2021年10月1日公開の邦画。2020年公開の予定がCOVID-19の影響で1年延期。原作は中山七里。監督は瀬々敬久。出演は佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、永山瑛太、緒方直人、吉岡秀隆、倍賞美津子、他。
見ごたえのある良い映画です。
ーーーーー
2011年の東北震災の際、三人の避難者が避難所で寄り添いながら暮らしていた。天涯孤独の佐藤健、母子家庭で母親を亡くした清原果耶(子役)、そして夫を亡くした倍賞美津子。三人は避難所に馴染めず倍賞美津子の家で暮らすようになる。「ただいま」「おかえりなさい」。三人は短い間だったが本当の家族だった。
佐藤健は栃木に職を得て引っ越し、清原果耶は親戚の家に引き取られてから数年後、倍賞美津子に手土産を持って帰省してきた佐藤健は港で高校生になった清原果耶に偶然に出会い一緒に倍賞美津子の家を訪ねる。そこで倍賞美津子の困窮を知る。銀行口座には13,000円ほどしか残っていなかった。倍賞美津子は無年金だった。生活するだけで精一杯だったと。佐藤健と清原果耶は倍賞美津子に生活保護の申請をさせて一旦は生きられる段取りを整えたはずだったが倍賞美津子が餓死したとの連絡を佐藤健は受け取る。餓死した部屋の襖には倍賞美津子から佐藤と清原への遺言が書かれていた。「おかえりなさい」と。
福祉事務所に佐藤健と清原果耶が行くと当時担当した永山瑛太と緒方直人から倍賞美津子は申請を自ら辞退したのだと冷たく言い放たれる。人はみんなに見守られながら死ぬ時代ではない一人で死ぬ時代なのだと永山瑛太からは言われ、緒方からは世界の福祉事情の高説で説教される。君らが頼るようなところではないと。福祉事務所は倍賞美津子が生活に困窮するのが分かっていて辞退をさせたのだ。
数年後、仙台で死体が二つ別々にみつかる。どちらも外傷はなく身動きが取れない状態にされ餓死させられていた。一人は永山瑛太、一人は緒方直人。事件を担当するのは震災で妻と子を亡くした県警の阿部寛、、、。
ーーーーー
選んだ食事の場面は倍賞美津子の家で三人でうどんを食べる場面。
この場面は映画で二回出てくる。切り取って貼り付けたのは映画の最後の回想場面。
佐藤健は避難所にいたころは人を寄せ付けない粗暴な青年に見えたが、それは親に捨てられたという生まれや育ちではなく震災で自身の心が傷つく事件があったからだということが映画のラストで分かる。
ーーーーー
東北の地震の時、私は名古屋の本社で会議に出ていた。名古屋でも大きく揺れてとっさに南海地震かと当時所長をしていた大阪の事務所に電話をした。大阪も大きく揺れたが震源ではなかった。事務所のドアの電子ロックを切り扉を開けておくように指示した。帰りの新幹線はまったく西行きが来る気配もなく、ホームの掲示板は2時間遅れを示したままだった。JRは2時間以上は遅れを出さないという意地があるのかと呑気なことを思っていた。当時の社長は宮城県出身で親戚の方が亡くなったと後から知らされた。社長はその年の春に親会社から解任され会社を去った。お悔やみもちゃんと言えずじまい。同じような不義理をこれまで山ほどしてきた。反省する。けどこれからも同じことを続けるのだろうと思う。