「ほ~ら、本物のコーヒーだぞ。」
とほろ酔いの父は、銀色のポットを大事そうに差し出した。
町にたった1件しかなかった、父の同級生の経営する喫茶店のものだった。
中学生だった私の舌に、それはたいした印象はしなかったが、
「本物」と力を込めた言葉だけ妙に記憶に残っている。
本物の味に出会ったのは、ずいぶん後のことだ。
東京でのOL時代、コーヒーの大好きな先輩がいて、
銀座、吉祥寺やらと1杯のコーヒーを求めて
同僚たちとでかけた。
私はそこで、マンデリンという苦味の勝ったコーヒーが1番好きだった。
それもしっかりと焙煎したやつを濃いめにいれたものが。
本物のおいしいコーヒーだと、最初に私の頭の中に
インプットされたというだけの理由なのだが。
マンデリンを台所のテーブルでガリガリとひいていると、
中2の長男が顔を出した。
「あ~僕にも、1杯入れてよ」
私はカップを2つ用意する。
「コーヒー、っておいしいね」の言葉に、
「ムム、オヌシ、いけるね。」私はほくそ笑む。
夫は私がコーヒーのうんちくをたれると、
何を言ってんだとばかりに、インスタントをすすりはじめる。
だから、私は1人きりで舌のうえの苦味を転がしていた。
(朝日新聞 1998年12月18日付 ひととき より)
本物のコーヒーの味といわれても、今の自分には
いつ飲んだときが、本物だったろうと考えてみるも
いつかはわからない。
ブラックで飲めるようになったのは、
高校生くらいからだった。
甘党である自分は、それでも、まだブラックで飲むことは
少ないのだが・・・・
寒くなってくる冬の季節
自動販売機のホットの缶に、手を温めてもらった人も多いのではないだろうか
温かさと苦味の交じるコーヒー
これから、私はコーヒーとどんな思い出ができるか
楽しみである。
とほろ酔いの父は、銀色のポットを大事そうに差し出した。
町にたった1件しかなかった、父の同級生の経営する喫茶店のものだった。
中学生だった私の舌に、それはたいした印象はしなかったが、
「本物」と力を込めた言葉だけ妙に記憶に残っている。
本物の味に出会ったのは、ずいぶん後のことだ。
東京でのOL時代、コーヒーの大好きな先輩がいて、
銀座、吉祥寺やらと1杯のコーヒーを求めて
同僚たちとでかけた。
私はそこで、マンデリンという苦味の勝ったコーヒーが1番好きだった。
それもしっかりと焙煎したやつを濃いめにいれたものが。
本物のおいしいコーヒーだと、最初に私の頭の中に
インプットされたというだけの理由なのだが。
マンデリンを台所のテーブルでガリガリとひいていると、
中2の長男が顔を出した。
「あ~僕にも、1杯入れてよ」
私はカップを2つ用意する。
「コーヒー、っておいしいね」の言葉に、
「ムム、オヌシ、いけるね。」私はほくそ笑む。
夫は私がコーヒーのうんちくをたれると、
何を言ってんだとばかりに、インスタントをすすりはじめる。
だから、私は1人きりで舌のうえの苦味を転がしていた。
(朝日新聞 1998年12月18日付 ひととき より)
本物のコーヒーの味といわれても、今の自分には
いつ飲んだときが、本物だったろうと考えてみるも
いつかはわからない。
ブラックで飲めるようになったのは、
高校生くらいからだった。
甘党である自分は、それでも、まだブラックで飲むことは
少ないのだが・・・・
寒くなってくる冬の季節
自動販売機のホットの缶に、手を温めてもらった人も多いのではないだろうか
温かさと苦味の交じるコーヒー
これから、私はコーヒーとどんな思い出ができるか
楽しみである。
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