カラヴァッジョ展
2016年3月1日~6月12日
国立西洋美術館
カラヴァッジョ《エマオの晩餐》
1606年
141×175cm
ミラノ、ブレラ美術館
2001年のカラヴァッジョ展では、特別出品として東京会場に限り展示された。
私のカラヴァッジョ好きを決定づけた作品。
今回の来日は、15年ぶり2回目。
2001年のときは、東京都庭園美術館本館のキャパの関係か、通常より低い位置に展示されていたように思う。絵までの距離も近かった。その位置にある《エマオの晩餐》が実に素晴らしかった。
今回は、今後の混雑対策か、通常より高い位置に展示されており、絵までの距離も相応にあるため、2001年のときのようにはぐっと来ない気がする。
勿論、本展出品作のなかでは、一二を争う素晴らしい作品と思う。世界初公開というプレミア付きの《法悦のマグダラのマリア》と比べても、同等かそれ以上に素晴らしいと思う。
ただ、この絵の魅力は、絵の中の人物と観者は同じ高さにあってこそ、充分に発揮されるのかしれない。
本作も《法悦のマグダラのマリア》も、1606年5月殺人を犯してローマから逃亡し、10月にナポリに到着するまでの数ヶ月の間に、潜伏したローマ近郊ラツィオのコロンナ家領地で描かれた作品と考えられている。
2016年のカラヴァッジョ展は、その数ヶ月間に描かれたとんでもなく重要な作品が、何気に共演しているのが恐ろしい。
《エマオの晩餐》
うらびれた宿の主人とその母親。いつものとおり質素な食事を運んでいる。と、突如として目の前にキリストと使徒たちが顕現し、じっと覗き込む主人。母親は普段どおりの様子なので、おそらく主人だけに起きた出来事なのだろう。(宮下規久朗氏の著作に影響されている。)
解説で強調されているのは、2010年に詳細な撮影調査を行ったところ、ペンティメント(描き直し)のレベルにとどまらない、「完成の直前に芸術的な意図に基づいて変更が加えられていることが発見された」。
「当初は、画面左に開口部(窓もしくは回廊)があり、緑と褐色の絵具によって自然主義的な情景が描かれていた。そしてその向こうに自然光に照らされた葉の茂った樹木による風景が見られた」。
確かにずいぶんな変更である。
なお、図録には、「2009年から12年にかけて、いまだローマに残る22点のカラヴァッジョ作品の科学調査がおこなわれた。2巻本が発行予定である」とある。
本作品はミラノにあるので、この調査の対象ではないかもしれないが、図録に何点か掲載されているX線写真と誇らしげな新発見説明は、この調査の成果なのだろう。2巻本が気になるところ(イタリア語だろうから読めないけど)。
カラヴァッジョは、もう1点、《エマオの晩餐》を描いている。
《エマオの晩餐》
1601年
141×196.2cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
カラヴァッジョがローマの大ブレイク時代に描かれた作品で、カラヴァッジョ本では必ずその素晴らしさが熱く語られる作品だが、私は実見したことがなく、カラヴァッジョ本を読む度に悔しい思いをしている。当時のカラヴァッジョ絶頂期の超絶技巧が見られるという作品で、コピー作品がわんさかと存在する大人気作品であるらしい。と書くとますますロンドン・ナショナル・ギャラリーへ行きたくなる。目処は全くないけど。
「エマオの晩餐」を描いたカラヴァッジェスキ作品について。
2016年のカラヴァッジョ展での出品はないが、2001年のカラヴァッジョ展には1点出品されている。
アロンソ・ロドリゲス
(メッシーナ、1578-1648)
《エマオの晩餐》
1610年代、150×205cm
メッシーナ州立美術館
シチリアの最も優れたカラヴァッジェスキの画家とされるロドリゲス。
本作は、もう1点の出品作《聖トマスの不信》とともに、1951年の大回顧展でロンギによりカラヴァッジョ帰属作品として提示されたほど。
作品の状態はかなり悪いけれども、光と影のドラマを味わえる素晴らしい作品。もう1度観たい。というか、ロドリゲス作品をもっと見てみたい。目処は全くないけど。
昨年10月、カラヴァッジョの本を翻訳出版した者です。
カラヴァッジョ・ファンを見つけて、とてもうれしく思っています。
先日、ミラノで再び「エマオの晩餐」を見てきました。
でも、カラヴァッジョなら、なんといってもローマですよ。
いつかローマのカラヴァッジョ巡礼を実現させてくださいね。
当方、2001年以来、カラヴァッジォ・ファンを続けています。
mayumi-roma様のブログ、いつも楽しく拝見しています。
ブレラ美術館、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、マンテーニャ、ベッリーニ、ラファエロ、素敵ですね。ミラノでは、もう1点、アンブロジアーナ絵画館の《果物籠》、いつか実見したいです。