20世紀のポスター[図像と文字の風景] ― ビジュアルコミュニケーションは可能か?
2021年1月30日〜4月11日
東京都庭園美術館
株式会社竹尾のコレクションによる「20世紀のポスター」の展覧会。
東京都庭園美術館は、10年前の2011年の同じシーズンにも、株式会社竹尾のコレクションによる「20世紀のポスター[タイポグラフィ]」展を開催。私も見に行って非常に楽しんだ記憶があり、本展も楽しみにしていたところ。
【竹尾ポスターコレクション】
ヨーロッパを中心にアメリカ、ロシア、日本などの主に20世紀のポスターを 広く収集していたニューヨークのラインホールド=ブラウン・ギャラリー・ポスターコレクションを、竹尾が創業100周年記念事業の一環として1997年に購入したものです。
多摩美術大学に寄託され、株式会社竹尾と同学グラフィックデザイン学科による共同研究として、1998年よりさまざまな視点からコレクションの研究に取り組んでいます。
その一部は、「竹尾ポスターコレクション・ベストセレクション」展として定期的に公開しています。
今回のテーマは、「図像と文字の風景」。
「構成的デザインのポスター」、「構成主義のポスター」が並ぶ。
【本展の構成】
1章:図像と文字の幾何学 - インターナショナルスタイルの完成
(「スイス派」「ウルム派」「インターナショナルスタイル」の15作家・52点)
2章:歴史的ダイナミズム - 同時多発的なスタイルの醸成
(第2次世界大戦以前のロシア構成主義、バウハウス、ニュータイポグラフィなど、11作家・18点)
3章:コミュニケーションのありか - 電子時代への突入とともに混沌の時代へ
(1970年代以降の11作家・60点)
「構成的」「構成主義」と言われてもよく分からない。
「文字」と「図像」が「幾何学的に融和」がポイントらしい。
以下、会場内配布のタブロイド判の出品目録での第1章「図像と文字の幾何学」の説明からの抜粋。
「スイス派」「ウルム派」を中心に国際的に広がり、「インターナショナル・スタイル」と称されるに至る構成的デザイン。
図像と文字が幾何学的に融和した特徴的な外観。
はじめに文字中心のポスターがあり、やがて幾何学的形態や写真が組み合わされるようになり、インターナショナル・スタイルが完成していった。
ほとんどのポスターはひとつの書体だけで構成されており、使用する文字サイズも限定的である。こうしたミニマムな文字表現が、幾何学的フォルムや写真と組み合わされ、清新な画面が生み出される。
全130点のうち、3分の2近くがドイツ語のポスター。かつ2分の1近くがドイツ語圏スイス(チューリヒ、バーゼル)のポスター。
音楽コンサートや展覧会(美術、産業など)、イベントの告知ポスターが多い(いわゆる商品広告ポスターは少ない)。
文字と幾何学的フォルムが主なので、文字に目が行く。ドイツ語を分かりもしないのに、つい読もうとしてしまう。
展覧会告知ポスターの文字情報は、展覧会名、会場名、会期、開館(休館)の曜日・時間、入場料くらい(会場の住所は総じて記載されない。名前があればそれで充分らしい)。
会期、曜日・時間、入場料くらいなら何とか読めるので、つい熱心に読む。
月曜日休みが多く、開館の場合も午後のみの例が多い。昼休みがある。夜間開館が週2回(火・木)ある。その場合は一旦通常閉館時刻に閉め、夜間に再開館する。週末は閉館時刻が少し早いところもある。
など、当時の美術館の開館傾向を楽しんだりする。
印象に残るポスター2選
エルンスト・ケラー(1891〜1968)
《イェルモリデパート 上質で格安》
1924年、スイス
本展では珍しい商品広告・組織PRポスターで、出品番号No.1(ただし、展示場所はトップではなく、順路に従えば2番目の展示室の一番最後)。
イェルモリは、1833年創業のチューリヒの高級老舗百貨店。
本ポスターは、文字のみ。
Jelmoli
gut und
billig
関西圏スーパーの昔のCMソングを思い出す。
「ええもん高いのは当たり前、ええもん安いのがイズミヤ〜」
ヤン・チヒョルト(1902〜74)
《エミール・ノルデ展 1910-26/グラフィック・キャビネット》
1926年頃、ドイツ
&
《今日の芸術家の自画像展/グラフィック・キャビネット》
1927年頃、ドイツ
文字のみの展覧会告知ポスター。
会場は、ドイツ・ミュンヘンのブリーナー通りにある「グラフィック・キャビネット」という名の画廊?美術館?
前者は、エミール・ノルデ(1867〜1956)の個展。
後者は、「今日の芸術家の自画像」展とあって、ノルデを含む21名の芸術家の名前が並べられている。
ベックマン(1884〜1950)
カスパール(1879〜1956)
コリント(1858〜1925)
ディクス(1891〜1969)
グルブランソン(1873〜1958)
ヘッケル(1883〜1970)
キルヒナー(1880〜1938)
ココシュカ(1886〜1980)
ケルビッツ(1867〜1945)
クビン(1877〜1959)
リーバーマン(1847〜1935)
マシリール(1889〜1972)
ムンク(1863〜1944)
ノルデ(1867〜1956)
ペヒシュタイン(1881〜1955)
シュリンプフ(1889〜1938)
ゼーバルト(1889〜1976)
スレーフォークト(1868〜1932)
トーマ(1839〜1924)
ウノルド(1885〜1964)
ウェスターマイヤー(1883〜1917)
その他
私が名前を聞いたことのある芸術家は、半分くらい。
そして、その半分くらいの芸術家は、10年後、1937年のミュンヘンでの「退廃芸術展」にその作品が展示されることとなる。