませんが)本当に研究を楽しんでいたのだなと思わされました。


 研究ノートはつけられないし、いい加減な論文は書くもののできないだけで色気だけの人がバカンティ先生のところや理研で研究員をするということはできないと思いますので、研究の熱心さが買われていたんだろうなと思いました。


 また、悪い意味でマスコミについて書かれている部分も生々しいのですが、こちらの方は、本当に同情しかできません。


 NHKの取材もそうですが、どんな事情はあれ、やって良いこと悪いことがあると思います。


 私も当時、テレビで見ていて、ノーベル賞級の発見と報道していたアナウンサーがES細胞、i-PS細胞、根幹細胞、万能細胞の意味も分からずとりあえず凄いみたいな報道をしていて笑ってしまいそうになったのですが、手のひら返しも凄かったなと思います。


 マスコミの取材攻勢のえげつなさは、いくらなんでもやり過ぎだと私も思いましたのでこればかりは読んでいて小保方さんが可哀想になりました。



 ただ、凄い楽しそうだったんだなぁと思う研究に対して純粋で熱心な小保方さん、マスコミに傷心していく小保方さんという人間像を知ることはできましたが、研究者としては杜撰すぎる上、文章に説得力があまりないというのが残念だったなと思います。



④まとめみたいなもの


 以上のように本書で知ることができて良かったなと思った点は、研究に対しては純粋(にみえる)小保方さんを知ることができたことと、小保方さんの主張を知ることができたということでした。


 ただ、文章を読んでもそうですし、主張の組み立て方などはお世辞にも一流どころの研究者の一線で活躍していた方とは思えませんでした。


 この辺りはもしかすると現状の精神状態もあるのかもしれませんが…。



 また、ねつ造疑惑について小保方さんの反論らしい反論がなかったこと、有効な証拠があるように思えず、逆に、STAPなどの小保方さんが関わった論文について不信感が増してしまったのが残念です。


 ただ、小保方さんの言葉で主つづられた本を読んで考えるきっかけになったというのは良かったのではないかと思います。


 小保方さんがすべて真実を語っているのかは根拠に乏しいので私にはわかりませんが、読んで無駄だったなとは思わず、もしすべて本当なら小保方さんの汚名が晴れる日が来たらよいなと思える書籍でした。


 

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2 コメント

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研究者の誇大妄想・頑固な思い込み? (香菜子)
2016-08-13 16:54:45
香菜子と言います、あの日読みました。わたし、小保方さん研究者・研究職特有の頑固な思い込みの強さを感じました。もしかしたら、研究者・研究職としての誇大妄想や自信過剰・自意識過剰もあるのかもしれないです。でも、それくらい思い込みが強くて、誇大妄想や自信過剰・自意識過剰と思われるくらいのこだわりと自信、自己愛、自己主張の強さがないと、新しい発見は出来ないのではないかしらと感じます。香菜子
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Unknown (水口栄一)
2020-05-08 19:06:52
私は小保方晴子さんのあの日を繰り返し読ませて頂きました。ひじょうに衝撃的でした。あなたの仰るように小保方さんがすべて真実を語っておられるかはわからないと思います。けれども私は小保方晴子さんがこれからもうまくいくことをお祈りしています。
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