2023年の府中市美術館の展覧会により、「インド細密画」に少し関心を持った私。
2024年1月から、東博の東洋館の地下1階、一番奥の13展示室に常設展示される「インド細密画」鑑賞を始める。
概ね1ヶ月単位で展示替えが行われるようであり、今回は7度目の鑑賞。
今回鑑賞(2024年7月2日〜7月28日)
・テーマ:ムガル派・地方ムガル派による風俗画
・展示数:9点
以下、画像を掲載する。
《ヴィーナを奏でる女》
ビーカーネール派、18世紀
画面の右半分に二階建ての建物を、画面の下に四角形に区画された花壇をそれぞれ描いています。建物の外では、橙色の服を着た女性が、ヴィーナとよばれるインドの弦楽器を左手に持って椅子に坐っています。白い猫が建物の中から女性の様子をうかがっています。
《口論する男女》
マールワー派、17世紀後半
画面の右側では建物の中で男女が口論する場面を、左側では岩の上に建った小さな建物の中で裸形の行者が虎の皮を敷いて坐っている場面をそれぞれ描いています。遠近感のない構図、陰影のない表現、白い建物の表現などは、マールワー派に見られる特徴です。
《鏡を見ながら化粧する王家の女》
マールワー派、18世紀初
この絵は宮殿内での王家の女性の生活を描いています。王家の女性は侍女たちに鏡を持たせたり、化粧をさせてたりしています。建物の前には白い敷物を敷き、クッションを二つ並べています。王家の女性が恋人の到着に備え、装いを調えていたことがうかがわれます。
《中庭を横切る乙女》
カーングラー派、19世紀初
カーングラー派は優雅で美しい女性を穏やかな色調で描き、華やかな装飾文様で絵の周りを表してきました。画面右下に大きく描かれた女性は、頭の上に水甕を載せ、左手でそれを押さえながら、歩いています。左の樹木の枝にはさまざまな鳥がとまっています。
《木の下で思索する托鉢の聖者》
ムガル派、17世紀中頃
画面の遠景には空、山、中景には大きな川、そして近景に樹木の下に坐る聖者と水禽6羽をそれぞれ描いています。右側の山麓には大きな城が建ち、川には船が浮かんでいます。草原の中央では樹木が生い茂り、その下では聖者が坐り、思索にふけっています。
《聖職者を訪ねるムスリムの女たち》
地方ムガル派、17世紀後半~18世紀初
ムスリムの王女が侍女ふたりを従え、聖職者と向かい合っています。聖職者はランプ(あるいは燭台)を、王女は長杯状の器物を、そして侍女のひとりは燭台をそれぞれ持ち、もうひとりは手を合わせています。地方ムガル派は夜中、王女が聖人を訪ねる図を好んで描きました。
《テラスで遊興する貴族の女たち》
ムルシダーバード派、18世紀
画面の上半分には白亜の建物と煮炊きする女性を、下半分には遊興する貴族の女性たちを描いています。敷物の上には貴族の女性と上半身が裸の女性が坐わり、その傍らでは女性たちが酒を持ったり、弦楽器を弾いたり、また裸体の女性たちが池の傍に坐ったり、池の中で戯れたりしています。
《夜に音楽を聴く女たち》
ラクナウ派、18世紀
三日月が出る夜、建物の外で、いくつものランプを地面に置き、男女がそれらを取り囲んでいます。画面の左側では女性3人が坐り、2人が立ち、また右側では男性1人が坐り、もうひとりが楽器を演奏し、さらに男性1人が草を持って坐り、女性1人が打楽器を叩いています。
《シタールを楽しむ二人の女》
ムルシダーバード派、18世紀後半
画面の上半分に建物を、下半分に6人の女性たちをそれぞれ描いています。中央の女性ひとりはインドの弦楽器シタールを持ち、もうひとりはシタールを持つ女性に寄り添っています。ふたりの前には他のふたりが坐り、後ろにはさらにふたりがそれぞれ器物を持って立っています。
先月の神々の世界に比べると、人物の風俗画はとっつきやすい。
引き続き、展示替えの都度皆勤を目指すのではなく自然体で、展示が一巡するまでを目途に鑑賞するつもり。