「お金」で読む日本史 (本郷和人監修 祥伝社)④
忠臣蔵で有名な浅野内匠頭は、吉良の殿様に渡した賄賂が75万円であったという。ほかの大名は7500万円払ったのにここでシブチンをしたばっかりに意地悪されてそれで頭に血が上ってしまったと推測されているらしい。推測通りなら浅野さんには気の毒な事件であるというのは、のちの世の倫理をもって見ているだけであってここはしっかり払うべきであったという筆法でこの本の著者は書いている。当時は賄賂と授業料の区別がついていなかったらしい。もしそうなら7500万円は授業料としては高過ぎはしないか。授業料はそれを支払ったあとにその人に訪れる利益がその金額を上回りそうだと思うから支払うものである。吉良の殿様の授業が7500万円の価値あるかどうかの検証もこの本でしてほしかった。
さて、討ち入りに際して使った総費用は6000万円でいくらか使い残しがあるから5000万円くらいであったという。実際は47士の個人持ちだしがかなりあるからこんな金額で討ち入りはできないだろう。一人に800万円くらいの退職金が支払われていたというから仮に全員が退職金をすべて討ち入りに使ったとして全部で4億円くらいが総費用と言うことになる。高いのか安く済んだのかよくわからない。
この事件は、今から300年くらい前でまだ新しいのに謎が一杯なところがある。浅野さんが何に腹立てたかも今一つ説得力がない説明だし、幕閣が吉良さんの屋敷を江戸のはずれに移して討ち入りをやりやすくしたのは大きな謎。ちょうどいい折だから討ち入りしてもらって吉良さんをなきものにしようと企んだとしか思えない。
このころは新井白石の正徳の治の時代で、荻原重秀の貨幣改鋳のあと白石さんが貨幣の金含有量を昔に戻した時代である。今のペーパーマネーの時代なら貨幣を減らすのだから大デフレと言うことになりそうだけど、金本位制で貨幣の品質をいじくっただけの場合はインフレにもデフレにもならない気がする。ただ各種統計に表れる数字に過去との整合性が取れなくなるかもしれない。それに両替商の店先で番頭さんか手代さんかは知らないがそろばんが面倒くさいことになっていたのではないか。
白石さんは、大変偉い学者と言うことになっているけど昔が一番よかったと思い込んでいる懐古趣味のオジさんじゃないのか。(だから貨幣も昔に戻した)それが証拠に折りたく柴の記は、擬古文で書かれている。えらい人の日記は必ず他の人に読まれることを想定している。その日記を擬古文で書くのは、書いた本人に抜きがたい懐古趣味があることを示している。
その新井白石が政権をとっていた。何か吉良さんに不都合な点があってああこれは良いタイミングだと思ったかもしれない。自分は手を汚さずに費用もあっち持ちでやってくれると思ったのかもしれない。