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【画像】ホアキン・ソローリャ《水飲み壺》、ドン・キホーテ、エスパーニャ・ネグラなど -「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」(国立西洋美術館)

2023年08月29日 | 展覧会(西洋美術)
スペインのイメージ
版画を通じて写し伝わるすがた 
2023年7月4日~9月3日
国立西洋美術館
 
 
 まずは、国立西洋美術館の2022年度新購入作品。
 本展にて、収蔵後初公開。
 
ホアキン・ソローリャ(1863-1923)
《水飲み壺》
1904年、151×98cm、国立西洋美術館
 ソローリャは、地中海の光彩に輝くスペインの風土と人々を描いて当時内外に絶大なる名声を得た、同国の誇る国民的画家です。
 本作は、画家の故郷バレンシアで描かれたもので、浜辺の掘立小屋で少女が小さな子供に水を飲ます愛らしい場面が描かれています。
 画題になった水飲み壺はスペイン語でボティホと呼ばれ、素焼きの陶器製であることから、揮発により中の水を冷たく保つことができ、伝統的にスペイン各地で愛用されました。
 本作は、画家の生誕100年を記念して1964年にスペインで発行された記念切手の図柄にも用いられ、よく知られた作品です。
 
 
 本展は、長崎県美術館から巡回。
 長崎県美術館は、収蔵品の大きな柱の一つとして、スペイン美術を掲げている。
 第二次世界大戦中、1941〜46年にマドリードの日本特命全権大使を務めた須磨弥吉郎(1892-1970)が、在任中に収集したスペイン美術のコレクション(約1800点)の一部、約500点を長崎県美術館が寄贈あるいは購入により所蔵しているためであるようだ。
 本展にも、須磨コレクション作品が出品されている。
 
リカルド・バローハ(1871-1953)
《メモリア門》
1912年、長崎県美術館
 
ホセ・グティエレス・ソラーナ(1886-1945)
《宗教行列》
1938年頃、個人蔵
 
 
 
 8月に入って、そろそろ行こうかと現地のチケット購入列の待ち時間&暑さを回避すべく、ネットで事前購入しようとしたところ、なんと!常設展のみならず、企画展までもが無料の日があることを知る。それも週末に。
 
「おしゃべりOK!にぎやかサタデー」
2023年8月26日(土)9:30〜20:00
 
 混雑必至?賑やかすぎる?
 でも、絶対お得!
 私は、夜間開館時間帯の訪問を選ぶ。
 17時半から企画展のみであったためか、懸念の状態は特段なくて、むしろ通常よりゆったりめで鑑賞する。
 
 チケット売場は閉鎖、地下の企画展入口に直行すると、チケットです、と本展の小冊子(ジュニア・パスポート)が渡される。その日は来場者みながジュニア。
 
 
【本展の構成】
0.導入
1.黄金世紀への照射:ドン・キホーテとベラスケス
(1)『ドン・キホーテ』
(2)ベラスケス
2.スペインの「発見」
(1)旅行者の見たスペイン
(2)人物タイプ
(3)ゴヤの影響:ドラクロワ、マネ
3.闘牛、生と死の祭典
4.19世紀カルターニャにおける革新
(1)フォルトゥーニ
(2)バルセロナからパリへ:世紀末の光と影
5.ゴヤを超えて:スペイン20世紀美術の水脈を探る
(1)「エスパーニャ・ネグラ」
(2)叫びと抵抗:20世紀スペインにおける政治と美術
6.日本とスペイン:20世紀スペイン版画の受容
 
 
 
【導入】
 本展を象徴するような大型油彩作品。2005年の購入。
 
ギュスターヴ・ドレ
《シエスタ、スペインの思い出》
1868年、278.1×191.8cm、国立西洋美術館
 
 
【世界文学『ドン・キホーテ』】
 
 ミゲル・デ・セルバンテス(1547-1616)著『機知に富んだ郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』(前篇1605年、後篇1615年)。
1)17世紀から18世紀の初頭
 騎士道小説のパロディである点を踏まえ、面白おかしいドタバタ喜劇として人気を博す。
2)18世紀半ば
 まずイギリスで西洋文学の「古典」の地位を与えられ、そのユーモアを認めつつもこれを人間や社会に対する調刺、批判として解釈する読み方が浸透する。
3)19世紀のロマン主義以降
 読者が狂気の主人公と自分を重ね合わせ、共感し同情する感受性を持つようになって初めて、理想主義的な英雄としてのドン・キホーテ像が確立される。
→現代:周囲の無理解にもめげず「見果てぬ夢」を追い求める孤高の英雄。
 
 以上のような解釈の変遷に応じて、ドン・キホーテの図像も変化していく。
 
 
【ホガースのドン・キホーテ】
 
ウィリアム・ホガース(1697-1764)
《〈ドン・キホーテ〉2番 殴られ、あざだらけのドン・キホーテは宿屋の主人の妻と娘に看護される》
1738年、市立伊丹ミュージアム
 
ウィリアム・ホガース(1697-1764)
《〈ドン・キホーテ〉3番 ドン・キホーテは床屋の洗面器をマンブリーノの兜と思い、掴む》
1738年、市立伊丹ミュージアム
 
 
【ドーミエのドン・キホーテ】
 
オノレ・ドーミエ(1808-79)
《山中のドン・キホーテ》
1850年頃、石橋財団アーティゾン美術館
 
オノレ・ドーミエ(1808-79)
《ドン・キホーテとサンチョ・パンサ》
1850-52年、市立伊丹ミュージアム
 
 
【マネの「スペインの人物」イメージ】
 
エドゥアール・マネ(1832-83)
《ジプシーたち》
1862年、国立西洋美術館
 
エドゥアール・マネ(1832-83)
《スペインの舞踏家》
1879年、村内美術館
✳︎ 1879年10月、スペイン南東部ムルシア地方で川の氾濫により大洪水が発生。被害者支援の一環として、美術とファッションの雑誌『ラ・ヴィ・モデルヌ』誌(同年パリで創刊)は、マネら6名の画家たちに対して、スペインから取り寄せたタンバリンに絵を描いて展示販売することを呼びかける。本作はマネがこれに応えて制作した2点のうちの1点。
 
 
【マネのゴヤ影響】
 《1808年5月3日、マドリード》および版画集『戦争の惨禍』。
 
エドゥアール・マネ(1832-83)
《マクシミリアンの処刑》
1868年頃、国立西洋美術館 
 
エドゥアール・マネ(1832-83)
《バリケード》
1871年頃、国立西洋美術館 
 
エドゥアール・マネ(1832-83)
《内戦》
1874年、国立西洋美術館
 
 
【バルセロナ時代のピカソ】
 
パブロ・ピカソ(1881-1973)
《読書するアンジェル・フェルナンデス・デ・ソト》
1898-99年、個人蔵
 
パブロ・ピカソ(1881-1973)
《リュイス・アレマニの肖像》
1899-1900年、井内コレクション
 
パブロ・ピカソ(1881-1973)
《宝石》
1899-1900年、SOMPO美術館
 
 
【エスパーニャ・ネグラ】
 古い慣習が残り、陰鬱で重苦しく、死の影を至る所に覗かせるスペインの姿。
 
作者不詳
《メメント・モリ》
17世紀、国立西洋美術館
 
ホセ・グティエレス・ソラーナ(1886-1945)
『エスパーニャ・ネグラ』
1920年、長崎県美術館
✳︎冒頭掲載のバローハおよびソラーナ作品も、5章1「エスパーニャ・ネグラ」に配置されている。
 
 
【1936年7月18日】
 
ホセ・バルダサーノ
《1936年7月18日》
1937年、サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託)
 
 
 一部を除いて作品撮影可能な本展。
 以上、気になった作品の画像を掲載。
 
 
 出品作はすべて国内所蔵からなる本展、ドン・キホーテ、ベラスケス、ゴヤの影響や、ヨーロッパ人のスペイン趣味の歴史を伺うことができて、思いのほか楽しく鑑賞する。


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