残照亭の日日

残り少ない日々、自分の日常や古い話などを時々書きます。
故「藤沢周平」のファン。思い出の作品などを書いてます。

「藤沢周平」㉒~藤沢氏「宝塚」に行く~

2023-10-26 | 藤沢周平作品

私、最近騒がしくニュースになっている「宝塚」を見たことも

行った事もない。

藤沢周平氏が「東京宝塚劇場」にご夫婦で行ったのは、

平成6年6月「若き日の歌は忘れじ」の初日公演

時のトップスター紫苑ゆうさんから、舞台上で花束を贈られた。

これは、原作が藤沢周平の名作「蝉しぐれ」だからである。

藤沢「宝塚は女子供の観るものだと思っていたけど、

   それが誤りだという事を田辺聖子さんに、こんこんと諭されました」

押しも押されもせぬ流行作家になっていた藤沢周平は、もうすっかり

有名人であり、かつての暗味のある作品は、もうほとんど

影を潜めている時代になっていたのである。


「藤沢周平」㉑~故郷はへその緒みたいなもの~

2023-10-23 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

藤沢:・・ゴルフはやらない。文士劇とかも出たことないですね。

文士劇といいば、長部さん(長部日出雄氏)は上手いですよ。

トップクラスじゃないかと思いますよ。早稲田でなんかやったんじゃ

ないですか。セリフもなんかとてもね、東北の津軽とはとても思いない、

メリハリが効いて。

なまりは全然無し。なんかあれ、好きなんじゃないですか。

僕もそうだけど、長部さんにしても、津軽ってものから離れられない

ようですね。そう言ってましたね。

なんかこう、故郷っていうのは、へその緒みたいな物で、つながれて

いるような感じですね。

ただ、僕なんかこっち(東京)に居ると、冬なんか寒くてね、あのう、

冬なんか弱いわけなんだけどね。

田舎に帰って、11月、12月でも、一向平気ですもんね。

ウン、霰が降ろうとネ。

こっちは雪はあまり降らないけど、うん降らないですよ。

降らないけど寒いですよ。東北の冬と寒さと、また違った寒さでね。

意地が悪い寒さだね。

お正月だって、何の風情もないわけですよネ。

うちの方の田舎からは、これが月山が見えるんですよ。いまは高速道路が

走ってて、景色が悪くなったけど・・・

昔は私鉄の電車が走っていたけど、なくなりましてね、赤字で、

どうしょうもなかったみたいで、今はほら、みんな、車でしょう。

乗る人があまり居なくなったでしょう。

故郷はやっぱり懐かしいですよ」

ふるさとを書き残すためだったのか「春秋山伏記」「義民が駆ける」等々

故郷を思わせる作品も多い「海坂」ものは、代表作品の一つとなった。


「藤沢周平」⑳~時代小説で人が死ぬわけ~

2023-10-21 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

初期の藤沢作品では、登場人物がよく亡くなっている。

藤沢「~まあ~、あんまり本当は殺さないで済めば良いんですけどネ

だけどね、僕は戦争には行かなかったけど、

人間は死ぬものだって事が、非常にネ、病院生活をしていたんで、

いづれ人間は死ぬものだって言うのが一つ、それから自分はいづれ

死ぬんだって、こういったことで、死って物が頭に入ってくるんでネ・・

手術をしましてね、肋骨を5本ばかりやってね、手術をやったんですよ。

あの時だって、死ぬのと紙一重でしたネ。助かるとは思ってなかったしね。

そういう風な経験が基調として残ってるんじゃないかナ~。

それと、人は中中死なないもんだと、言う所もあるんですよ。

本当にもう、明日にも駄目かって病人がネ、どうにか手術に漕ぎ着けて、

元気になって退院して行く例を見ましたね。

逆に、非常に強い人が、あっけなく死んで行ったりネ。

だから、戦争には行かなかったけど、人が死んで行くのは随分見て

きましたネ。

だから、人を殺すってのいうのは、別に僕が惨酷なわけでなくてね、

人間の儚さって言うのを僕はいつも観てるわけですよね。

だから、こう、死ぬ場面って言うのは、一人の人の死というよりは、

人生の儚さっていうのを書きたいと思うわけですネ。

やっぱり、だから殺しちゃう場面も有るわけですね。

・・・別冊小説現代にネ、300枚位のを書いたんです。

注:〈狐は黄昏に踊る〉

これもネ、随分考えたんです。なるべく死なないようにしょうってネ。

でも、結末を着けるために、全部殺しちゃったんです。

結局は、人生観の問題だと思いますネ。(略)

だから、僕は明るい明朗な作家と言えないわけですネ。

「又蔵の火」に書いたとおりです。根底には有るわけですね。」

◎別冊小説現代「狐は黄昏に踊る」昭和51年新秋号 初出

・・単行本は「闇の歯車」と改題

藤沢の作品は、まだ暗味を歩いている頃の作品


「藤沢周平」番外~鶴岡で企画展~

2023-10-17 | 藤沢周平作品

10月22日(日)鶴岡市「藤沢周平記念館」で、企画展が行われるという。

「企画展・藤沢周平と直木賞」

「作家藤沢周平誕生とオール読物」と題して、元編集長が話す

あ~、行ってみたい・・・が少し遠い

体調だのも天気とか、心配だし・・・、別の用事が入っているし・・

藤沢本人の講演は一度だけ聞いた。40年近く前だったかナ・・

一緒に撮った貴重な写真が有るはずだが、ネガがどこに行ったか

分からない。

行って城下町鶴岡も楽しみたい・・・

年齢と体力・・・が


「藤沢周平」⑱~鴎外病・周五郎病~

2023-10-16 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

時代小説作家として、直木賞は受賞したものの、まだ売れっ子

になる前の藤沢周平、昭和50年初めの頃の話である。

どんな本を読み、好きな作家はいたのだろうか?

藤沢「「ジャッカルの日」や「オデッサファイル」なんか読みますよ。

面白いですからね。チャンドラーなんかも・・」

なるほど、そういえば「彫師・伊之助」なぞに雰囲気が出ているナ~

藤沢「伊藤圭一さんなんかいいですよね。大学の先生と作家の兼業で

うらやましい。小説だけに集中しているのはね~・・・」

藤沢「他の作家の時代小説は、直木賞受賞後はあまり読まないですね。

時代小説には「鴎外病」「周五郎病」というのがあって、どうしても

真似が出る事が有るんですよ。"高瀬舟"とか"婦道記"の影響がね~」

藤沢の作品は、士道ものにしても市井ものにしても、独自の世界を

描いていく。

藤沢「「赤穂浪士」の話というと、大佛次郎さん。

「宮本武蔵」は吉川英治さん」という、凄い作品が有るでしょう。

だから、私が書くとしたらネ~、どうかくか・・まだね・・」

藤沢は、この時期まだ雌伏の時代だったようである。

再初期の作品の多くの話は、のちの作品の中で、少しづつ形を変えて

出てくる。それは暗味が薄れて行くにしたがって、作品の明るさに

通じていくのだが、時折、思い出したように姿を現すのは"業"の

なせるところだったのだろうか。