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2005年10月20日第1刷
再読。ある一文が読みたくて借りなおした。いや二箇所読みたい内容があった。一つはオイルの話。一つはカセットテープの話。オイルについてはP66-P68、カセットテープについてはP113あたり。
P66
拙宅に戻ったターンテーブル・システムをオーディオラックに再び載せて一週間ほどたったとき、キャビネットの裏側をのぞきこんだ私は思わずニヤリとした。センタースピンドルの真下、軸受けハウジングの下部からオイルが一滴、オーディオラックの鋳鉄ボードの上にポトンと漏れているのを発見したのだ。さらに一週間後にチェックしてみたがポトンと一滴のままだった。
「ああ菊池さんらしいや」
オーディオ屋さん(というか日本人の大多数)は、このテのオイル漏れが気に入らないらしく、漏れを完全に止めたがる。オイルとオイルシールをあれこれ研究し、お金をかけて漏れを止めたがる。しかし、本職が自動車の私はニヤリとしちゃうのだ。イギリスの自動車エンジンはある程度のオイル漏れを許容し、オイルそのもので漏れを止める。ミニ(BLのミニ)やジャギャーを駐車している場所には、かならず地面の決まった位置にオイルの染みができる。それでいいのだ。いやイギリス車にかぎったことではなく、いまだポルシェもフェラーリもメルセデスベンツも、わずかなオイル漏れを許容する設計になっている。
ヒステリシス(物体の状態が過去の経歴によって左右される現象)をうまく持つ鋼体。オイルが滲み出ていれば正常。ガラード301を設計したエンジニアは、そういう「いいかげんな部分」をうまく残して、この機械に驚くほど長い寿命を与えてくれたのだと思う。たぶん私が生きているうちは、定期的な健康診断だけで動き続けてくれるだろう。
(2013年12月 西図書館)