自燈明・法燈明の考察

生きる事は手段ではない

 昨年末に入院、手術を受けたことで、私の中の人生の価値観が変化してしまいました。私は過去に創価学会で活動をしていた事はこのブログにも書いていますが、若い頃は「我が使命に生きるんだ!」なんて眞面目に考えていました。

 しかし今ではこの「使命」なんて言葉は陳腐な感じがします。



 とかく若い世代は「この世界に何のために生まれてきたのか」という事を自問自答します。そして自分が何をしたいのか、何をやりたいのかを悩んだりするものです。そしてその延長線上にこの「使命」とやらの言葉が出てくるのです。

 「使命」とは「命を使う」と書きます。その意味は「この世界に生まれてきた自分の命を使う」という事ですが、そこには常に「何のために使うのか」という事が、常について回ります。若い時分の私は、これを「広宣流布」という目的の為に使うと信じてきました。広宣流布とは法華経薬王菩薩本事品で宿王華菩薩に対して釈迦が「後後の五百歳に法華経を広めよ」と言った言葉です。創価学会では、この法華経を広めるという事を「教団の教勢拡大」と読み変えて組織拡大に利用してきました。

 私は昨年の健康診断で「癌の疑い」を言われてから、「ここで下手すりゃ人生が終わるのか」という事を真剣に考え始めました。この世界から自分という存在が消えて無くなってしまう。それはどういう事なのか、頭では理解したつもりになっていましたが、現実問題としてその事を考えるという事に、初めて直面しました。

 そこで感じた事は、とても強い家族への執着でした。まだ独り立ちしていない二人の子供、もし私が病に倒れ、居なくなった際に家族にのしかかる大きな負担。これはどうにもなりません。だから病には倒れていられないから何とかしなければ。
 次に感じたのは「自分自身が消えてしまう」という、自己の根源からの恐怖心でした。様々な書籍で読み漁ってきた事で、これも頭では理解してはいたのですが、下手して病に倒れた後、これは確実に自分の上に降り掛かってくる出来事です。これは未知な事に対する恐怖心と言っても良いでしょう。

 こういった事が、専門病院を受診して、病状が明確になるまでの二ヶ月間、常に私の心の中を蠢いていました。

 検査の結果、そこまで重篤な事ではなく、初期段階であった事から命拾いをしたのですが、入院し手術が終わり、退院するまでの間は安心する事もできず、様々な事を考えさせられたのです。また癌であったので、これからは常に「再発のリスク」を意識しなければならないので、もう元の感覚での生活ではありません。

 思うに人生とは「この世界に生まれた使命」を求めるのではなく、「この世界に生まれでた事」自体が目的ではないかと思うのです。つまり「命」とは、何かを為すための手段ではなく、この世界に生まれた命そのものが目的なのではないかと言う事です。

 人生には様々な「差別」というのが存在します。それは生まれ出る時の性別から、身体機能、そして生まれ出る家庭によっても様々な差別があるのです。近年ではこの差別を忌避する向きもありますが、どうやってみてもこの世界に生まれてきた時点での差別は拭いきれません。人生とは開始時点から差別があり、それによってそこからの人生の生きやすさ、経済的な事や行動の自由には差が出てしまいます。そして生まれてから経験する事も、この生まれでた時点での差別によって変わってくるでしょう。

 この差別という事で、人生を生きていくと、様々な付加価値が付いてきます。ここであえて価値という言葉を使いますが、これはプラスとマイナス両面に渡ります。これはつまり人生において楽しく愉快な事ばかりではなく、むしろ辛く苦しい事も沢山あうという事です。
 そしてこの人生を終える時、この世界で獲得した物やお金、名誉や肩書は全て棄てて行かねばなりません。唯一持って「次に」持って行けるのは、経験という思い出(記憶)だけです。どんなにこの世界で成功して地位や名誉を獲得し、経済的にも裕福になったとしても、それらは全て棄てて行かなければならないのです。

 ここは全ての人に平等なのです。

 そうなると、この人生で何を獲得するとか、何を得るかという事よりも、どんな経験をして何を感じて生きてきたのか。そこを大事にすべきなんだと、私なんかは思い至ったわけです。そしてそれこそが、人生で一番価値ある事なのではないでしょうか。

 だから人生は生きる事自体が目的ではないのか。

 そんな事を考えていますが、皆さんはどう思いますか?


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