1961年(昭和36年)公開の邦画。時代劇映画。監督、脚本は黒澤明。撮影は宮川一夫、斉藤孝雄。出演は三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴、志村喬、司葉子、東野英治郎、藤原釜足、加東大介、他。三船敏郎は41歳、黒澤明は51歳、両名とも脂がのり切った年齢。三船はこの映画でヴェネチア映画祭主演男優賞を受賞した。
この映画の後に「椿三十郎」が公開されたが三船敏郎はこの映画では桑畑三十郎と名乗っている。名前を聞かれてそこで見えた桑畑からそう名乗る。「椿三十郎」では庭に咲いていた椿の花を見ながら椿三十郎と名乗った。
映画は三船が宿場町へたどり着いたところから始まる。そこは二つのやくざの抗争で荒れる町。三船はこの二つのやくざ双方に取り入り、争わせて共倒れさせることを画策する。
選んだ食事の場面は映画冒頭で東野英治郎が営む居酒屋で飯を食わせてもらう場面。東野から冷や飯が入ったお櫃をドンと置かれ、三船は自分で飯を茶碗によそって食べる。時々箸で何かをつまんで口に入れる。薬缶から茶碗にお湯を注ぎ茶漬けで飯をかきこむ。この飯代の代わりに三船は東野に町を平穏にすることを請け負うのだ。三船は片方の子分を三人瞬時に切り倒し、もう一つのやくざに五十両で用心棒で雇われる、、、という形で話は進む。
ところで、私が子供の頃「木枯らし紋次郎」という時代劇ドラマが好きだった。中学一年生だった。ぼろぼろの編み笠、同じように擦り切れた道中合羽、口にくわえた長い楊枝。ドラマの内容は覚えていないけど毎回のように出てくる峠の茶屋の飯はよく覚えている。飯、味噌汁、漬物。その三点だけ。味噌汁は顔が映るくらい味噌が薄い。紋次郎はその薄い味噌汁を飯にかけて口にかき込む。味わうなんてこれっぽっちもない。
用心棒の三船は飯と漬物(多分だが)だけの食事なのだが、おっとりとゆっくりと味わっているようなのだ。面白い。幼児の時に蒟蒻で間引きされかけた紋次郎とやさぐれても武士の三船の違いか、と勝手に思っている。
この映画には仲代達也が敵役として出てくる。着流し姿に拳銃を持ち、首にはスカーフを巻く。このスカーフは以前エルメスのスカーフだと何かで読んだ記憶があるのだが、探せなかった。