遊びの流儀 遊楽図の系譜
2019年6月26日~8月18日
サントリー美術館
江戸時代前期の「遊び」「気晴らし」を描いた作品と、「遊び」「気晴らし」の道具が展示される展覧会。
展示品は、全部「遊び」「気晴らし」。
ほとんどが江戸時代、それも17世紀の品。
遊び・気晴らしに興じる沢山の人物の姿が画面全体に小さく描かれる屏風が多数。一つ一つ確認しながら鑑賞していくと、時間がどんどん過ぎてゆく。
遊びの王様は、輪舞。この作品にもその作品にもあの作品にも、屋外で輪舞に興じる軍団が描かれている。輪舞が単独モチーフの作品もある。こんなにたくさんの輪舞を一度に見ることがあろうとは。
重文《遊楽図屏風(相応寺屏風)》
江戸時代 17世紀
徳川美術館
花見の宴、水掛け合い、泳ぎ、かぶき者たちの喧嘩、説教師の興行鑑賞、一服一銭、猿回し鑑賞、囲碁、矢場、うどん食い、茶店、能鑑賞、舟遊び、輪舞、蹴鞠、扇舞、弓、双六、カルタ、酒盛り、喫煙、読書、身つくろい、蒸し風呂ほか。江戸時代前期の多様な遊び/気晴らしが勢ぞろい。
《婦女遊楽図屏風》
江戸時代、17世紀
サントリー美術館
室内で扇舞に興じる女。軒先で寛ぐ女。庭先で手鞠を楽しむ女。川辺で扇流しをする女。水面に足をつけて涼をとる女。庭先で輪舞をする女、それを眺める女。室内で身だしなみを整える女。女同士でいちゃつく女。
《祇園祭礼図屏風》
江戸時代、17世紀
サントリー美術館
祇園祭りの山鉾巡行。
主催者おすすめの鑑賞ポイントは、通りを外れたところ。刻み煙草を売買する場面や、鮒寿司、ところてん、甜瓜(まくわうり)を食する人々が描かれた場面。
《カルタ美人図》
江戸時代、17世紀
個人蔵
向かいあってカルタ遊びに興じる二人の女性。その背後には「高台寺蒔絵の台」に載せられた西洋時計。
本作品の近くには、カルタ実物も展示される。
《天正かるた》
江戸時代、17世紀
個人蔵
ポルトガルから伝来したと推定されるカルタを模倣して日本で制作された天正かるた。展示品は48枚中37枚が残るもの。現トランプに近く、1〜9の札とJ・Q・Kにあたる男性・女性の絵柄の札3枚の計12枚×4種から構成される。見ていて飽きない札の図柄。
《金地うんすんかるた》
江戸時代、17世紀
滴翠美術館
「うんすんカルタ」は、天正かるたをもとに日本で考案されたと考えられているもの。「うん」は福の神の絵札を、「すん」は唐人姿の絵札を指すという。
展示品は、1〜9の札と、福の神、龍、武人、唐人など6枚の絵札の計15枚×5種の全75枚が全て揃うもの。
重文《本多平八郎姿絵屏風》
江戸時代、17世紀
徳川美術館
右扇は、女性が侍女に手紙の内容を読ませる様子を、左扇は、禿(かむろ)が託された結び文を若い侍に手渡そうとする様子を描く。
こんな作品たちを一つ一つ見ていると、時間がいくらあっても足りない。
サントリー美術館の定番、細かい展示替えであるが、本展は4期(前期、中期1、中期2、後期)に分かれる。
大和文華館所蔵の国宝《婦女遊楽図屏風(松浦屏風)》や静嘉堂文庫美術館所蔵の重文《四条河原遊楽図屏風》は中期2・後期に、MOA美術館所蔵の重文《湯女図》も中期1・2に登場する。これは何度か行かざるを得ない。
江戸時代前期の遊び/気晴らしに興じる人々の姿一色に覆われた展示空間は、金地の作品が多いこともあいまって、相当危うげな世界。その世界にのめり込んでしまったら。
【本展の構成】
1章 「月次風俗図」の世界ー暮らしの中の遊び
2章 遊戯の源流ー五感で楽しむ雅な遊び
3章 琴棋書画の伝統ー君子のたしなみ
4章 「遊楽図」の系譜1ー「邸内遊楽図」の諸様相
5章 「遊楽図」の系譜2ー野外遊楽と祭礼行事
6章 双六をめぐる文化史ー西洋双六盤・盤双六・絵双六
7章 カルタ遊びの変遷ーうんすんカルタから花札まで
8章 「遊楽図」の系譜3ー舞踊・ファッションを中心に
もしこれら遊楽図の世界に入り込んでしまったら。遊び一筋で突き進んでしまうか。誰とも交わることができずに一人でポツンとしているか。