『フィラデルフィア・エクスペリメント』(原題:The Philadelphia Experiment)という映画がある。1984年制作のアメリカ映画。主演はマイケル・パレ。『ストリート・オブ・ファイヤー』の主役。
1984年の映画だから劇場で観たのかもしれないし、テレビで放映されたものを観たのかもしれない。レンタルした記憶はない。とても印象的な映画で個人的にツボにはまっている映画。
どこを気に入っているのかというとマイケル・パレがポケットからコインを出し実家か親戚かに公衆電話から電話をする場面。何故かというと、マイケル・パレは1943年に行われた軍の極秘実験でタイムスリップして1984年の時代に飛ばされてきたという設定だったから。1943年と1984年、41年間の時間の差があるけど公衆電話の料金が変わっていない、貨幣価値が変わっていない、電話番号が変わっていない、公衆電話があれば41年の隔たりがあってもなんの不自由もない、それがこの映画を観た当時に不思議でならなかった記憶がある。
何故不思議なのかというと第二次世界大戦を挟んで日本の貨幣価値、文化、インフラがすっかり変わってしまい、日本の1943年と1984年ではマネが出来ない設定だったから。設定じゃあなくて現実。価値観が変わらない、平和だということはこういうことなのだと理解したから。平和というのは語弊があるか。でも価値観を維持できるというのは大事なことだと考えている。アメリカは継続している世界、日本は断絶している世界。それが良く分かった映画だった。
例えば私は息子が子供の頃、父と子でウルトラマンの話で盛り上がり、仮面ライダーの話が出来て、スーパーマリオブラザーズの話が出来た。共通の子供時代、世代が違っても盛り上がる会話が出来た。もしかしたら孫ともそういう会話が出来るかもしれない。皆そうだと思う。何の不思議もないかもしれないが、こういうことはとても幸せなことだと考えている。
何故なら私と父の間ではそういうものは無かったから。父は昭和4年の生まれ。私は昭和34年の生まれ。間に昭和20年があるのだ。断絶している。貨幣価値、大衆文化、そういうモノに共通性が無い。父はアルファベットもまともに習っていない世代。テレビも映画も無関係で育った世代。私は幼い時にその違いにほんの少しだけ思い悩んだことがある。その時の記憶がこの映画を観た時に思い出され、ああこれなんだと合点がいったのだ。
戦争はいけない行為だ。異論はない。アメリカは戦い続けている。武力で経済で。事実だ。しかしそれはアメリカという価値観を守り続けるための行為なのだ。価値観を維持するために。我々日本人もしっかり考えてみる必要がある。