ハマスホイとデンマーク絵画
2020年1月21日〜3月26日
東京都美術館
デンマークの画家ハマスホイ(1864〜1916)の2008年以来12年ぶりの回顧展。
2008年の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展は、国立西洋美術館とロンドンのロイヤル・アカデミーの共催で、ハンマースホイ作品86点とデンマーク室内画派と称される画家の作品、あわせて全105点で構成された。
今回2020年の「ハマスホイとデンマーク絵画」は、ハマスホイ作品が37点と前回の半分以下となり、その分は同時代のデンマークの画家の作品が加わり、全86点で構成される。
前回が、グレーというか落ち着いた色というかどこまで行っても「ハンマースホイ」色で覆われたディープな展覧会であった印象に対して、今回は、バラエティに富む展覧会となっている。その分、「ハンマースホイ」色を期待していた人にとっては物足りない感があるかも(展示室よりむしろ、ミュージアムショップが「ハマスホイ」色が濃厚かも)。私的には、前回は「ハンマースホイ」色に疲弊したので、今回くらいが良いかも。
驚いたのが、画家の表記が「ハンマースホイ」改め「ハマスホイ」となっていること。
展覧会を見ていくと、表記の変更は「ハマスホイ」だけではないことに気づく。
例えば、2017年に国立西洋美術館で「スケーエン:デンマークの芸術家村」展が開催されたが、本展の第2章でも、このデンマークの村「Skagen」を舞台に活動した画家たちを取り上げている。その表記は「スケーエン」改め「スケーイン」。
デンマーク語の表記改革が展開されている。
以下、表記改革の状況を私が気づいた範囲で。
【本展の主役】
Vilhelm Hammershøi
ヴィルヘルム・ ハンマースホイ
↓
ヴィルヘルム・ハマスホイ
*ヴィルヘルムは変わらない。
【デンマークの芸術家村】
Skagen
スケーエン
↓
スケーイン
*村の名前も変更される。
【Skagen派の画家たち】
Michael Ancher
ミカエル・アンカー
↓
ミケール・アンガ
Anna Ancher
アンナ・アンカー
↓
アナ・アンガ
Peder Severin Krøyer
ペーダー・セヴェリン・クロヤー
↓
ピーザ・スィヴェリーン・クロイア
Viggo Johansen
ヴィゴー・ヨハンセン
↓
ヴィゴ・ヨハンスン
*微妙に、しかし主要画家全てが姓名とも変更。
【デンマーク室内画派の画家たち】
Peter Ilsted
ピーダ・イルステズ
↓
変更なし
Carl Holsøe
カール・ホルスーウ
↓
変更なし
*室内画派の画家については、変更しなくてもよかったらしい。
【Hammershøiの奥さん】
Ida Hammershøi (旧姓:Ilsted)
イーダ・ハンマースホイ(旧姓:イルステズ)
↓
イーダ・ハマスホイ(旧姓:イルステズ)
*奥様の名前も変わらない。
外国の固有名詞の日本語表記は悩ましいのは、昔から言われていることである。
例えば画家では、「ゴーガン」か「ゴーギャン」かは、今も両者が並存している印象がある。「ミュシャ」は現地の発音とは異なるらしいが、既に定着してしまって変更は難しいようである。
最近では、「クラナッハ」改め「クラーナハ」に驚いたが、今では「クラーナハ」が定着した印象。
さて、「ハマスホイ」、「スケーイン」で定着するのか、ちょっとだけ気になるところ。「ハンマースホイ」作品を所蔵する国立西洋美術館の動向にも注目か。