投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

あきない世傳 金と銀 - 高田 郁(ハルキ文庫)

 
著者は1969年生まれ。宝塚市出身。中央大学法学部卒業 。大学卒業後は司法試験を受けるが何年か失敗が続いた 。1993年、集英社が発行する女性向け漫画雑誌『YOU』で川富士 立夏(かわふじ りっか)のペンネームで漫画原作者としてデビュー 。40代半ば時代小説作家へ転身した。

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この本は友人からの借り物。13巻ある。12巻まで借りて13巻目はそれまでのお礼に購入してプレゼントしました。

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主人公は摂津国津門村で私塾の家に生まれた幸という娘。幼い時、勉学に励む優しい兄に憧れ字を覚え考え方を学び持って生まれた才を生かし商人の道で華開くというお話。

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場面は摂津津門村、大坂天満、江戸神田田原町へと移る。

摂津津門村:主人公の幸は摂津の国の津門村(現西宮市今津町あたり)で私塾を営む家に生まれた聡明で利発な子供。父の跡を継ぐ予定で勉学に励む兄は優しくて幸の憧れでもあった。その兄が流行病で早逝し後を追うように父も逝く。生活が立ち行かなくなった一家は離散する。母と幼い妹の結は庄屋の下働きへ、幸は大坂天満の呉服屋へと奉公に出される。奉公先では竹と梅という女中がおりその下で台所仕事をするはずであったが幸の才能に気づいた主人と番頭は幸に商売を覚えることを暗に認めるのだ。


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大坂天満:奉公先に菊栄という娘が四代目に嫁いできたことが大きな転機となる。菊栄は幸より数歳年上。商家の娘で華やかではあるが、内には商才と負けん気に溢れた芯の強い娘だった。菊栄は幸を妹のようにかわいがる。幸は姉のように慕う。幸と菊栄は商売を通して友となるのだがそれはもっと後になってのこと。その菊栄は子宝に恵まれず自ら嫁ぎ先を去る。

ここから幸は店の兄弟三人に続けて嫁ぐことになる。商才の無い自堕落な四代目、商才はあるが人望の無い五代目、人望はあるが商才の無い六代目。四代目は事故で死亡、五代目は人望も商才もある幸を疎ましく思い出奔、やっと優しく人望のある六代目の嫁になれて店を江戸の出す夢を語ったが六代目は持病を悪化させてあっさり他界する。大坂は女主人を認めない習慣があった。幸は手代と丁稚、竹を連れて江戸にでる。

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江戸で新たな仲間に出会うが、ある日出奔した五代目が名前を変え両替商として幸たちの前に現れる。


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江戸神田田原町 :江戸本店開業を開業。幸は大坂時代の同僚や妹を迎え女主人となるが思いもよらない妹との別れを迎える。


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容姿も性格も才能にも恵まれた者は妬まれる。あれほど仲の良かった妹の結はある日、大事な新規商材を持って出奔。商売敵となる。結は幸がこれまでやってきたこと、これからやろうとしてきたことを別の店で成功させ、幸は窮地へ追い込まれる。しかしそれを助けるのは仲間。結が後妻へと嫁いだ相手が公文章偽造で江戸所払いへ。結はその相手と一緒に江戸を出る。幸と結はここにきて別々の道へと別れる。幸の人生は死と別れしかないように見える。不幸な人生なのか幸福な人生なのか。不幸な人は幸せな時を知らずに過ごす人。幸は幸せな人生だったのだと思う。幸は町や呉服太物組合をまとめあげ日本初の百貨店を作り上げる。

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13巻の最後、何度読みなおしても涙があふれて仕方ありませんでした。この本を貸してくれた友人にそれを言うと泣く場所が違うと言われましたが、やはり泣くなら最後の場面だと私は思っています。
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