松方コレクション展
2019年6月11日〜9月23日
国立西洋美術館
本展では、旧松方コレクションである出品作品以外にも、興味深い「資料」が展示されている。
その一つが、第4章「ベネディットとロダン」の部屋に展示されている「ガラス乾板」である。
「ロダン美術館保管時代に松方コレクションを写したガラス乾板(ピエール・シュモフ撮影)16点」
フランス文化省・建築文化財メディアテーク
1920年代半ば頃に、ロダン美術館に保管されている松方コレクションを写真家ピエール・シュモフが撮影したガラス乾板。
昨年(2018年)7月に発見されたばかり。
このガラス乾板から現像された写真が一部作品で知られていたようだが、ガラス乾板自体の発見により、新たな情報が多数得られたであろうし、今後も得られるであろう。ただ、新たな情報を本展に充分反映させる時間はなかったものと思われる。
本展では、発見されたガラス乾板346点?348点?365点?のうちの16点が展示される。流転パターンを考慮して選択されているようだ。
1)フランスから寄贈返還を受け、国立西洋美術館の所蔵となった作品。
⇒3点
2)フランスからの寄贈返還時に、あまりの破損状態から返還されずにパリに残されてそのまま忘れられていたが、その後ルーヴル美術館に保管されていることが発見、松方家からの寄贈により国立西洋美術館の所蔵となった作品。
⇒1点
モネ《睡蓮、柳の反映》
✳︎国立西洋美術館と凸版印刷の共同事業、本作品のデジタル復元図が本展会場内にて公開中。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/47/1d8791a2cd36ca54319c52134d277901.jpg)
3)フランスからの寄贈返還時に、破損作品としてあわせて返還され、国立西洋美術館の所蔵となっていたが、今回の発見により破損前の本来の姿が分かった作品。
⇒7点
ドガ《女性の肖像》
シャヴァンヌ《霊感を授けるミューズ》
モロー《ヴィーナスの誕生》
ほか
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/0e/ac4cf60228f23eaa87246ce192f61d02.jpg)
4)日本に持ち込まれ、コレクション散逸期に売却された作品。
⇒1点
ゴーガン《シエスタ》MET蔵
5)パリのコレクションの管理人である日置により、疎開時代に経費捻出のため売却された作品。
⇒1点
マネ《嵐の海》ベルン美術館蔵
✳︎コルネリウス・グルリットのミュンヘンのアパートから、ナチス掠奪美術品とともに発見され、コルネリウスの死後、ベルン美術館に遺贈された作品。
なお、本作品自体は、ナチス掠奪美術品ではないと判断されている。それ故、本展への特別出品が実現。
6)これまで詳細不明とされていた作品で、画像が分かった作品。
⇒3点
マティス《窓辺の女》所在不明
モロー《サロメ》所在不明
ボナール《湾(あるいは南仏の風景)》クリーガー美術館蔵、ワシントンDC
✳︎ボナール作品は、画像が分かったことにより、現在の所在が特定できたもの。
「資料」では、他に「散逸期の松方コレクションの売立目録(1928年から1941年まで」(国立西洋美術館蔵)や、2016年に発見されたロンドン焼失作品リスト「パンテクニカン倉庫保管絵画等リスト:松方幸次郎資産」(テート・アーカイブ蔵、ロンドン)」も興味深い。
【本展の構成】
プロローグ
1:ロンドン 1916-1918
2:第一次世界大戦と松方コレクション
3:海と船
4:ベネディットとロダン
5:パリ 1921-1922
6:ハンセン・コレクションの獲得
7:北方への旅
8:第二次世界大戦と松方コレクション
エピローグ