東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「没後50年 坂本繁二郎展」(練馬区立美術館)

2019年08月27日 | 展覧会(日本美術)
没後50年   坂本繁二郎展
2019年7月14日〜9月16日
練馬区立美術館
 
 
   坂本繁二郎(1882〜1969)。
   久留米高等小学校の同級生であった青木繁(1882〜1911)とはともに洋画家・森三美の画塾に通うライバル関係。1900年に青木が上京。1902年、帰省中の青木から東京で描いた絵を見せられた坂本は、青木の上達ぶりに驚き、自らも上京する。1911年、青木が早世する。坂本の奔走により、翌年に遺作展が開催され、翌々年に画集が刊行される。

   1912年、牛を描いた《うすれ日》を第6回文展に出品、夏目漱石に注目され、出世作となる。

   1921年から3年間のパリ留学後は、東京に戻らず、生涯、郷里で制作活動を行う。
 
   坂本は、留学までは牛を、帰国後は馬を、戦中・戦後は身の回りの静物を、最晩年は月を主なテーマとしたといい、本展もそのように作品が並ぶ。時系列に並べると、そうなる。
 
 
   私的には、初期の市井の人を描いた作品。

《町裏》1904年
   薪を運ぶ人夫。
 
《早春》1905年
   野菜を載せたカゴを肘掛け持ちする農婦。

《大島の一部》1907年、福岡市美術館
   遠景に噴煙を上げる三原山。木の皮葺き屋根の民家。その庭に、筒袖の黒い着物を竿に干す年配の男性、その後ろに少女、井戸で髪を洗う女性。頭上に物を乗せた人が庭前の道を往く。
    本作と青木繁の重文《わだつみのいろこの宮》は、ともに東京勧業博覧会(1907年)に出品。本作は三等賞受賞。青木の作品は三等賞末席で終わり、以降青木は晩年期に突入する。
 
《張り物》1910年
   妻をモデルとした張り物をする女性。この頃は色彩が明るくなってきている。
 
《魚を持ってきた海女》1913年、石橋財団アーティゾン美術館
   地面に置いたカゴに収穫物。
 
 
 
   他には、会場冒頭に展示の青木繁の絶筆油彩画《朝日》、牛の絵たち、留学時代の女性の絵《帽子を持てる女》、馬の絵たち、「食パンを切ったような十字型の(川端康成評)」雲の絵《鳶形山》など。
 
 
 
   会場最後の展示室に、坂本の画業を紹介する映像、その語りを、作品を見ながら聞く。留学時代を振り返って、ルーヴル美術館の巨匠たちの作品、あるいは現存スター芸術家ピカソに対して、それほどのものでもない旨の発言を残しているようだ。
 
 
【本展の構成】
第1章   神童と呼ばれて  1897-1902年
第2章   青春-東京と巴里   1902-1924年
第3章   再び故郷へ-馬の時代   1924-1944年
第4章   成熟-静物画の時代   1945-1963年
第5章   「はなやぎ」-月へ   1964-1969年
 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。