『陽だまりの彼女』映画レビュー 10月 22nd, 2013 @ 01:15 am › オライカート ライターショウコ ↓ Leave a comment
高校時代の先輩、ということはかなりのおばさ まの中に「松潤大好き」な人がいる。年上の女か ら見て妙にセクシーなタイプ、俗に言う“後家ご ろし”が彼女の好みなのだ、とわたしはずっと 思っていた。しかし『陽だまりの彼女』の松本潤 を見て認識をあらためた。いつしか年を重ねてい た彼は、恋に戸惑う男心を柔らかく繊細にしかも コミカルに表現できる、すっきりした感性と知性 の持ち主だとわかったからだ。自分の偏見が恥ず かしい。
越谷オサムのベストセラー小説の映画化。松本 潤演じる鈍感な男子、浩介の前に、中学時代に好 きだった女子、真緒(上野樹里)がキラキラ輝く 女性になって現れ、今も変わらぬ好意を伝える。 この再会に喜ぶ浩介に、真緒は「偶然なんてない よ」と意味深な言葉を囁くが、恋に舞い上がって しまった浩介の耳にはとどまらない。流麗な映 像、手の込んだ美術、こぎれいな衣装が調えられ て、この恋は理想的とも思える進展を見せる。
しかし上野樹里がこんな単純な恋物語のヒロイ ンだなんて、樹里ファン(わたしも)にとっては いささか退屈だろうなと思ううち、彼女の不自然 な動作が少しずつ露わになる。スタイルはいいが 姿勢がよくない、熱い飲みものが異様に苦手、む やみに運動神経がいい、水族館で魚を見て「おい しそう」と言う、などなど。
やがて枕に抜け毛がどっさり、という段になっ てからは浩介ばかりか観客も慌てることになる が、カンのいい映画ファンは気づくだろうし、そ もそも小説のファンは先刻ご承知のことである。 つまり彼女は人間の姿をした別の存在なのだ。 持って回った言い方をしているのは、映画の公開 前に製作サイドからこの秘密を伏せるように求め られたからであり、公開後であればなおさら、こ の一事は伏せて通そう、と意地っ張りなわたしは 思うからである。
率直に言うと、この映画の素晴らしさは真緒の 秘密を知ったときの驚きにあるのではない。そも そも大した驚きでもない。この映画の素晴らしさ は、彼女の秘密を知った時の浩介の無反応にこそ ある。つまり、彼にとっては彼女が人間であろう がほかの何ものであろうが、そんなことはどうで もいいのである。純真に真緒という女子を大切に し、彼女とずっと一緒に生きて行きたいと願って いる男子がそこにいるだけなのである。
そのなにげなさを松本潤は高い純度で演じたの であり、それがこの映画の品格になっている。映 画館で再見した際、行儀の悪い隣の幼いカップル が「あ~つまらなかった」と捨て台詞を残したの で、わたしは傷つき「しょせん、おまえらはせこ い恋愛しかできないぞ」と内心で毒づいた。
(内海陽子)
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一番、胸がすくレビューでした!!
ありがとうございます!!