科学は、研究者の自発的興味と発想にもとづく無目的研究であるのに対し、技術は、建築、
土木、機械のように、目的実現のためのものであり、西欧では、アカデミズムの外側で、
発展していた。そういえば、産業革命を推進した発明者たちは、大学とは無関係の人たちで
あった。だが明治維新以後西欧に学んだ日本では、科学と技術の区別が希薄であり、
工学部が(法学部とともに)総合大学の中心になった。
総合大学の中に工学部がおかれた世界で最初の国は、日本である。この歴史が純粋研究よりも
応用研究の日本の科学を生んだのであろう。
毎日新聞 今週の本棚:伊東光晴・評 『人間にとって科学とは何か』=村上陽一郎・著 2010/10/03
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「課題解決」のための研究などは、科学というより技術開発のための研究と
いえるだろう。実用的な成果を得やすいかもしれないが、大きなイノベーションを
得ることは決してないであろう。