東京でカラヴァッジョ 日記

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世界4大ペスト文学

2020年06月11日 | 書籍
世界4大ペスト文学。
 
    現時点の大型書店にて大量に平積みされている様を見ると、次の文庫本4点をそう呼びたくなる。
 
カミュ『ペスト』
新潮文庫
 
デフォー『ペスト』
中公文庫
 
マンゾーニ『いいなづけ』全3巻
河出文庫
 
ボッカッチョ『デカメロン』全3巻
河出文庫
 
 
 
    カミュ『ペスト』。
    北アフリカの仏植民地・アルジェリアのオラン市における架空のペスト大流行(原著1947年刊)。
    薄い『異邦人』は学生時代に読んだことがあるが、『ペスト』は未読。
 
 
 
    デフォー『ペスト』。
    1665年のロンドンにおけるペスト大流行(原著1722年)。
    学生時代に読んだことがある。おそらく高校時代の世界史の授業で黒死病に興味を持ったのだろう。途中で挫折。内容は全く覚えていないが、ロンドンの地名の多出に閉口した印象が残っている。
    なので、今回の再購入・再挑戦は遠慮している。
 
 
 
    マンゾーニ『いいなづけ』。
    1630年のミラノにおけるペスト大流行(原著1827年刊)。
    「イタリアの中等・高等教育の中で「制度」の地位を占める文学作品」2作品の一つとして気になっていた存在。
    平川祐弘訳の河出書房新社版は、1989年に単行本として刊行、2006年に河出文庫から文庫化。2020年3月、今回のパンデミックを受けて、文庫の14年ぶりの2刷となったようだ。
    全3巻全38章だが、ペスト登場は下巻の第31章から。で、今回私は下巻を購入する。で、下巻を読了する。
    第31〜32章のミラノのペスト状況全般の語りに引き込まれる。また、第33〜37章の主人公たちのペスト体験も面白い。特に主人公によるペスト下のミラノ市中の徘徊・避病院の訪問。ただ、主人公もヒロインもペストに罹患するが自力で回復と数行程度の説明で済ませ、あとは色々な幸運に恵まれて一気にハッピーエンドに向かうところは、ご都合主義の感も?
    今のところ、遡って上中巻を購入・挑戦する予定はない。
 
 
 
    ボッカッチョ『デカメロン』。
    1348年のフィレンツェにおけるペスト(黒死病)の大流行(執筆1353年)。
    本書以降、黒死病を語ろうとする者は、ボッカッチョの描写の影響から逃れることはできず、常套句として利用したようである。
    平川祐弘訳の河出書房新社版は、2012年に単行本として刊行、2017年に河出文庫から文庫化。つい最近の2020年5月、文庫の3年ぶりの2刷となったようだ。
    全3巻だが、今回私は上巻のみを購入する。そして「第1日まえがき」だけを読む。各種ペスト本で絶えず引用される文章を原作で確認する。
   さて、続く100の艶話を読むかどうか。
 
 
 
   マンゾーニ『いいなづけ』上中下巻の帯。
 
「ペストが大流行した17世紀の混乱の様子は、マンゾーニの小説を読んでいるというより、今日の新聞を読んでいるような気にさせられます。」
 
「この本には、外国人は危険だと思い込み、感染源を執拗に捜索、専門家の軽視、不確かなうわさ、必需品を買いあさり医療危機を招く様子が描かれています。」
 
「この手の危機における、最大のリスクについては、マンゾーニやボッカッチョが教えてくれています。それは人間が作る社会が毒され、市民生活が荒れること。」
 
 
 
マンゾーニ『いいなづけ』下巻の描写2選。
 
    パン屋でのパンの購入
    パン屋は、「店の中には入らないで」、酢と水のはいった小皿をシャベルで差し出して「小皿の中に硬貨を投げ入れて」、硬貨を確認してから、パンを火箸でつまんでそのまま差し出して、「はい、どうぞ、受け取って」。
 
 
    脅威の「塗り屋」
    ミラノ市内徘徊中に、人々に「塗り屋」の嫌疑をかけられた主人公は、市内巡回中の死体収容人の軍団に助けられる。
「お前さんが契約を取交わした悪魔はまだよほど新米に見える。俺たちがあすこにいて助けなかったとしたら、お前は酷い目に遭っていたぞ。」
「はい、はい、塗り屋の兄さん、さようなら。お前さんみたいな小物じゃミラノを皆殺しにすることは到底できないやね。」


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