ここ最近、すっかり「新感線」ファンになっているので、いのうえ作品ってだけで惹かれ、
おまけに去年の大河「平清盛」での森田剛@平時忠が本当に素晴らしかったので
頑張ってチケット取って見に行きました。
オリックス劇場は2回目。今回は2階席で、傾斜がきつかったおかげで非常に見やすかったです。
…が。やっぱり最前列は全く見えないらしい(不満の声が聞こえてきた)。
設計ミスでしょ、これ絶対。
(あるいはコンサートで使用してスタンディングなら問題なしってこと?)
シェイクスピアの代表作の一つ「リチャード3世」を、鎌倉時代の日本に翻案した物語。
あ、私、「リチャード3世」ちゃんと読んでないや~と気付いたのは開演後(笑)
まあ、英国も日本も歴史的事実はわかるから大丈夫でしたが。
本当にきれいに翻案されてて、日本の歴史ともきれいに合致してこれには感動した!
ちなみに私にとってのリチャードのイメージは、森川久美「天の戴冠」によって形成されているので、
シェイクスピア描くところの極悪人・リチャードにはすっごく抵抗があるのですよ。
(しかし、今回の作品を見て、悪人が破滅する王道の「リチャード3世」よりも、
普通に「いい人」のリチャードが汚名を着て破滅していく「天の戴冠」のほうが
救いの無さとか後味の悪さでは上かなと感じた。)
後は、大和和紀の「KILLA」かな。(主人公がリチャードを演じる)
あれは美形悪役ですが、「異形の者」である宿命を背負って血塗られた道を行く話だったし。
【鉈切り丸 ~W.シェイクスピア〈リチャード3世〉より~】
登場人物( )内は『リチャード3世』との対応
鉈切り丸こと源範頼(リチャード3世):森田剛
巴御前(アン・ウォリック):成海璃子
源頼朝(エドワード4世):生瀬勝久
北条政子(エリザベス王妃):若村麻由美
源義経(クラレンス公ジョージ):須賀健太
梶原景時(バッキンガム):渡辺いっけい
和田義盛(ヘイスティングス):木村了
木曽義仲(皇太子エドワード)河野まさと
源頼家(エドワード5世):岸田タツヤ
源実朝(王子リチャード):大野瑞生
乙姫(王女エリザベス):喜多陽子
イト(ヨーク公爵夫人):秋山菜津子
建礼門院(マーガレット王妃):麻実れい
弁慶:千葉哲也
大江広元:山内圭哉
比企の尼:宮地雅子
今井兼平/藤原泰衡:川原正嗣
平兵衛:村木仁
えーっと、まずは、やっぱりシェイクスピアの悲劇ですから、
陰惨で救いが無い。
とりあえず一つ一つの描写がエグいよ~(涙)
マジで痛そうな暴力とか、痛いだけで愛情の欠片もなさそうなセックスとか、
いちいちリアルな擬音(殴る蹴る場面とか首を斬る場面とか)とかとか。
そして主人公の描写の容赦なさですね。
「華が無い」「人望が無い」「魅力が無い」……って、聞いてるこっちが心折れそう(笑)
最後の鳶に語りかける場面は、「ピンクスパイダー」(hide)を思い出しました。
「傷つけたのは憎いからじゃない/僕には羽が無く/あの空が高すぎたから」
あるいは、前述の「天の戴冠」のリチャードの最期の言葉。(物語のコンセプトは全く違うのにね)
もぐらがいて 土の中を掘り進んでいく
もぐらには夢があり 大地も星も自分のために動いていると信じている
だがある日 自分がもぐらであること
大地も星も自分のために動いているのではないことを知る
もぐらは苦しむが… 土を掘るのをやめるわけにはいかない
掘り続け… 土はもぐらを埋め続ける
ちょうど先日見た「真田十勇士」の幸村と対極にいるような。
同じ敗者でありながら、義を重んじ、誰からも愛され慕われて死んでいくヒーロー幸村と、
誰からも疎まれ嫌われ、自らも「悪」に邁進するアンチヒーロー鉈切り丸。
森田剛、熱演。
「美形悪役」じゃなく、とことん汚い悪役ですからね。
どこまでも残忍に、卑劣に、容赦なく。
でもずーっと傷や欠落感を抱えていることは見てとれて、
しかも周囲からその欠落を責められ続ける哀しい男。
時忠も大好きでしたが、……素晴らしかった。
(時忠も、ああいう死に方のほうが作劇としては正しかったよね。
史実で生き延びるから仕方ないけど)
ラストは、あれで良かったと思います。
ひどい言われようだけど、彼は最後に空を飛べたと思う。
巴御前との関係は、どちらかだけでももうちょっと「愛」が見えるほうが悲惨さが増して好みかなあ。
代償行為でもいいけどさ。欲だけ、と、憎んでるだけ、だと、巴の心理がわかりにくい。
それから語っておきたいのは、やっぱり、麻実れい様の素晴らしさ。
怨念を抱えて生霊化した建礼門院、というのは史実的にはツッコミ所なのですが(年齢も)、
登場するときの説得力ったら! この世の者じゃないですよね、あの人(真顔)。
怖いよ~
北条政子の若村さんもさすがで、
源氏物語で若村弘徽殿&麻実六条とかで見たいなあと思ってしまった。
それから秋山菜津子さんの上手さ!
…ってか、若い役も老け役も見たことあるんだけど本当はいくつなんだろう。
年齢不詳と言えば、千葉哲也さんももはや常連ですが、この方も実年齢がわからない。
木村了くん、「蜉蝣峠」以来ですが、上手いですね。セリフがすっと耳に届く。
須賀健太くんの成長にもびっくり。
生瀬勝久とか渡辺いっけいは(そういえば渡辺さんは「義経」で泰衡だった…)、
生で見るの初めてですが、イメージ通りながらあちこち驚かされる。
頼朝のコメディパートが全体の救いだった…。
ストーリーの話をしますと、大江広元の使い方が上手いなあと。
彼がずっと『吾妻鏡』を執筆し続けることで、
「歴史は勝者のもの」という非情の掟がよく見えて、
それが最後の残酷なオチに効いてくる。(おまけに正史との整合性も)
あとやっぱりいのうえ作品は殺陣が素晴らしい!
あまりの救いの無さに重い気持ちになりながらも、重さの分だけ色々なものが残った公演でした。
おまけに去年の大河「平清盛」での森田剛@平時忠が本当に素晴らしかったので
頑張ってチケット取って見に行きました。
オリックス劇場は2回目。今回は2階席で、傾斜がきつかったおかげで非常に見やすかったです。
…が。やっぱり最前列は全く見えないらしい(不満の声が聞こえてきた)。
設計ミスでしょ、これ絶対。
(あるいはコンサートで使用してスタンディングなら問題なしってこと?)
シェイクスピアの代表作の一つ「リチャード3世」を、鎌倉時代の日本に翻案した物語。
あ、私、「リチャード3世」ちゃんと読んでないや~と気付いたのは開演後(笑)
まあ、英国も日本も歴史的事実はわかるから大丈夫でしたが。
本当にきれいに翻案されてて、日本の歴史ともきれいに合致してこれには感動した!
ちなみに私にとってのリチャードのイメージは、森川久美「天の戴冠」によって形成されているので、
シェイクスピア描くところの極悪人・リチャードにはすっごく抵抗があるのですよ。
(しかし、今回の作品を見て、悪人が破滅する王道の「リチャード3世」よりも、
普通に「いい人」のリチャードが汚名を着て破滅していく「天の戴冠」のほうが
救いの無さとか後味の悪さでは上かなと感じた。)
後は、大和和紀の「KILLA」かな。(主人公がリチャードを演じる)
あれは美形悪役ですが、「異形の者」である宿命を背負って血塗られた道を行く話だったし。
【鉈切り丸 ~W.シェイクスピア〈リチャード3世〉より~】
登場人物( )内は『リチャード3世』との対応
鉈切り丸こと源範頼(リチャード3世):森田剛
巴御前(アン・ウォリック):成海璃子
源頼朝(エドワード4世):生瀬勝久
北条政子(エリザベス王妃):若村麻由美
源義経(クラレンス公ジョージ):須賀健太
梶原景時(バッキンガム):渡辺いっけい
和田義盛(ヘイスティングス):木村了
木曽義仲(皇太子エドワード)河野まさと
源頼家(エドワード5世):岸田タツヤ
源実朝(王子リチャード):大野瑞生
乙姫(王女エリザベス):喜多陽子
イト(ヨーク公爵夫人):秋山菜津子
建礼門院(マーガレット王妃):麻実れい
弁慶:千葉哲也
大江広元:山内圭哉
比企の尼:宮地雅子
今井兼平/藤原泰衡:川原正嗣
平兵衛:村木仁
えーっと、まずは、やっぱりシェイクスピアの悲劇ですから、
陰惨で救いが無い。
とりあえず一つ一つの描写がエグいよ~(涙)
マジで痛そうな暴力とか、痛いだけで愛情の欠片もなさそうなセックスとか、
いちいちリアルな擬音(殴る蹴る場面とか首を斬る場面とか)とかとか。
そして主人公の描写の容赦なさですね。
「華が無い」「人望が無い」「魅力が無い」……って、聞いてるこっちが心折れそう(笑)
最後の鳶に語りかける場面は、「ピンクスパイダー」(hide)を思い出しました。
「傷つけたのは憎いからじゃない/僕には羽が無く/あの空が高すぎたから」
あるいは、前述の「天の戴冠」のリチャードの最期の言葉。(物語のコンセプトは全く違うのにね)
もぐらがいて 土の中を掘り進んでいく
もぐらには夢があり 大地も星も自分のために動いていると信じている
だがある日 自分がもぐらであること
大地も星も自分のために動いているのではないことを知る
もぐらは苦しむが… 土を掘るのをやめるわけにはいかない
掘り続け… 土はもぐらを埋め続ける
ちょうど先日見た「真田十勇士」の幸村と対極にいるような。
同じ敗者でありながら、義を重んじ、誰からも愛され慕われて死んでいくヒーロー幸村と、
誰からも疎まれ嫌われ、自らも「悪」に邁進するアンチヒーロー鉈切り丸。
森田剛、熱演。
「美形悪役」じゃなく、とことん汚い悪役ですからね。
どこまでも残忍に、卑劣に、容赦なく。
でもずーっと傷や欠落感を抱えていることは見てとれて、
しかも周囲からその欠落を責められ続ける哀しい男。
時忠も大好きでしたが、……素晴らしかった。
(時忠も、ああいう死に方のほうが作劇としては正しかったよね。
史実で生き延びるから仕方ないけど)
ラストは、あれで良かったと思います。
ひどい言われようだけど、彼は最後に空を飛べたと思う。
巴御前との関係は、どちらかだけでももうちょっと「愛」が見えるほうが悲惨さが増して好みかなあ。
代償行為でもいいけどさ。欲だけ、と、憎んでるだけ、だと、巴の心理がわかりにくい。
それから語っておきたいのは、やっぱり、麻実れい様の素晴らしさ。
怨念を抱えて生霊化した建礼門院、というのは史実的にはツッコミ所なのですが(年齢も)、
登場するときの説得力ったら! この世の者じゃないですよね、あの人(真顔)。
怖いよ~
北条政子の若村さんもさすがで、
源氏物語で若村弘徽殿&麻実六条とかで見たいなあと思ってしまった。
それから秋山菜津子さんの上手さ!
…ってか、若い役も老け役も見たことあるんだけど本当はいくつなんだろう。
年齢不詳と言えば、千葉哲也さんももはや常連ですが、この方も実年齢がわからない。
木村了くん、「蜉蝣峠」以来ですが、上手いですね。セリフがすっと耳に届く。
須賀健太くんの成長にもびっくり。
生瀬勝久とか渡辺いっけいは(そういえば渡辺さんは「義経」で泰衡だった…)、
生で見るの初めてですが、イメージ通りながらあちこち驚かされる。
頼朝のコメディパートが全体の救いだった…。
ストーリーの話をしますと、大江広元の使い方が上手いなあと。
彼がずっと『吾妻鏡』を執筆し続けることで、
「歴史は勝者のもの」という非情の掟がよく見えて、
それが最後の残酷なオチに効いてくる。(おまけに正史との整合性も)
あとやっぱりいのうえ作品は殺陣が素晴らしい!
あまりの救いの無さに重い気持ちになりながらも、重さの分だけ色々なものが残った公演でした。
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