松方コレクション展
2019年6月11日〜9月23日
国立西洋美術館
松方コレクション展の入場者数が30万人を突破したという。残り会期は約1カ月、このペースだと、国立西洋美術館では2013年のラファエロ展(50.5万人)以来となる40万人台突破は確実である。
その30万人を突破した日、松方コレクション展を再訪する。
【ロビー】
ロビーでは、展覧会紹介ビデオの上映に加え、モネ《睡蓮、柳の反映》のデジタル推定復元図が公開されている。
モネ《睡蓮、柳の反映》
1916年、国立西洋美術館
(デジタル推定復元図)
松方幸次郎が1921年に画家のアトリエから直接購入した作品の一つ。画像では知られていたが、所在不明とされていた作品である。
第二次大戦中、コレクション管理人の日置は、1940年に絵画群をパリから郊外の村アボンダンの自宅に疎開させ、1944年に連合軍のノルマンディー上陸によって敗走するドイツ軍の爆撃を恐れて再びパリへ戻している。おそらくその過程で本作は大きく損傷する。破損作品として、返還作品リストから漏れ、そのまま忘れ去られる。
2016年にルーヴル美術館の収蔵庫にて再発見。松方家からの寄贈という形で、2017年12月に国立西洋美術館の所蔵となる。
本展に向けての1年の期間で、保存修復作業が行われた本作品は、会場の一番最後の部屋に展示されている。
オランジュリー美術館の「睡蓮・大装飾画」のうち第2室の《木々の反映》に関連づけられる習作の一つ。
上半分が欠損した痛々しい姿。現存する同趣の作品(近年ではチューリヒ美術館所蔵作品が来日)から想像すると、デジタル推定復元図から受ける印象をはるかに超える幽玄な作品であったであろう。
【プロローグ】
モネ《睡蓮》およびブラングィン《松方幸次郎の肖像》《共楽美術館構想俯瞰図》の3点が展示される導入部。
モネ
《睡蓮》
1916年、国立西洋美術館
松方が1921年に画家のアトリエから直接購入した作品の一つで、松方コレクションを代表する作品とされている。フランスからの寄贈返還により国立西洋美術館所蔵となっている。
美術館開館当初の松方コレクションの地方巡回時を除いては、館外への貸し出しは一度も行われていないという、いわば門外不出の作品。
【第1〜2章】
第1章 ロンドン 1916-1918
第2章 第一次世界大戦と松方コレクション
階段を下りた地下3階の展示室に、珍しくも上下2段にぎっしり展示される作品計70点。
これら作品は(第2章の一部を除き)、松方の第1次欧州蒐集旅行(ロンドン1916-18)時に取得している。
この時期に取得した作品は、日本に持ち込んだあと川崎造船所の経営危機により散逸するか、ロンドンに留め置いて1939年の倉庫火災により焼失するか、いずれかの運命をたどる。
本展示室の展示作品の7割以上が、国立西洋美術館所蔵である。しかし、1点を除いては、フランスから寄贈返還されたのではない。国立西洋美術館の開館後に、購入や寄贈により取得したものである。国立西洋美術館は、旧松方コレクションの収集を地道に続けているようである。
私的に、本展示室にて飛び抜けて素晴らしいと思った作品は、
セガンティーニ
《羊の毛刈り》
1883-84年、国立西洋美術館
✳︎常設展示時に撮影
本作品を松方は1918年のイタリアへの蒐集小旅行時にミラノで購入したようである。なお、セガンティーニ作品は本作を含めて4点を購入、うち2点が国立西洋美術館の所蔵、1点が個人から寄託となっている。
国立西洋美術館は、2008年に本作品を兵庫県の個人から購入している。
前所蔵者は、1934年の東京府美術館の松方氏蒐集欧州絵画展覧会で購入し、ずっと自宅に飾っていたが、引き継いだ息子も高齢となり、手放すならば国立西洋美術館にと、相場より格段に安く譲ってもらったとのこと(芸術新潮2009年2月号)。
気になった作品としては、
テオフィル・アレクサンドル・スタンラン
《帰還》
1918年、国立西洋美術館
第一次大戦。鉄道駅であろうか、兵士が戦場から戻り恋人と再会する場面。その2人に目を向ける喪服の戦争未亡人と傷痍軍人も描かれる。
スタンランは、スイス・ローザンヌ生まれでパリで活躍したアール・ヌーヴォー期のポスター作品で知られる画家。
国立西洋美術館は、2017年に本作を国内の前所蔵者より購入している。
あと、私的には国立西洋美術館所蔵のクリヴェッリ作品をようやく実見できたこと。本作を国立西洋美術館は1963年に国内の前所蔵者より購入している。