■2003/11/21 (金) 唯一の?もて話(4)
ところがその後1ヶ月くらい何の音沙汰もない。
気にはなっていたが,仕事にも忙殺され何となく忘れがちになる。
ある日,中年の紳士が店に麿を訪ねてきた。
彼女の父親だと名乗る。
ちょっとドキッとするが,店を店員に任せて喫茶店に行く。
「娘が世話になっているそうで,,」
「いやいや,,」
世話になったとかそう言う事ではないだろうと思うが,口の中でモゴモゴ言うだけ。
「実は,娘が妊娠したとか言ったらしいですが,勘違いでした」
えーーっ!
一瞬,いろんな事が頭の中を駆け巡る。
どこかでホッとしながらも,勘違いではないだろう!あんにゃろう,うそをついたな!
その気持が不憫でもあり,同時に,腹立たしさも覚える。
「で,親としては娘が不憫で結婚してもらえれば一番有りがたいんだけど,でも娘が言うには,約束があるから,多分それはムリと言うので,ダメなら,もう会わないようにしてはもらえないか」
「ええ,そりゃ~もう。」
二股かけたとか,身体だけがお目当ての弄びではなかったなどの弁解が頭に浮かぶが,結婚が前提でない付合いは遊びと言われても抗弁のしようがないので,黙って頭を下げて別れる。
数日後,彼女から電話が来る。
最後にもう1回会えないかと。。
何回か食事した事の有る駅前のレストランバーみたいな店で待ち会わせる。
「よっ!」
出来るだけ普段通りを装って声をかける。
でも彼女の様子がおかしい。
妙に上体がフラフラしてるし,呂律もハッキリしない!
「どうした?気分でも悪いのか?」
「な~んでもないれすよ」
「何でもない事はないだろう」と言いかけて,フットと予感がする。
もしや?
嫌がる彼女のハンドバッグを強引に開ける。
ある!
半分以上,空っぽの睡眠薬の瓶が!
まずい!
早く病院に連れて行かなきゃーー!
でも,救急車は呼びたくない。
ほぼ,満席の客の好奇の視線を浴びるのはイヤだ。
こんな時でも,麿のズルサが顔をもたげる。
顔見知りの店長にハイヤーを呼んでくれるよう頼む。
運良くすぐ来てくれ,酔っ払った彼女を抱く振りで連れ出す。
近くの総合病院に運び込む。
手短に事情を話すと,
「すぐ,胃洗浄!」
医師と看護婦がテキパキ処置してくれる。
数10分後,
「大丈夫ですよ」
ホッ!
ではなかった!
■2003/11/24 (月) 唯一の?もて記憶?(5)
彼女の母親も駆けつけて,時が時だけに,挨拶もそこそこには良いんだが,
なんと!
オマワリも駆けつける!
それも,3人も!
よほど,事件,事故がなくて暇だったんだろうか。
救急車を呼んだわけでもないのに,どうやら,こう言う時は,病院から警察に連絡するらしい。
麿の方は簡単な事情説明で済んだが,母親は,なにやら,オマワリに怒られている。
どうやら,若い娘を1人住まいさせている事を,怒っているみたい。。
彼女がアパートに1人住まいって事は知っていたが,親の家が,割合,近くとは知らなかった。
母親は再婚で,今の父親と娘があまり反りが合わなくて,1人住まいになった事などを説明し,しきりに謝っている。
今なら,娘の1人暮らしくらいで,警察に文句を言われる事もないだろうが,
当時は,そんな社会風潮だったんだろう。
オマワリが帰り,その夜は,母親と2人,病院に泊まる事になる。
「娘が迷惑かけて,すみませんね」
「いや、いや,こちらこそ。こんな事になって申し訳ない」
やや,気まずい。
そのうち,さっき,帰ったオマワリの事が気になりだす。
こりゃー明日の新聞に載るかもしんないな。
そうなったら,店を辞めなきゃなんないかもな。
ま,それも止むを得んか。
ほとんど,一睡もせず朝を迎える。
病院から店に出る前に,新聞を3紙買う。
どうだ?
ドキドキしながら最初の新聞をめくる。
ない!
次は..?
ない!
結局,3紙ともない!
もう一度,ゆっくりと確認するが載ってない。
安堵しながらも,自分の肝っ玉のちっちゃさに苦笑い。
冷静に考えると,その辺の一般人の自殺未遂なんて記事になるわけがなかった。
それから,後,2日間は家にも帰らず,病院泊まり。
店と病院の往復。
そんなに入院してる必要もなかったみたいだが,病院も暇だったのか,それとも大事をとったのか。
母親は二日目から来ない。
冷たいとも思うが,ダンナに遠慮してるのかも。
二日目の夜,無意識に一度立ち上がる事はあったが,後は寝てるだけ。
昼間はどうしてるかわからない。
こちとら,付き添いベッドで熟睡できない。
フと気づく。
麿と会うことが判ってて,薬を飲んだって事は,本当に死ぬ気はなかったんだ!
コンニャロー!
それでも,哀れな気持と,腹立たしさが,交錯する。
■2003/11/25 (火) 唯一の?もて記憶?(6)
4日目に退院。
母親が迎えに来てタクシーで帰る。
麿は病院前で,そのまま見送る。
後部座席から,ずーーと彼女は振りかえって,麿を見詰めている。
麿も見えなくなるまで,目をそらさない。
やがて,角を曲がり,見えなくなる。
フーーとため息が出る。
ヤレヤレと言う気持と,何故か,一抹の淋しさも感じる。
もう,2度と会う事もないだろう。。
しばらくして,横浜店長から銀座店長に配属変えになる。
その頃の銀座の地盤低下はひどく,誰がやっても売上が伸びない。
「麿クンがやってもダメなら,銀座は閉めるかもしれない」
口説きにきた支配人が言う。
横浜は売れに売れている。
勿論,麿の力ではない!
イヤだ。
形の上では栄転でも銀座に行って苦労するのは目に見えている。
苦労や困難から逃げるのは,麿の特技だ。
当然,断る。
「そうか,麿クンが行ってくれれば,○○クンに横浜店長になってもらうつもりだったんだが.」
汚い!
それでは麿が○○の昇進を邪魔するみたいじゃないか!
結局,引き受ける。
麿も,結構,お人好し。ハハハ
やはり,銀座の売上は伸びない。
ふてくされて,社長が店に来ても,競馬新聞を読んでやる。
1年後くらいに,彼女の母親から電話が来る。
最初は誰か判らない。
聞くと,その後,彼女に縁談話を幾つももってきたが,まだ麿の事を忘れられないみたいで,全部,断るんだと言う。
だから,悪いけどもう一度会って,結婚の意思のない事を,ハッキリ伝えて欲しいと。。。
ヤだな~~。
今更何を。。
渋々ながら承諾し,有楽町の喫茶店で親子と会う。
懇々と麿がおそらく誰とも結婚しないだろうとの気持に変わりない事を伝える。
約束違反ではないので,彼女も最終的には認めざるを得ない。
それでも,別れ際に騙されたような事をボソッと言う。
勘弁してよ!
それから,2,3年後にまた彼女から電話が入る。
「どうした?」
「結婚したんですよ」
「そりゃ-良かった!」
「ん?今,酒を飲んでないか?」
「飲んでますよ~」
「亭主は大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ.亭主は私に惚れてるから..」
う~~~ん,なんだったんだ!
未遂事件以来,麿がしばらく女性恐怖症に陥ったのは!
その後,彼女からの連絡は一切ない。(了)
ところがその後1ヶ月くらい何の音沙汰もない。
気にはなっていたが,仕事にも忙殺され何となく忘れがちになる。
ある日,中年の紳士が店に麿を訪ねてきた。
彼女の父親だと名乗る。
ちょっとドキッとするが,店を店員に任せて喫茶店に行く。
「娘が世話になっているそうで,,」
「いやいや,,」
世話になったとかそう言う事ではないだろうと思うが,口の中でモゴモゴ言うだけ。
「実は,娘が妊娠したとか言ったらしいですが,勘違いでした」
えーーっ!
一瞬,いろんな事が頭の中を駆け巡る。
どこかでホッとしながらも,勘違いではないだろう!あんにゃろう,うそをついたな!
その気持が不憫でもあり,同時に,腹立たしさも覚える。
「で,親としては娘が不憫で結婚してもらえれば一番有りがたいんだけど,でも娘が言うには,約束があるから,多分それはムリと言うので,ダメなら,もう会わないようにしてはもらえないか」
「ええ,そりゃ~もう。」
二股かけたとか,身体だけがお目当ての弄びではなかったなどの弁解が頭に浮かぶが,結婚が前提でない付合いは遊びと言われても抗弁のしようがないので,黙って頭を下げて別れる。
数日後,彼女から電話が来る。
最後にもう1回会えないかと。。
何回か食事した事の有る駅前のレストランバーみたいな店で待ち会わせる。
「よっ!」
出来るだけ普段通りを装って声をかける。
でも彼女の様子がおかしい。
妙に上体がフラフラしてるし,呂律もハッキリしない!
「どうした?気分でも悪いのか?」
「な~んでもないれすよ」
「何でもない事はないだろう」と言いかけて,フットと予感がする。
もしや?
嫌がる彼女のハンドバッグを強引に開ける。
ある!
半分以上,空っぽの睡眠薬の瓶が!
まずい!
早く病院に連れて行かなきゃーー!
でも,救急車は呼びたくない。
ほぼ,満席の客の好奇の視線を浴びるのはイヤだ。
こんな時でも,麿のズルサが顔をもたげる。
顔見知りの店長にハイヤーを呼んでくれるよう頼む。
運良くすぐ来てくれ,酔っ払った彼女を抱く振りで連れ出す。
近くの総合病院に運び込む。
手短に事情を話すと,
「すぐ,胃洗浄!」
医師と看護婦がテキパキ処置してくれる。
数10分後,
「大丈夫ですよ」
ホッ!
ではなかった!
■2003/11/24 (月) 唯一の?もて記憶?(5)
彼女の母親も駆けつけて,時が時だけに,挨拶もそこそこには良いんだが,
なんと!
オマワリも駆けつける!
それも,3人も!
よほど,事件,事故がなくて暇だったんだろうか。
救急車を呼んだわけでもないのに,どうやら,こう言う時は,病院から警察に連絡するらしい。
麿の方は簡単な事情説明で済んだが,母親は,なにやら,オマワリに怒られている。
どうやら,若い娘を1人住まいさせている事を,怒っているみたい。。
彼女がアパートに1人住まいって事は知っていたが,親の家が,割合,近くとは知らなかった。
母親は再婚で,今の父親と娘があまり反りが合わなくて,1人住まいになった事などを説明し,しきりに謝っている。
今なら,娘の1人暮らしくらいで,警察に文句を言われる事もないだろうが,
当時は,そんな社会風潮だったんだろう。
オマワリが帰り,その夜は,母親と2人,病院に泊まる事になる。
「娘が迷惑かけて,すみませんね」
「いや、いや,こちらこそ。こんな事になって申し訳ない」
やや,気まずい。
そのうち,さっき,帰ったオマワリの事が気になりだす。
こりゃー明日の新聞に載るかもしんないな。
そうなったら,店を辞めなきゃなんないかもな。
ま,それも止むを得んか。
ほとんど,一睡もせず朝を迎える。
病院から店に出る前に,新聞を3紙買う。
どうだ?
ドキドキしながら最初の新聞をめくる。
ない!
次は..?
ない!
結局,3紙ともない!
もう一度,ゆっくりと確認するが載ってない。
安堵しながらも,自分の肝っ玉のちっちゃさに苦笑い。
冷静に考えると,その辺の一般人の自殺未遂なんて記事になるわけがなかった。
それから,後,2日間は家にも帰らず,病院泊まり。
店と病院の往復。
そんなに入院してる必要もなかったみたいだが,病院も暇だったのか,それとも大事をとったのか。
母親は二日目から来ない。
冷たいとも思うが,ダンナに遠慮してるのかも。
二日目の夜,無意識に一度立ち上がる事はあったが,後は寝てるだけ。
昼間はどうしてるかわからない。
こちとら,付き添いベッドで熟睡できない。
フと気づく。
麿と会うことが判ってて,薬を飲んだって事は,本当に死ぬ気はなかったんだ!
コンニャロー!
それでも,哀れな気持と,腹立たしさが,交錯する。
■2003/11/25 (火) 唯一の?もて記憶?(6)
4日目に退院。
母親が迎えに来てタクシーで帰る。
麿は病院前で,そのまま見送る。
後部座席から,ずーーと彼女は振りかえって,麿を見詰めている。
麿も見えなくなるまで,目をそらさない。
やがて,角を曲がり,見えなくなる。
フーーとため息が出る。
ヤレヤレと言う気持と,何故か,一抹の淋しさも感じる。
もう,2度と会う事もないだろう。。
しばらくして,横浜店長から銀座店長に配属変えになる。
その頃の銀座の地盤低下はひどく,誰がやっても売上が伸びない。
「麿クンがやってもダメなら,銀座は閉めるかもしれない」
口説きにきた支配人が言う。
横浜は売れに売れている。
勿論,麿の力ではない!
イヤだ。
形の上では栄転でも銀座に行って苦労するのは目に見えている。
苦労や困難から逃げるのは,麿の特技だ。
当然,断る。
「そうか,麿クンが行ってくれれば,○○クンに横浜店長になってもらうつもりだったんだが.」
汚い!
それでは麿が○○の昇進を邪魔するみたいじゃないか!
結局,引き受ける。
麿も,結構,お人好し。ハハハ
やはり,銀座の売上は伸びない。
ふてくされて,社長が店に来ても,競馬新聞を読んでやる。
1年後くらいに,彼女の母親から電話が来る。
最初は誰か判らない。
聞くと,その後,彼女に縁談話を幾つももってきたが,まだ麿の事を忘れられないみたいで,全部,断るんだと言う。
だから,悪いけどもう一度会って,結婚の意思のない事を,ハッキリ伝えて欲しいと。。。
ヤだな~~。
今更何を。。
渋々ながら承諾し,有楽町の喫茶店で親子と会う。
懇々と麿がおそらく誰とも結婚しないだろうとの気持に変わりない事を伝える。
約束違反ではないので,彼女も最終的には認めざるを得ない。
それでも,別れ際に騙されたような事をボソッと言う。
勘弁してよ!
それから,2,3年後にまた彼女から電話が入る。
「どうした?」
「結婚したんですよ」
「そりゃ-良かった!」
「ん?今,酒を飲んでないか?」
「飲んでますよ~」
「亭主は大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ.亭主は私に惚れてるから..」
う~~~ん,なんだったんだ!
未遂事件以来,麿がしばらく女性恐怖症に陥ったのは!
その後,彼女からの連絡は一切ない。(了)