空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

宙組「王家に捧ぐ歌」

2015-07-01 18:13:19 | 観劇(タカラヅカ)
3週ぶりの休日。ずーっと見たかった「王家」やっと見られました!

まぁ君、トップお披露目おめでとうーーーー!

【王家に捧ぐ歌 -オペラ『アイーダ』より-

12年前の初演版は生では見られていないんですが、
DVDは私が初めて買ったヅカDVDで、軽く10回は見てます。いや、10回とかできくわけがないな。
歌詞がわからない曲とか、文字起こしできるまで繰り返し聞いたし(実話)、
車で通勤していた頃は車内で音声だけ聞いたりしていたし。

大好きな作品だから、再演はとっても嬉しかった。
そして、何回も聞きすぎて、全部歌える(笑)
セリフや歌詞のマイナーチェンジがすぐにわかる(笑)
とりあえず「平和」というフレーズが3回は減ってましたね(笑)

「好き」語りをする前に。
初演版で引っかかって仕方のなかった考証的なツッコミ面が、やや緩和されてた。
「アメン」神と「アトン」神が並べて称えられるというのがなくなり、
「ホルスを生みし女神イシス」に変わっていた。いらんストレスがなくなりました。
まあ、「この『エジプト』の首都はどこ?」ってのは、自分の中では解消されてないのですが。
(テーベは首都じゃないんだよね。メンフィスで合ってる?)
そもそものオペラが、その辺適当だと思うので。

以上。
ここからは、「好き」を語ります。

12年ぶりの再演で、「テーマは『愛』」と打ち出された作品。

12年前、2003年時点の世界情勢がわりとわかりやすく反映された作品で、
(元スポニチ記者の薮下さんのブログで
「2001年の9・11を契機に始まったイラク戦争を隠れテーマにした」とあったけど、
全然隠れてないし!
エジプト=アメリカ は、隠喩じゃなくて直喩ですよね、もう。
それが12年経つとどうなったか…と言えば、12年経ってもなお、アクチュアルなテーマでした。
だからこそ、の、「愛」なのだと思う。

前述したように「平和」というセリフは減り、
ラダメスとアイーダをトップコンビが演じるのもあって、
ラブストーリーとしての色が濃くなった今回。
じゃあテーマ性は薄れたのかというと、そうではないと思う。
現実として戦争はあって。現実として憎しみは消えなくて。
その中で何ができるかと言えば、それは、
自分の愛する相手に対して、臆せずに「愛している」と表明することからしか
始まらないのではないか。

勿論、「愛のために戦う」という理屈は存在する。
「ラブ&ピース」と無邪気に笑えるわけじゃない。
それでも。
「戦いはまだ終わっていない」と叫ばれる側としては、
冷笑して「世界はそもそも不公平なものだ」とうそぶくよりは、
誠実に、「あなたを愛している」と告げるほうが、
平和な世界に近づいていけるのではないだろうか。

絶望の中の、一筋の希望。
「王家に捧ぐ歌」は、そんな物語。

「たとえ戦おうと、戦いで傷つこうと、我々は決して、明日への希望を捨ててはならないのです」
アムネリスの演説は、初演では「明日への」ではなく「平和への」だったはず。
12年経って。
「戦いで傷つく」ことの現実味は増した。
戦いのある、前提。
戦いの中で、愛と明日への希望を失わないことからしか、平和は始まらない。
この12年は、そういう歳月だったのか。


今回、強く感じ、そして泣けたのは、ラダメスの孤独さ。
まぁ様のラダメスは、爽やかな青年。涼やか、とも言う。
その彼が一人で歌う、「アイーダ強き光よ」。
元々ドラマチックで好きな曲なんだけど(ケペルとメレルカのパートが特に好き~)
最初に聞いたときは思いっきりツッコんでしまった。
「祖国侵略の動機にされちゃったら、アイーダも迷惑だろう!」と。
それが今回はさほど気にならず、「この広い戦場で私はなぜか孤独だ」のほうが
心に残った。
「光はなかった/出口はなかった/戦う意味さえ見えなかった」 紡がれる否定形。
そこに、「アイーダ 強き光よ/暗い闇を照らす人よ」 肯定の光が差す。
戦闘シーンも気になるのだけれど。アモナスロも見たいのだけれど。ラダメスを見ていた。

そして1幕ラストの集合シーン。
ラダメスが一人歌う、「世界に求む」。
ここでも、ラダメスが「ひとり」であることを実感した。
彼は決して自信を持っていない。自分の思いがエジプトに受け入れられるのか、
慎重に言葉と行動を選びながら探って、そして歌う。
エチオピアの新たな捕虜を連行してくるところが、かつては納得いかなかった。
彼らを晒し者にしておいて、「慈悲」を言う、その言行不一致と偽善が嫌だった。
違うのだ、と気付いた。
自分の主張を通すために、まず将軍としての自分の役割を果たす。
エジプト人のプライドを傷つけない言葉を選び、情理を尽くして説得する。
それは、ラダメスの思想に真の味方がいないことを、彼自身わかっているからだ。

そのラダメスの思いを、ファラオは受け取る。
ここ毎回、切ないんだよね。「これは、賭けだ。」「私も共に、見届けたい」
ファラオの善意が裏切られるのが、切ない。

そしてラダメスの歌声に、アイーダが同調する。
世界に2人だけ。同じものを見ている。
この2人が「運命のふたり」であることが、伝わってくる。

ラダメスが平和を願うのは、アイーダを愛したから。
エジプト独善主義ではなく、アイーダごと、丸ごとの世界を愛したいと思ったから。
結局、叶わないのだけれども。
彼が愛したのは「エチオピアのアイーダ」なのだよね。
彼女が生きてきた世界、彼女のルーツごと、彼女を愛している。

だからこそアイーダもラダメスを愛し、だからこそ苦しむ。
賢いアイーダは、「エジプトごと」「エチオピアごと」愛を成就させることの不可能を知っている。
「誰がどう言おうと/私は嘘をつけない」
「真実」を知ってしまっているから、動くことのできないアイーダに、
ラダメスの語りかける「愛している…!」の、甘いこと!!
タラシ男(ほめてます)・朝夏まなとの真骨頂!
…あれは落ちますよね、アイーダも。泣きながらすがりつきますよね。
だってまぁ様は、王子様なのだもの。
どんな理屈も理性も吹き飛ばす、有無を言わせない力のある人だなあ。
みりおんアイーダが、知性のある、お育ちの良い賢い女性だったので、
彼女を陥落させてしまうまぁ様のパワーに脱帽しました。

で、みりおんアイーダ。
みりおんは前からずーっと好きなのですが、良い役来て良かった!と思います。
黒塗り似合う、めっちゃかわいい。
初演が男役のとうこさんだったので、比較してしまうと線が細いのは仕方ない。
さすがの歌唱力、耳が幸せ。
でも、期待していた「アイーダの信念」は、ちょっと細いかな~と思っていたのですが、
これが最後のカタルシスに繋がった。
みりおんアイーダは、文句なしに可憐。
それでいて、揺るがない芯を持っている。「戦いは新たな戦いを生むだけ」
エジプト側からもエチオピア側からも罵られながら、彼女は自分の信念を捨てない。
それは彼女が、母国エチオピアの「アフリカの大地」に根を下ろしているからか、と
今回気付いた。揺るがないのは、根があるから。
「おお、アフリカ」の曲、大好きです。

「月の満ちる頃」は名曲…!
きちんと考えたら、ここで歌われる2人の幸せは実現するはずがない。
ラダメスは「国を捨てる」ことの重さ(ファラオの死とか)を考えていないし、
アイーダは、ラダメスがそれを理解していないことを考えていない。
一番大事なことに目をつぶったままの、束の間の夢。
だからこそ、甘く美しい曲。

全てを失ったアイーダの「ならば私も、自分のために生きる!」
の力強さ。ここで初めて、しがらみを捨てて「一人の女」になったアイーダの、
覚醒した強さに泣けた。
彼女の「変化」があるから、カタルシスがあった。

牢獄場面。
ラダメスの「希望」とアイーダの「真実」が交錯する。
まぁ君、涙ボロボロ零してましたしね。
望んでいた結末ではないけれど、悔いはない。
「私たちは愛し合ったのよ。生きようと死のうと、それが全てよ」
この世に2人だけ、思いを共有できた2人。
それが2人だけ、に留まらなかったとわかるのが、最後のカタルシスになる。
最後の「世界に求む」はいいよね~!


うららちゃんアムネリスは、とにかく美しい!
このアムネリスを見られて良かったです。
初演のタン・リー様は、宝塚史上に残る当たり役(アテガキだしね)なので、
比較されるのは大変だと思うのですが、ビジュアルで負けてない! 凄い!!
迫力はどうしても負けてしまいますが、だからこそ、
ファラオ暗殺からの「女王」になる姿が痛々しくて切なかった。
劇団四季版のアムネリスに印象は近いかも。

真風さんウバルドがカッコ良かった!!
黒塗り最高。さすが星育ち。
おかげでチーム・エチオピアの場面が楽しくて。
「お前は奴隷」とか、ノリノリでしたよね。
オープニングから目が釘付け。
(このオープニングはかなり好き。4500年経って、ウバルドがわかってくれたのなら、
それでもいいかな…と思ってしまう。)

あっきーのカマンテも良かった!
愛ちゃんケペル、りく君サウフェ、みなと君メレルカは、またちゃんと注目して見たい。

チャル様ファラオは、さすがの貫禄!
…実はどうしても年齢を感じてしまうところもあったのだけれども、
それでも、初めて生で見て、ファラオってこんなにあったかい役だったんだ、と思った。
だからな~、皆がファラオ暗殺前提で話すのが腹立つのよね(笑)
ラダメスも、このファラオと一緒に理想の国を造りたかったのだと思う。
アイーダと秤にかけたらアイーダを選んでしまうのだけれど。

ヒロさんアモナスロ。
とにかく歌が素晴らしい。

そう、この作品はとにかく、音楽がドラマチックで!!

「三度の銅鑼」とか最高。
銀橋の2人、ヒロさんとみりおんの歌唱力が、良い感じで引き締めてくれる。

宙組と言えば、コーラス力。
スゴつよでも発揮される美コーラス(笑)
いや、スゴつよも「美人選び」も、生で見たらめっちゃ楽しかった!


フィナーレ、スゴつよはいるんですか…??(汗)
でもまぁ君中心の群舞も、まぁみりのデュエットダンスも本当に素晴らしく、
そして組替えしてきた真風氏もすごい安定感で、
新生宙組、これからも楽しみです!!

まぁ君に「花男だから」とはずっと書いてきていたのですが、今回、晴れて
トップスターになったまぁ君に、真飛聖さんの遺伝子を感じた……
まぁ君は、まとぶんトップのところに長くいたもんな…
そして、まとぶんは初代カマンテ(ウバルドもやってる)。
ファンの皆様に同意をいただけるかどうかはわかりませんが。

まぁみりで、「血と砂」(まとぶんお披露目「愛と死のアラビア」)見たいな~
大野先生脚本で!!(扮装が似合うと思うのですが!)
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